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文字数が尻窄み
人狼がスポンジ製の剣を持って割り込んできた。
実弾ではないとはいえ作り物ではない銃撃戦は初めて見るのに、ブレードを振り回す人狼とのインファイトとまで来ると理解が追い付かない。
これがサバイバルゲームなのか。……いや、やっぱり違う気がする。何か、もうちょっと、こう。
少なくともアクション俳優ばりのアクロバットを披露したり、ブレードをぶん回して襲ってくる敵をお姫様抱っこしたりするようなゲームではないはずだ。
続く彼の行動はといえば、
「ちょ、せ、先生!」
人狼のものだろうか、跳ね上がる声。そして、
「撃てるもんなら撃ってみなあ!」
前屈みになった人狼の後ろに中腰になって引っ付く先生の姿が。
部員の主観映像から見たそれは園児の列車ごっこのようだった。
「な!?この卑怯者!」
「今すぐオウミちゃんから離れろ!ドタマぶち抜いてやる!
「FU●K!」
声を上げない人形達も、散弾銃使いが先刻見せたロックなジェスチャーで批難している。
先生の盾として利用されてしまった味方に引き金を引くことができず、彼らは指を咥えて見ているしかなかった。
先生の暴挙に対してか、部員の口の悪さに対してか。嗣躯先生は眼鏡の鼻当てを摘まんで眉間に深い皺を刻んでいる。
部員達が後退を考え始めた所で、痺れを切らした散弾銃使いが飛び出した。
人狼の懐に入って先生の射線を遮り、
「これ借りるよ!」
人狼の持っていたスポンジブレードをぶんどり、下方向からのフルスイング。
先生が飛び退き、すかさず人狼を抱き寄せる。
「ユキちゃん──」
逞しい腕に抱かれ人狼は目を白黒させている。
そのまま隣の物陰へ押しやり、腰の回転式拳銃を抜き放つ。
三つの弾塊に合わせて激しく床を蹴る先生へ、突進じみた勢いで間合いを詰める。
窓際へと追い立てて退路を絞り、窓際を背にした先生に横薙ぎの一撃を放つ。
猫を思わせる跳躍をすると、高跳びの要領で背中から窓枠を通過する。
さながらアスリート選手のように、地に足の着かない束の間、優雅に舞う軌道は黄金比をなぞる。
揺蕩うように爪先から着地すると。
カチッ、という調子外れなクリック音。
「ん?」
窓枠から半径十メートルを敷き詰めるように仕掛けられた地雷が、一斉に爆散した。
爆発オチです