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─ 勇者 ─

 えっと、オニです。

 この作品は、当方のブログに掲載されている小説です。

 少々コジツケ的なモノが点在しておりますが、それは読者方の胸を借りることに致しまして(ォィ)、どうかアズクの戦いを見守ってやって下さい^^

 とうとう魔界への道を切り開くことが出来た。今まで、これだけの為に、どれだけの人を見殺しにしてきたか・・・しかし、それも今日までだ。

「見殺しにして来ちゃった、とか思ってるの?また」

 体をライトアーマーで固める少年の後ろから、赤い服に身を包んだ少女、ミルがひょこっと顔を出した。少年、アズクは重々しく答える。

「・・・だって、そうだろう?俺たちは、世界を駆けずり回ってきたのにも関わらず、村や町の殆んどを・・・救えなかったんだ・・・」

 彼はガクリと肩を落とし、燃え尽きた村に倒れていた幼女の言葉を思い出した。

 メラメラと燃え盛り、黒くなってガシャガシャと崩れていく民家。そんな中、ミルの制止を無視して村の中へと駆けたのだった。

 その村に一人だけ息のある幼女を見つけた。隣には、黒く焦げた遺体が二つ。幼女の家族だろうか?だとしたら、この幼女を守って、死んでいったのだろう・・・。

 その幼女は、4、5歳程度のように見えた。アズクその泥にまみれた小さな体の上半身を抱え上げ、叫んだ。

「大丈夫か!?」

「・・・うぅ・・・ダレ・・・わたしお・・・ころしにきたの・・・?」

 大きな瞳を小さく広げて、何を言うかと思えば、恐怖に震えたその一言だった。そしてその眼は、疑いに満ちたもの。

「違う!俺は・・・」

 疑いの眼は止まらなかった。

「じゃあお兄ちゃんはダレ・・・?何で、お父さんやお母さんが動かなくなったの・・・?お兄ちゃんのせいじゃ・・・ない・・・の・・・」

 彼の腕の中、その幼女は瞬く間に生命の砂を落とし、やがて、それは全て落ちた。

 おにいちゃんのせい・・・じゃない・・・の・・・。

 この言葉を思い出すたび、あの瞳を思い出すたび、胸の中に大きな楔が打ち込まれるのだ。

「あなたのせいじゃないわ・・・」

 ミルが少年の鎧の肩に手を乗せた。

「だから、ここまで来れたんじゃないの・・・?」

「・・・・・・」

「今までツライ思いをしてきたから・・・私たち、ここに立ってる。望まないけど・・・悲しむなら、全てが終わってからにしましょう?その時は、私も必ず隣にいるから・・・」

「ミル・・・」

 アズクは肩に乗ったミルの手をきゅっと握った。

「はいはいはい。もういいだろ?いこーぜ?」

「人間のことはよくわからない。しかしミルの言うとおり、悲しみは後に。今は進むべきかと」

 この一団の中で一番のお調子少年、槍使いデイロスと、アンドロイドの弓使い少女、サミが隣から急かした。

 一団とは、アズク、ミル、デイロス、サミ、四人から成る旅団である。アズクがリーダーを務め、ミルがその補佐を務めている。

「・・・分かった!行こう!!」

 少年はやがて下を向くのをやめて、希望と悲しみの狭間に、魔界(アヌレイル)への一歩を踏み出した。

 魔界へは、“(いん)”が必要で、アズクだけがその能力を有していた。よってアズクがいないければ魔界へ行くことは出来ない。さらに言うなれば、今まで魔界へ行けなかった理由がそれだった。印は非常にデリケートで壊れやすい。それを絶対的な力にするため、アズクの真の能力、“印に導かれし者”の魂が覚醒しなければならなかったのだ。アズクが覚醒するには、少年らしい心と、ユメをこの世界に見ることが必要であったが、なにぶんこの世界は半分、いや、ほぼ全てが魔界の魔物に多い尽くされていたために、その力を真に開放するのは難しかった。

 しかし、この少年はミルと言う少女との旅を経て、ミルが危機にさらされた時にその“印に導かれし者”を覚醒させたのだ。

 彼は彼女との世界を望んだと言うわけだ。


 印を通して、魔界への二次元空間、平面世界へと移動した四人は愕然とした。

 そこは、地獄のような・・・光景だったのだ。

 黒い雲の隙間から、太陽の光とは似つかぬ赤い月の光が地を鮮血のように真っ赤に照らし、その土や草木を腐らせ、建物といえば“何か”で作られた禍々しい生き物のような形をしたものだけであった。さすがのサミもその光景には眼を細めた。

「酷い・・・」

 まるでこの世の終わりを予言しているような光景・・・。アズクは自然と拳を握り締めていた。

「くそっ・・・魔物たちめ・・・好き放題に・・・!」

 その時、後方から異常とも思える量の殺気を感じた。いち早くデイロスが翻り、槍を構える。

「さっそくの大歓迎だぜオイ!」

 その声はいつものお調子者デイロスとは違っていた。

 遅れて振り返った三人も、その焦りに同調した。何故なら。

 ミサが敵数情報を震えた声で読み上げる。

「・・・分析。敵数、100から300・・・後詰として500・・・」

 真っ黒い塊の山がこちらに近付いてくるようで、見ているだけで精神的に敗北を認めてしまいそうになる。

「アズク・・・」

 不安になりながらも、必死にプレッシャーを抑えて杖を構えるミル。アズクもなるべくみんなを不安にさせないよう、剣を構えた。

「大丈夫、今まで、俺たちは四人で何でも乗り越えてきた!!・・・出来る!俺たちなら!必ず!!」

 それにこくりと、みなゆっくり頷いた。・・・死を覚悟して。

「行くぞ!!」

 アズクの額の“印”が赤く赤く光だし、真っ黒い塊の魔物たちと、赤く光りだした四人の英雄が激しくぶつかった。

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