5月8日(水) テスト返却 日直:二井清花・矢沢圭二
5月8日(水) テスト返却 日直:二井清花・矢沢圭二
今日は阿鼻叫喚な日となった。何故なら、テストが返却されたからである。記憶にない人も多いと思うが(私もすっきりさっぱり忘れていた。嫌なことは忘れる派なのだ)、4月8日に基礎学力テストを受けていた結果だ。
国語55点
社会51点
理科20点
数学19点
英語39点
うっかり真希ちゃんに、理数系科目は50点満点なのかと確認してしまった。タナセンが「50点以降は補講だからなー明日補講の紙配るからー」と言っていたが、教室中蜂の巣をつついたような騒ぎになってるので、誰一人として聞いていなかった。
「ま、元気だして」
理数系科目は50点満点なのか聞いた時から私の点数が予想できたのだろう。
真希ちゃんが生温かい視線で優しく私の肩を叩いた。
「おい、佐藤。どうだった」
タナセンからテストを返却された殿が席に戻ってきた。彼の手には、ドッグイヤーになっていない答案が握られている。
点数を隠さないやつは敵である。
「私、国語マジヤバかった」
現に真希ちゃんの国語の答案はドッグイヤーとなっている。殿が妙に納得した表情で頷いた。
「お前の記述って何故かギャル語だもんな」
「え、ギャル語なの、真希ちゃん」
想像がつかない。
『作者の意図を述べよ』という質問に、『てか、そんなの作者しかわからなぃしぃ~><』みたいなことを書いたのだろうか。なにそれ。ぜひとも見たい。
「真田さんは?」
殿に聞かれて、はっとなった。
いや、さすがに私にも見栄というものがある。
「いやー、最低点は数学だったかな」
はは、と乾いた笑いがこぼれる。
真希ちゃんがぶっと噴き出していた。酷い。後で問い詰めてやろう。
しかし、殿は納得したように頷いた。
「あー数学難しかったもんな。俺、最低は英語だったなー。外国語わからん」
と、ここで殿が、「なぁ、優一」と何故か後ろの席のダビデ様に話をふった。
おい、やめてくれ、これ以上優秀者を根こそぎ集めて私を背水の陣にしないでくれ。
「そう? 殿は勉強しないでゲームばかりしてるから」
左隣りの席の柴田さんと喋っていたダビデ様が、殿に向かって言った。麗しき美声様の登場である。
ダビデ様が会話に入ったからか、私の後ろの席にいる柴田さんの視線を肩にびしばし感じる。ちなみに、いつもダビデ様に話しかけている二井さんは、今答案を取りにいっているため席を外している。
「うわ、ひでぇ。俺のウイイレは最強チームです!」
「意味が分からないよ」
すぱっと切り捨てるダビデ様。あれ、こんな性格だったっけ。もっとこう、穏やかな性格のイメージなんだが。
私の戸惑いをぶった切るように、殿が「あー」と呻いた。
「まさか英語80切るとはなぁ。相当ヤバいよな、これ」
「うーん、そうだね」
呑気にそう言う殿に、同意するダビデ様。
「80点!?」
思わず大声が出た。しまった。
「ん? やめてよ、真田さん。俺の点数周りにモロバレじゃん」
思わず点数をばらしてしまった殿が肩を竦めて言ったが、ドッグイヤー答案を5つ抱えた私の耳にそんな戯言は入ってこなかった。
80点だ、と……。
私の中での敵が認定された日だった。




