あとがき(真)
これにて山姫~鬼無里村異聞~は完結となります。
エンタメ作品のわりに、ややダークな雰囲気で話が進みますがいかがだったでしょうか。
ただ登場人物は比較的少なく、それぞれ個性的なキャラとして書けていたのではないかと思っています。
少年少女が主人公ではありますが、子供たちだけが戦い大人は何をしているか分からない、或いは大人は無能という形式は、リアリティのために避けたいと思っていました。
そのため、少年少女が大人たちとの関りの中で成長する姿と共に、大人たちは大人たちで戦っているという姿も併せて書いていますが、それが逆に幅広い年齢層の読者に共感していただけるのではないでしょうか。
小説を貫くテーマは、あらすじにも書いたとおり、「大切な人を護るために」です。
鬼助、フウ、喜左衛門、五郎兵衛、久安、ベニ、あやめ、みんなそれぞれ大切な人のために行動している姿を書いたつもりです。
中でも喜左衛門は、村の割元でもあり、鬼助のことだけでなく、常に村のためを思って行動をしています。
昨今は政治家でも大企業での経営者でも、トップが責任を取らないということが往々にしてあります。
近世以前の武士社会では、きちんと責任を取ることが美徳とされていたわけで、現代社会の批判として、村を守るために、潔癖にも責任を取って散りゆく喜左衛門の姿を書きました。
切腹というのは、現代では刑罰と勘違いされている方もいますが、近世では自ら潔く責任を取るための行動として、武士社会には浸透していました。
当然明治以降そういう価値観は失われているわけで、現代での自死を正当化するということではありません。
また、物語を書いていく中で、裏金が横行し庶民が苦しんでいた当時の松代の状況と、現代の日本はシンクロしている部分があることに気づきました。
そのような視点でも、現代社会への風刺と捉えることができると思います。
時代小説ではあっても、現代の世相を映し出すことは大事なのかなと思っています。
念のため付け加えますと、筆者は特に政治的思想を強く持っている人物ではありません。
さらに現代と絡めて言うと、フウについては多様性的な要素もあり、書き方には気を遣いました。
偏見を持たず、美化もせず、できるだけ淡々と書いたつもりです。
フウは不思議な能力があるとされる女の子ですが、いわゆるセカイ系のような「戦闘を宿命化された美少女と、彼女を見守ることしか出来ない無力な少年」のような構図にはしたくありませんでした。
ストーリーとして意識したのは、ディズニー映画やジブリ映画のような少年少女が協力し合う王道路線です。
構成で意識したのは、どのように伏線を張って、それを最後にどう回収するかでした。
最終的に史実で起きた事件となって伏線が回収されるという構成は、ある程度うまく書けたのではないかと思っています。
クライマックスで、鬼助と喜左衛門と五郎兵衛の行動が同時並行して物語が進行する場面は、個人的にも気に入っています。
最後に、この鬼無里は、書籍化を目指し、小説投稿サイトアルファポリスの第10回歴史・時代小説大賞にエントリーしております。(題名は「山姫~鬼無里村異聞~」と改題しております)
ページ下部にLinkを載せておきますので、投票よろしくお願いいたします!
投票は6/1~です。
イラストを描いてくださった丸岡先生、早稲田大学漫画研究会の皆様には、この場を借りてお礼申し上げます。
それでは最後までお読みいただき、ありがとうございました。
鬼助
フウ
フウ
喜左衛門
あやめ
五郎兵衛
ベニ
久安
克林
シロ
新右衛門
小隼人
紅葉
田村騒動については、Wikipediaの恩田木工の項や、下記のサイトに多少書かれています。
筆者は文献を調べて小説を書きましたが、Webには情報が少ないのが意外でした。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%81%A9%E7%94%B0%E6%B0%91%E8%A6%AA
https://adeac.jp/nagano-city/text-list/d100090/ht005420
https://www.kcw.co.jp/hp/gw/matushiro/aruku3.html