影を追う放課後
放課後の校舎は、昼間の賑わいが嘘のように静まり返っていた。桜の花びらが風に舞い、廊下にはかすかな光が差し込む。奏と紗夜は、昨日発見した地下の小箱に入っていた鍵を握りしめながら、次なる手がかりを追っていた。
「この鍵、何を開けるんだろう……」
紗夜は手元の鍵をぐるぐる回しながら首を傾げる。
「可能性は二つ。校内の隠し扉か、昨日見つけた資料の小箱の中にある別の仕掛けか」
奏は冷静に分析する。紙片の暗号と照らし合わせれば、何か手がかりが見つかるかもしれない。
「……あ!」
紗夜が廊下の角を指さした。影のように揺れる何かがあった。
「人影?」
奏はそっと足を止める。
「いや、動きが一定じゃない。まるで、こちらの様子を探るかのようだ」
二人は息を潜め、影の動きを追う。廊下の奥で影は止まり、壁に沿って消えた。
「……追いかけるしかない」
紗夜は小走りで影を追い、奏も後に続く。
その先に現れたのは、普段は使われない古い図書室。埃っぽい空気に包まれ、窓から差し込む光が薄暗い室内にぼんやりと広がる。
「ここか……」
奏は静かに呟く。机の上には、昨日の紙片と同じインクで書かれたメモが広げられていた。
「答えは光と影の狭間にある」
「光と影の狭間……?」
紗夜が首を傾げる。
奏は壁際に置かれた鏡を指差した。
「この部屋の鏡に意味があるかもしれない」
二人が鏡に近づくと、何かが壁に映っているのに気づく。自分たちの影ではない、もう一つの影。薄暗い光の中で、誰かがこちらを見ているような気配があった。
その瞬間、図書室の奥から小さな足音が近づく。
「誰だ……?」
奏が警戒する。
しかし現れたのは、誰もいない。足音はすぐに消え、残ったのは微かに揺れる影だけ。
「……誰かが、この迷宮の中で私たちを試しているようだ」
奏の声には冷静さの中に緊張が混じっていた。
「でも、面白いね! こういうの、探偵漫画みたいじゃん!」
紗夜は笑顔を浮かべつつも、目は光を失わない。二人の背後で、窓から差し込む桜の花びらが揺れる。
この影の正体を突き止めることが、次の手がかりを得る鍵になる――。奏と紗夜は、迷宮のような校舎で、新たな謎を追い続ける決意を固めた。




