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あさりの兄弟

作者: 梟 由香里

――世界はある日激変する。

 閉じられた空間で二人きりで暮らす兄弟。

 ガラス越しの世界があると知りつつも、実際の世界は狭い庭のみ。

 砂と瓶の入り口から取れる死なない程度の食べ物を食べて細々と生きていました。

 何もないけど、特に不便は感じていませんでした。

「兄ちゃん兄ちゃん、今日はこんな綺麗な貝を拾ったよ」

「良かったな。ご飯作ったから一緒に食べよう」

 兄は弟以外の仲間を知らず、弟も兄以外の仲間を知らない。

 外は知らないけど二人でいれば幸せ。

 大陸棚の淡い日差しを緑色のガラス越しに受け、二人の日々は輝く。

 いつまでもそれが続くと信じていた。


 ある日の事。

 突然地面が揺れて世界は闇に包まれた。

 何が起こったのかわからない兄弟は怯えて二人身を寄せ合って天変地異を耐えました。

 そして暗闇があけると、ガラスの外の風景は一変していたのです。

 何もない空間と聞いた事もないざわめきと、時折よぎる巨大な影。

 小さなガラスの世界しか知らない二人は震えているしかありませんでした。

 しばらくはそれ以上のことは起こりませんでしたが、また突然異変が起こりました。ビンにひびが入ったのです。

 二人の世界が壊れていくのを感じ、幼い弟はついに耐え切れずに泣き叫びました。

「兄ちゃん! 空がバラバラになっていくよ! もうやだよ僕怖いよ!」

「だ、大丈夫だ。何が起こってもお前の事は俺が守ってやる!!」

 兄だって怖くてたまらないしどうやって守ればいいのか分かりませんでしたが、自分までパニックになっては元も子もないので恐怖をこらえて弟を抱きしめ続けました。

 緑色の空が消えて広い空間が現れました。

 そしていずこからともなく聞こえてきた声が言いました。

――さあ、貴方達は自由です。何処なりともお行きなさい。

 その声にポカンとしながら二人は顔を見合わせると、何となくもう怖い事は起こらない事を悟りました。

「助かったのか……?」

 二人はやっと安心すると、何処にも行かずに“空”の消えた瓶の中で今まで通りに暮らし始めました。

 いつまでもいつまでも……。

 なぜなら、二人にとって世界とは瓶の中だけに存在する二人だけの世界だけだから。

アサリ達は結局水族館に収容され、瓶から出されてしまったようです。

「瓶の中に閉じ込められたままなのは可哀想」と言うのはもしかしたら私たち人間のエゴかもしれませんね。

少なくとも“彼等”瓶の中でも普通に生きていました。

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