悪夢夜(あくむや)~俺は知らない~
ある日、学校で起きた事件。この事件からストーリーはホラーな展開に入っていく……。
悪夢夜の第四弾!! ごゆっくりお楽しみください。
「いったい誰だ、こんなことしたのは?」
山田先生は教室で叫んだ。いっせいに皆が振り返る。そこにはガラスのようなものが倒れて割れていた。近くには花も落ちていたため、おそらくは花瓶だろう。先生は顔を赤くしてメガネをカチャッとかけなおすと生徒皆の顔を睨むように見渡した。窓側の一番奥の席の男、武本が先生と目が合った瞬間ビクリと反応した。先生はにやりと笑みを浮かべ、武本を教室の外へ呼び出した。
「どうしてこんなことをしたんだ?」
先生が問う。
「知らないよ、お、俺は知らない!!」
武本はそれだけ言うと走り出した。
先生が後を追おうとすると後ろから女子生徒に呼び止められた。振り返って急いでることを言う。しかし女子生徒は予想もしなかったことを口にした。
「花瓶は私が割ったんです。お掃除してたらぶつかっちゃって」
「なんだって?」
先生はポカンとする。そして“しまった!!”という顔になると階段のほうへ行き、一気に上りだした。彼は何かあると屋上へいく癖があったのを先生はよく知っていた。扉の前まで行き、息を切らしながら取っ手に手をかける。そして扉を一気に開いた。だが、そこには武本の姿は無かった。まさかと思い柵越しに下を見る。そこには彼の倒れている姿があった。彼は自殺してしまったのだ。先生はそこに膝まづきうつむくと自分の頭をおもいっきし叩いた。
「どうしてそれを言ってくれなかったんだ」
その夜。先生は遅くに帰宅した。妻や子供はもう寝ていて、机の上に手紙がおいてあった。いつものパターンだ。遅く帰ってくるときはいつも机に手紙が置いてある。先生は手紙を読むと奇妙な感じにとらわれた。手紙の内容がどこか不自然なのだ。
おとうさんへ
お帰りなさい、また遅くなったんだね。ご飯は台所にあるよ。今日はとてもいいお肉が手に入ったからよく味わって食べてね。それじゃあ、楽し おやすみ。
手紙の“それじゃあ”の後の言葉……。“楽し”とは何のことだろうか? それにその部分には、ほかの紙を貼って、何度も書き直した後がある。字は明らかに娘の字なのだが、書いてあることは妻と同じような口調だった。しかし先生は深くは考えず、そのまま台所へ向かった。すると上から紐が降りていてその先には何やら人型の肉がぶら下がっていた。その肉の着ている制服には見覚えがある。よく見るとそれは、皮がはぎとられた武本の姿だった。先生は吃驚してご飯も食べずにふとんに入ってしまった。
翌日。机を見てみると手紙はきれいになくなっており、家族のだれもその手紙を書いていないと言う。妻が先生の顔を見て驚いた表情をする。
「あなた!! どうしたのその顔」
「え?」
「“え?”じゃないわよ!! あぁ、もう見てらんないわ。鏡見てごらんなさい」
先生は首をかしげて洗面所へ行くと鏡を見てとても吃驚する。顔は少したるみ目の下にはクマ、髪の毛やまゆ毛に白髪が混じっている。自分の姿に目を見開き、そのまま後ろへ倒れて尻もちをつく。“もしや”と思い台所に行く。台所に武本の姿はない。玄関の方で音がし、先生は玄関へ向かう。下を見ると妻の着ていた服が全て落ちており、妻そのものの姿はなかった。そこには娘の服も落ちている。直後、目の前に何かが現れて先生の視界を遮る。一歩、二歩下がりよくよくそれを見る。そこにあったのは昨日と同じく、皮をはぎとられた武本の姿だった。武本の死体は言葉を発する。
「俺ハアンタヲ許サナイヨ」
そう言うと武本の死体は消えていった――――
妻と娘は帰ってくることはなく、行方不明。
このたった二日で、先生は90歳近くのおじいちゃんのように老いてしまった。
そしてまもなく息を引き取ったという……。
もしあなたの学校に頭ごなしにしかりつける先生がいたら、このお話しを語って怖がらせちゃいましょう(笑)みなさん、くれぐれも確証なしにその人を叱ってはいけませんよ。こういうように、あなたに仕返しに来ますから……。
悪夢夜はネタが尽きるまで永遠に続きます。
それではまた次回お会いしましょう。