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完全ノープラン宣言  作者: 想多メロン
俺にとって
17/51

最上川くん

「明日暇かい?」

電話の主は最上川。中学からの悪友だ。

「用事があるっちゃあるけど、どうした? 急用か?」


「いや、忙しかったらいいんだけど、久しぶりに飯でも一緒にって思っただけ」


「お前、また別れただろ?」

「何で分かんの? まさかエスパー?」

「さすがの俺でも学習するっての。毎回毎回破局を迎える度に、俺を誘ってくるんじゃないよ! 俺はお前のリセットボタンか?」


「あ、うん。そんな感じ」

「認めんのかよ! で、何時にどこでだ?」

「あ、君のそういう話早いとこ、本当に助かる。じゃ、時間と場所、任せるわ」


「まさかの丸投げか? スゲェな、お前」

「さっさと決めくれると助かるんだけど、こっちも忙しいんだよ!」

「電話切ります。さようなら」


「本当にすみませんでした。場所と時間を指定して頂けませんか? 当方はそれに従い行動する所存でございます」

「じゃ。八時に飲茶家飯盗やむちゃっかはんとうな」


「八時? ちょっと早くね?」

「やっぱり電話切るね」


「ち、ちょっと待て! 八時最高! 俺も八時が良いって思っていたかもしれないことに気がついたかもしれない」

「じゃ、また後で」


そんなわけで、週末ではありませんが、明日飲茶家飯盗へ行きます。


「ご友人と食事ですか?」

「うん、中学の時からの友人とね」


「私はきっとお腹が空くのでしょうね」

「明日も出てくるのですね」

「ええ、台本が全然上がってきませんから」


中々えぐって来ますね……。


「冷蔵庫の物、適当に使ってくれて良いですよ」

「ここで一人で食事をしたことはありませんが、きっと味気ないのでしょうね」

「じゃあ、何か作っておこうか? 何が食べたい?」

「久しぶりにナッツが食べたくなって来ました」


「分かりました。万年筆も持っていきます」

と言うわけで、一緒に(? )出掛けることにした。


~木曜日~

「おう! こっちこっち」

最上川がカウンターで手を降っている。

相変わらずのイケメンぶりだ。

ヤツがカウンターで手を振るだけで、客の視線を集めている。


俺はヤツと知り合ってから、人気者でなかった時期を知らない。

勉強も出来たし、スポーツも万能。性格も明るくて誰にでも隔てなく優しい。

ただ、恋愛が長続きしないのが唯一の欠点。

大体が半年以内に終わってしまう。


そんな訳で、半年に一度のヤツとの飲み会は、もはや恒例行事になっている。


「あ、千丈川さん、いらっしゃい」

マスターはいつもの席にコースターを置いた。

最上川は既にその隣に座っている。

「とりあえずビール、それから腹減ったんで何か下さい」

「あ、実は僕も腹減っています」横から最上川も。


「じゃあ、二人でつまめそうなもの、作りますね」

そう言って、マスターはカウンター下の冷蔵庫の中を物色し始めた。


「最近、どうしてんの?」

「え? お前の話じゃないの?」


「だって、僕の話はいつものことだし、君だって別に聞きたくないでしょ?」

「いや、飲みながらの話って基本何でも良いんだけどね。会うのがメインなんだし」

「そう言えば、君ちょっと良い感じになってない? 彼女でも出来たか?」

「あはは、俺が昔から女に縁がないのは、お前が一番知っているはずだろ?」


「相変わらずの超鈍感野郎だな、君は」

「何が?」


「女の子が必死でアプローチしても、君が気が付かないだけじゃない。いっつも」

「アプローチ? されてたのか? 俺」


「ほらな、これだ。昔は君への恋愛相談を結構受けたんだぜ。さり気なく君に伝えたりもしたけど、気がついてくれたことは一度もなかったな。

「伝える? 最上川が? 俺に? いつ?」


「大体さ、僕が君にそういうお節介をしていたのは、女の子に頼まれたから仕方なくしてたけど、君の周りにはいつも良い女が付いていたものな。全然必要なかったよね」


「誰の話だ? 俺の周りに女がいた試しないだろうが」

「それは君の自覚が足りなかったとしか言いようがないね。高1から大会3連覇の女子空手部のキャプテンだって、学年1位を3年間キープし続けた女生徒会長だって、他にもいっぱいいたな……」


「あれは、時間割聞かれたり、試合の応援に来るように催促されたりしていただけで……。いいカモだったんじゃない? 俺あんまり抵抗しないタイプだったし」

「あのさ、それがアプローチだったとしたら?」


「あはは、それはないない! 要件伝えたら、いつもさっさと立ち去っていたもの」

「それは君があまりにも淡白な返答としたからでしょ?」


「いや、誠意を持って返答していたつもりだが」

「では、そういう女性が、『頑張って話しかけてみたけど、相手にされなかった。』と僕の前で凹んでいたって話をしようか?」

「既に全部言っているし。ってか本当かよ! 全然知らなかった。悪いことしたな」


「僕が中学の時に君に声をかけたのも、君の魅力にクラスの誰より早く気付いたからでね」

「そう言えば最初に声をかけてきたのは最上川だったな。魅力? そんなのあったんだ。どんな?」


「それは一言では言えないな。しかも本人目の前にして、さすがに言いにくいって」


それもそうか。この辺が俺空気読めていないのかな。


「でも、とうとう良い人見つけたんだなぁって」

「何の話?」


「先週かな、僕の別れ話が終わってから、夕暮れの街を彷徨っていた時に君を見かけたんだよ」

「声をかけてくれれば良かったのに」


「僕もそう思ったさ。でも君の横には驚くような美人の彼女がいたからね。手まで繋いで」


「ウゾッ!」

心臓が飛び出るかと思った。あの日だ! 


「これでも君とは長い付き合いだ。君の性格は熟知しているつもりだから、あれこれ詮索はしないよ。ただ、さすが千丈川だなぁって思ったんだよ。滅茶苦茶綺麗な人だった。驚いたよ」


俺は黙るしかなかった。葛川さんが自分にとってどういう存在なのかが、自分でもわからなくなっていたからだ。

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