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桜舞う街の探偵奇譚  作者: 櫻木サヱ


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3/11

迷宮入りの手紙

翌日、校内はいつも通りのざわめきに包まれていた。しかし奏の心には、昨日の“不可解な失踪”の影がまだ残っている。


「昨日の紙片、やっぱり気になるな……」


奏は自室の机に向かい、紙片を広げてじっと見つめる。インクの乾き方、折り目、文字の配置――細部にわたる観察は、奏にとって日常の一部のようなものだった。


そのとき、机の下に小さな封筒が滑り込むように落ちた。紗夜だった。


「奏くん、また手紙届いてるよ! しかも、昨日の紙片と同じくらい怪しい感じ!」


封筒を開けると、中には小さな紙片と共に、暗号のような文章が書かれていた。


「光のない廊下を進め

影を越えた先に、真実が待つ」


紗夜は眉をひそめる。

「光のない廊下って……校舎の地下のこと? 影を越えるってどういう意味?」


奏は紙を手に取り、唇をかすかに噛む。

「暗号……だな。文章のリズムや文字の配置に意味がある。何か隠されている」


紗夜は即座に反応する。

「よーし! 私、暗号解読は苦手だけど、行動力なら負けないよ!」


二人は放課後、校舎の地下へ向かった。薄暗い廊下に足を踏み入れると、ひんやりとした空気とわずかな湿気が漂う。壁には古い掲示板や傷跡があり、まるで迷宮のようだった。


「ここ……光がほとんどないね」

紗夜が手探りで進む。


奏は紙片の文字を思い出す。

「影を越える……つまり、何か目立たないもの、もしくは物理的な障害を乗り越えろ、ということかもしれない」


その時、壁の奥から微かに光が漏れるのを二人は見つける。近づいてみると、そこには小さな隠し扉があった。


「これだ……」

奏は扉を慎重に開ける。中には古い資料や、誰かが置いていったと思われる小箱があった。


「うわ、まるで探偵漫画の現場みたい!」

紗夜は目を輝かせる。


箱の中には、昨日の紙片と同じインクで書かれたメモと、小さな鍵が入っていた。

「鍵……これ、どこかの扉の鍵かも」

奏は慎重に鍵を手に取った。


その瞬間、二階からかすかな笑い声が聞こえた。昨日と同じ、あの女性の声だ。


「ふふふ……あなたたち、よくここまで来たわね。だが、真実はまだ迷宮の奥……」


紗夜が振り返る。

「……やっぱり、これはただの失踪事件じゃないね!」


奏は小さくうなずく。

「そうだ。始まりに過ぎない。次は、この鍵が何を開くのかを確かめる必要がある」


春の放課後、地下の迷宮に差し込む微かな光の中で、二人は新たな手がかりを胸に次の一歩を踏み出した。


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