消えた証拠と黒い噂
学園祭の賑わいが少し落ち着き始めた放課後、奏と紗夜は図書室で昨日の紙片と鍵を再確認していた。
「この鍵……一体どこに使うんだろう?」
紗夜は首をかしげながら、手元の紙片をもう一度眺める。
「……重要なのは、陽菜の行動の裏にある意図だ」
奏は冷静に紙片を見つめる。
「昨日の暗号も含めて、誰かが私たちを導いている可能性がある」
その時、図書室のドアがゆっくりと開き、霧島迅が現れた。
「黒崎奏くん、またここか」
冷静な声に紗夜は思わず後ずさる。
「霧島さん……何か新しい情報でも?」
奏は紙片を胸に握り、冷静に問いかける。
霧島は頷くと、手に小さな封筒を差し出した。
「これを見つけた。昨日の資料の一部が消えている。どうやら、誰かが証拠を隠したようだ」
紗夜が封筒を受け取ると、中には学園の防犯カメラの映像データと、さらに別の暗号が入っていた。
「影は嘘の中で動く
証拠は消え、真実は闇に潜む」
「影は嘘の中で動く……証拠は消えた?」
紗夜の眉がひそむ。
「なんか、怪しい噂が流れてるみたいだし……学園全体が巻き込まれてる感じ?」
奏は映像データをパソコンで確認する。確かに、防犯カメラの一部が消去されており、映像の欠落部分には不自然な時間がある。
「誰かが、証拠を意図的に消している。つまり、この事件は計画的だ」
霧島が視線を鋭くする。
「ここで重要なのは、噂の正体だ。表面的な話に惑わされるな。黒崎奏、君ならすぐに理解できるはずだ」
紗夜は目を丸くして奏を見る。
「……また私たち、心理戦に巻き込まれるの?」
奏は小さく頷く。
「そうだ。しかし、焦る必要はない。証拠が消えた場所、時間、関係者――すべてを整理すれば、次の手がかりが見える」
その時、校庭の遠くで陽菜が誰かと話す姿が見えた。
「……あの笑顔の裏に、何かある」
奏は微かに眉をひそめ、紗夜にささやく。
「次は、彼女の行動を観察する番だ」
春の午後、学園に漂う黒い噂と消えた証拠――。奏と紗夜、霧島の三人は、事件の真相に少しずつ近づきつつあった。しかし、影は静かに、確実に彼らを試している――。




