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扉を開けた先は広いホールなっており、そこには様々な人が遊んだり、作業をしていたり、動き回っていた。極々普通の人たちに見えるだろう。いえ、おかしくもない極々普通の人たちよ。けれど、エルキュール様たちから見たら異界に映るかもしれないわね。
「ロジェ、彼らは」
「ちょうどここにいる子たちは皆この世界で罪深き罪人と呼ばれる欠損者ですわ。腕なり、足なり、目なりと体の一部の機能を失っております」
最初から視力をもたない子もいる。足が動かない子もいる。彼らのどこに罪があるというのだろう。
「あー、ローズ様だ」
「ローズ様、お帰りなさい」
「おかえいー」
「わー、ローしゃま」
私がきたことに気づいた子達がわらっと集まってくる。それに驚く男二人。全く情けないわね。
「この人、だーれ?」
「ローズ様のいい人?」
「こら、変な言葉を覚えたのは誰かしら?」
怒ってるわよとポーズをすれば、きゃーといって逃げていく。けれど、追いかけないのとちらりちらりとこちらを見ているのだから、しょうがない子たちよね。
「普通の子達でしょう」
「あ、あぁ」
「まぁ、壁際にベンチがありますから、見てられるとよろしいかと」
「ロジェは」
「私? 私は少々おいたがすぎる子達にお仕置きをしてまいります」
力こぶしを作るポーズをして、そういえばポカーンとするエルキュール様とイニャス様。まぁ、普通の令嬢はこんなポーズしないわよね。そんなことを思いながら、私は駆け出した。勿論、子どもたちを捕まえるために。
わー、きゃー、逃げろーと騒ぎながら転がったり走り回ったりする子達を上手く捕まえられずに遊ばせる。
ちらりとエルキュール様たちの動向を確認すれば、私の言ったとおりに壁際のベンチに腰を下ろしていた。物珍しそうに観察をしていたようだけど、そこに一人の少女が歩いていっていた。彼女なら、大丈夫ね。
「ローズ様、どうかしたの?」
「おなかすいた?」
「ぽんぽんいたい?」
追いかけずに立ち止まってしまった私に子ども達の方から近づいてくる。いい子たちだわ。
「あら、いいところに、捕まえたー」
「えー、ズルい」
「しんぱいちたのにー」
「にぃー」
近づいてきていた子達を素知らぬ顔で抱きしめ、脇腹を擽る。きゃははとくすぐっちゃいと暴れながらも逃げ出さない子達。あら、反省してないわねとまだまだ擽っているもクスクスと笑う声。
「フリジア」
「お久しゅうございます、ローズ様」
発声源はシスターを思わせるシンプルな服装に紅唐の髪とツァボライトのような目を持つ少女。私が声をかけるとカーテシーをして挨拶してくれた。
私と同じ色味で似た容姿のフリジア。何でもルヴェール達曰く魔力の質もよく似ているのだとか。その結果、ルヴェールが私と間違えて声をかけたことによって私達は出会うことになった。フリジアは元々ジラルディエール家の分家の分家の分家の娘だった。まぁ、そこまでいくと功績などを上げてない限り爵位は持ってない。つまり領民。ただ、血筋で言うこともあって要所の管理者にはなれていたみたいだけど、ご両親はフリジアをいないものとして扱っていた。出会った当初なんて酷いものだったわ。髪は手入れされておらず、手足も骨と皮まではいかずとも痩せ細り、体は傷らだけだった。よくこれで生きていたと思うほど。
「顔色も良さそうね」
「全てはローズ様のおかげでございます」
横領しただのと言って追い出され彷徨っていたところをルヴェールが見つけ、私が拾った。とはいえ、なにか言って来られても困るから縁切りは確実に行い、書類なども全て残している。フリジア自体は家族に興味がなかったらしくこうして孤児院の責任者になって、彼らと家族として過ごしているわけだけど。
今ではふっくらした顔つきになって背格好もよく似ている。私の服を着せるもしくは同じ格好をしたら、双子に思えるくらいでしょうね。
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