偽りの笑顔
春の光が校舎に降り注ぐ中、学園祭が始まった。校庭には模擬店が並び、生徒たちの笑い声や歓声であふれている。しかし、奏と紗夜の胸中には昨日までの影の存在が、まだ消えずに残っていた。
「……こんな明るい日なのに、心が落ち着かないね」
紗夜が笑顔を作るが、目は鋭く周囲を見渡す。
奏は無言で紙片をポケットから取り出す。昨日の鍵の行き先はまだ不明だ。だが、学園祭には新たな手がかりが隠されているはずだ。
「……あれ?」
突然、紗夜の視線が校庭の一角に集まった。
そこには、昨日失踪したはずのクラスメイト・桜井陽菜が、まるで何事もなかったかのように笑顔で模擬店に立っていた。
「陽菜!? 何でここに……」
紗夜が驚きの声をあげる。
陽菜は楽しげに手を振りながらも、どこかぎこちない笑顔を浮かべていた。
「えっと……昨日は、ちょっと用事があって……ごめんね」
奏は目を細め、周囲の人々の動きを観察する。笑顔の奥に微かな違和感がある。
「……何かを隠している」
その時、遠くで小さな紙片が風に乗って飛んでくる。紗夜が慌てて拾うと、そこには新たな暗号が書かれていた。
「笑顔の裏に潜む影
真実は、歓声の中で動く」
「笑顔の裏に影……歓声の中で動く……」紗夜は眉をひそめる。
「何か、これってただの失踪じゃなくて、もっと大きな計画の一部なのかな?」
奏は紙片をじっと見つめる。
「可能性は高い。陽菜の行動も、偶然ではない。誰かが巧妙に仕組んだものだろう」
その瞬間、二階の廊下から女性の笑い声がかすかに聞こえた。昨日の地下、図書室で聞いたあの声――。
「ふふふ……学園祭は楽しい舞台。さて、次は誰がその舞台に立つかしら?」
紗夜は小さく息を呑む。
「やっぱり、これはまだ序章だね……!」
奏は紙片をポケットにしまい、軽くうなずく。
「次の手がかりは、この歓声の中だ。私たちは見逃さない」
桜舞う校庭で、笑顔に隠された影と、事件の全貌へと続く新たな謎が、奏と紗夜を待っていた。




