表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女子高生の一日  作者: 蓋
5/28

4月11日(木) 部活紹介 日直:市川孝・加藤幸喜

4月11日(木) 部活紹介 日直:市川孝・加藤幸喜


 朝眠そうに欠伸を連発しながら登校してきた真希ちゃんはどうやら昨日深夜アニメをぶっつづけで見ていたらしい。「兄貴はサボりなのに……ほんと大学生ふざけてる滅びろ」と呪詛を吐いていた。

 聞くと、どうやらお兄さんはここから徒歩で行けるほど近い大学の2年生らしい。

 そして、今日は自主休講という名のサボりで、真希ちゃんが家を出るときも、リビングのソファで寝ていたらしい。

 「踏んづけてやったけど」と、そのときのことを顔を歪ませて告げる真希ちゃんからは、大学生への恨みがひしひしと伝わってくる。

しかし、今日は真希ちゃんにとって本来ならば胸を期待でふくらませる日なのであった。

「私が這う這うの体でここに来た理由は……そう、部活紹介があるからです!」

 と言いながら、部活紹介がある放課後には元気になっていた。よかったよかった。


 肝心の部活紹介とホームルームを一緒に行うということで、6時間目が終わった後はそのままホールに集合した。

ホールの座席は入学式のときと一緒だ。左隣に真希ちゃん、右隣にポニーテール柴田さんである。今回はダビデ様が壇上に立つ必要はないので、右隣の柴田さんも恋する乙女状態ではない。何部に興味あるのかを聞けば、バレー部かな、と返ってきた。聞けば、中学の時もバレー部だったらしい。

そして、左隣の真希ちゃんはいつになく興奮状態にあった。

 6時間目の数Aの時間に、殿が「佐藤、お前ヤクキメてない?」とからかったくらいだ。その後、殿は真希ちゃんにお腹を殴られるという制裁を受けていた。

「安西先生……部活、やりたいです!」

なんか隣りから聞こえた。

 やはりこの熱血な感じ、運動部に向いている気がする。


 部活紹介は気合の入っている部とそうでない部の差がはっきりと出た。

 特に気合が入っているのはラグビー部で、壇上でパスの練習を披露した。

 どの部員も必ず壁に激突して卒倒し、制服姿のマネージャーさんが壇上にも関わらず頭の上から水をかけていた。マネージャーさんの手の中にあるやかんの中身を魔法の水というらしい。

 しかし、そんな魔法の水のお陰で、次に壇上にあがったバスケ部の人が足元に散らばる水に足を取られてコケていた。

 そして、一番気合が入っていない部は放送部だった。

メガネをかけたインテリっぽい感じの先輩が、壇上に設置されているマイクで「あーあー」とマイクテストをしたかと思いきや、「これが放送部の仕事です。以上」で締めくくって壇上から降りて行ってしまった。

 右隣の柴田さんが「なあに、あれ」と軽蔑したようにつぶやいていた。

しかも、こともあろうにその先輩は卓球部のユニフォームを着てその後の卓球部紹介で高速ラリーをしていたのだ。意味が分からない。

ただ、ちょっと楽そうで、なおかつ部活という青春を味わえるのならお得だなぁと感じた。


「真田ちゃん、どの部活がよかったー?」

 部活紹介が終わって真希ちゃんと一緒に帰っていると、そう尋ねられた。

「えー……放送部かな」

「うっそ、あれのどこが!」

 真希ちゃんが私の言葉に驚きの声をあげたが、ホールの玄関を見て「うわぁ」ともらした。

私もつられて玄関を見ると、すごい人だかりができていた。

 周りの囁き内容から察するに、おそらく人だかりの中心にいるのは、ダビデ様である。彼は部活紹介をしていた先輩たちに囲まれているようだ。勧誘かな?

「あいつ部活クラッシャーなのに。事実が歪曲して伝わってんのかも」

 真希ちゃんはイヤそうに頭を振ってそう言うと、非常口から出よう、と踵を返した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ