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秋学期は比較的に平穏に終わったと言えるだろう。まぁ、魅了された人間が増産されてたから比較的とつけたわけなのだけど。これがヒロインの魅力持ち疑惑に繋がるのよね。とりあえずは私たちが使う教室などはちょこちょこエリア無効化をかけておいたから少しは減ったはず。常時見えるようにしていてもいいけど目の前が気持ち悪くなるからたまーにしか見ないようにしたのよね、だから、よくわからないのよね。ただ、予防できるのなら少しでもやっておきたいじゃない。知り合いになんかしらあったら嫌だもの。
冬学期が始まるとすぐに冬休みに入る。そのため、しばらく離れる支店には護石を置くように言っておいたし、下手なことが起こらないことを祈るしかないわね。
「こうしてゆっくりと移動するのもいいな」
「……なぜ、エルキュール様と一緒なんでしょう」
そう、なぜか、帰領の馬車にエルキュール様とイニャス様が同席している。王都から北に公爵領はある。地球の感覚と同じように北は雪国といってもいい。十二月であれば、道行く道にも雪が降り積もっている。そのため、私もエルキュール様たちも少し暖かめな服装だ。まぁ、馬車の中は暖房が効くようにしてるからそれほど寒くはないのだけど。馬は五頭引きで一番前の二列目には除雪装備をつけている。また馬車自体にも雪道でも走行できる設備を取り付けてるわけなのだけど。
「一緒に行った方が合理的だろ」
まぁ、確かに護衛などのことを考えればそうかもしれないけれど。それに王家が所有する馬車に暖房機能と雪道走行機能が付いているとは考えられないわね。そうなると、ちょうどいいのか、悪いのか。
「婚約中の男女だけが密室に、というわけでもない」
「そうではありますが」
「言いたいことはなんとなくわかる。とりあえず、そうだな、俺はお忍び中だ。公務に行こうとしているわけではない」
「左様で」
「あぁ、そうだ。それにこのことについては公爵にも伝えてある」
お父様に伝えているということは色々と話し合ってそうね。お父様は知ってるなら、私にも教えてくれてもいいと思うのよ。ちょっと恨んでおこう。少しくらいなら、許されるわよね。
「言っておきますが、色々と寄りながらの旅路になりますので屋敷に着くのに時間はかかりますわよ」
「あぁ、問題ない。公爵からもそう聞いている」
「……お父様はどこまで貴方に話されているので?」
「さぁ、どこまでだろうな」
ふくくと何かを含んだように笑うエルキュール様をジト目で見てしまうのは仕方ないでしょう。まぁ、私の予定がわかっているのなら、別に困ることはないわ。
「君とグラシアン殿が動いてくれるおかげで非常に助かっていると言っていた」
「あら、私は自分の好きなことをやってるだけですわ」
「あぁ、君に言ったらそういうだろう。俺も公爵も理解してるつもりだ」
はぁと私が溜息を吐けば、何が楽しいのか笑われる。解せないわ。
「そういえば、尋ねてもいいだろうか」
「なんでしょう?」
「これだけでも通行不可になってもおかしいんじゃないか?」
公爵領に近づく中、次第に雪の量は増えていく。まぁ、平民の子達が帰らないのはこれが原因でもある。歩きや通常の馬車では冬休みに入る頃にはもう通れないのだ。公爵領に入ると更に雪嵩が増える。
「えぇ、通行不可ですわね。春になるまでは交通はなくなりますもの」
「ローズ」
「今年はなおのこと雪が多いようですから、一部領区はすでに道が封鎖されているそうですわ」
やはり、秋に一度戻るべきだったわと頬に手をあて呟けば、違うそういうことじゃないと溜息を吐かれる。わかってるわよ。
「公爵領に入ればわかりますわ」
意味がわからないと首を傾げているエルキュール様にそれ以上の詳細は教えない。教えてもいいけれど、説明が難しいもの。見てもらった方が早いわ。
数ヶ所町を抜け、数日かけて公爵領へと入る。冬以外は飛ばせば一週間以内で行ったり来たりできる。けれど、冬は雪のせいでそれが不可能になる。そのため、週一のお茶会も冬の間ばかりは月一になってたのよね。
「これは、雪の壁か」
公爵領の道は秋のうちに火石を撒く。そのため、雪が降っても積もらないようになっている。そして、道との境界線には溝。その溝に防護石が撒かれている。これによって、溝から道に雪が崩れ落ちないようになっているんだけど、あまり高くなりすぎると効果がなくなりそうね。今度、報告書を提出してもらいましょ。もしかしたら、すでにそういうところがあるかもしれない。
「一気に道からなくなったのはそういうことか」
説明すればなるほどと頷かれる。本来であれば、王都の道までこれが敷けれれば問題ないのだけど、首都を含めた王領と公爵領は隣り合っているわけではなく、遮るように他領を挟んでいる。まぁ、隣り合っていたとしても領外までこれを敷くのは難しいと言ってもいいだろう。
「火石は民たちの家にも必須だからな」
「えぇ、そうです。それに道に撒くだけの量をどこから集めるのかなど色々と問題がございまして」
「一度、領外で手を貸せば、寄りかかられる可能性があるということか」
「まぁ、そういうことですわね。一度だけで済めば良いのですがこういう自然現象というのは毎年のことですから」
金があるのだからいいだろう、力があるのだからいいだろう、そう言われたことは何度もあった。それとこれとは話が違うということ。こちらとしても提案はできるが、その提案をどう実現するかはその領主にかかってくる。それなのに全てこちらに投げられても困るというもの。
「そういえば、公爵領は税が高かったな」
「えぇ、それが高い分、こういうことに利用しております」
なるほどなと考え込むエルキュール様。国でやろうとなれば大事業になるわね。むしろ、足並みを揃えるところから始めなければならない。学生ですら各領地の特徴などを知らなかったのだから、領主たちもそれぞれ土地の特徴を把握していないだろう。となると、足並みを揃えることに時間がかかるでしょうね。
「ただ、高くなれば、横領などの犯罪も多くなりますわ」
「だろうな」
下手に上げられないのはそういうこともある。それに収穫度などそういうことも計算に入れた上でやらなければならない。
「とはいえ、一例として公爵領の事例を挙げるのは問題ないかと。資料が必要とあれば、お父様に伝えれば用意してくださるでしょう」
「一度、その辺は父上や大臣たちと話し合ってみるよ」
「えぇ、それがよろしいでしょう」
なんか、仕事が増えた気がするけど、お父様やお兄様に任せておけば問題ないでしょ。それしても、雪が多いわ。
氷、厚くなり過ぎてないといいのだけど。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
細かいところの修正などは完成してからコツコツ直したいなと考えてます。とりあえず、終わるまで頑張ります!!







