色がない明日に、さよならの花を。
君の笑う顔が、もう思い出になってしまうなんて、まだ信じられない。
春の終わり、風が冷たかったあの日。
君は不意に立ち止まって、振り返ってあざとく言ったんだ。
「ねえ、もしも私がいなくなっても、ちゃんと笑ってくれる?」
そんなの無理だよ、って言いたかったのに。
そうやって言うことを見越してか、
君は僕に近づきながら、
「私はここにいるから」
と言って僕の胸に指をつけた。
その日から、何日経ったかわからない。もしかしたら数ヶ月経ったかもしれない。
僕は、目を覚ました。
辺りを見回すが、君はいない。
でも、机の上には色鮮やかな花束。
それは、君が最後にくれたものだった。
”さよなら”じゃなくて
”行ってらっしゃい”の意味を込めて。
僕は今日も、その花を胸にしまって歩いていく。
色がなかったはずの明日を、彩ってくれた、その花と。
色がない明日に、さよならの花を。
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