表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/117

81

「おでば、おでば、ごんだごどにぃいい!!」


 響く叫び。振り上げられる刃物。ロランスが私を庇うように前に出る。


「きゃあああああ」

「早く、早く騎士を呼んでこい」


 騒然となる人たち。あるものは叫び、逃げ惑い。あるものは指示を出し、騎士を呼びに行かせる冷静さを持っていた。私はどちらかしら。ただただ、ロランスに庇われながら目の前の男を見ていた。

 ボロボロの服はよくよく見れば元はいいもののように思える。けれど、痩せ切ってしまった男の体には到底あっているようには思えない。さらに言えば、どこかで見たこともあるような気もするけど、覚えがない。


「おばえざえぇええええ!!!」


 興奮してるのか涎を撒き散らし、襲いかかってきた男。びくりと驚いてしまったけれど、目を背けず、見つめる。私は動く必要はない。むしろ、不用意に動いてしまえば、護衛たちの対処の邪魔になる。だから、ただただ動かなかった。覚悟があったわけでもないし、確信があったわけでもない。けれど、信用も信頼もしていた。


「させるか!」


 男の腕を掴み、そのまま男の力を使って地面に引き倒す。男からはうぐっと苦しげな声が上がったけれど、ロランスは気にせず刃物を取り上げ、男の腕を背面に捕える。背後にいた護衛たちも集まり、ロランスと交代する。そうしていると騎士たちが集まってきた。

 そして、最初へと戻る。


「ロランス、無事か!?」

「僕の心配より僕の主人の心配をしないか!!!」

「いっでぇ!!!」


 駆けつけた若い騎士がいち早く目についたのが私の護衛であるロランスだったようで彼女に近づくも蹴り飛ばされた。彼の同僚たちはあらまあと苦笑い。私と目が合うとぺこりと会釈をされた。


「申し訳ない、お嬢さん。ここまでのお話を伺っても」

「えぇ、勿論ですわ」


 ロランスと若い騎士の戯れを横に壮年の騎士に尋ねられ、私は当然と頷いた。そして、屯所へと向かい、委細を話す。襲撃犯である男も同時に屯所へと連れてこられ、地下の牢へと入れられたらしい。まぁ、現行犯みたいなものだものね。


「一つ言わせていただきたい」

「えぇ」

「何故、危険があるとわかっていたのに髪色を隠さなかった! 下手をすれば、貴女が重傷を負う可能性すらあっただろう!!」

「えぇ、そうですわね」

「そうと貴女は頷かれるが、わかっていらっしゃらない!!」


 壮年の騎士の怒声に周りにいる騎士たちも驚いている。まぁ、年若い女性に吠えているのだから、驚くのも無理はないわね。


「ここ数日被害も起きてなかったし、犯人も赤髪の娘が見当たらなくてヤキモキしてると思ったの。そこに(わたくし)が出ていけば、間違いなく(わたくし)を狙うと思ったのよ。それに我が家の護衛たちは優秀だったでしょう」

「それは結果論にすぎない!」

「けれど、一般市民で武器も盾も持ってない方が標的になるよりも何倍もよろしいかと」


 もし、それだとしたら、目も当てられない惨状になっていた可能性だってある。


「それにエルキュール様もわかっていたから、貴方をここに派遣したのでしょ、バルテレミー卿」


 クスクスと笑いながら告げれば、周りがざわめいた。まぁ、気づかなくても当然なのだけど。エルキュール様に頼まれ我が商会で作った姿替え(スキン)とボイスチェンジャーを利用してるんだもの。はぁと溜息を吐いたバルテレミー卿が腕輪を弄ると目の前にいた壮年の騎士はいなくなり、躑躅色の髪にスピネルのような目の大きい息子が複数いるとは思えないほど若々しい騎士がそこにいた。刈り上げられたツーブロックの髪から滴る汗が眩しいと年若い令嬢たちの話題に未だ上がるほどの人。後ろにいる彼にそっくりな若い騎士ははわわわわと目と口を大きく開けて驚いている。


「いつから、気づかれていた」

「声が直ってないわ」

「……別に声ごとき。いや、慣れんな」


 自身の姿に戻ったということもあって、違和感を感じたのだろうバルテレミー卿は首元を弄り、あ、あ、と声を出し、己の声を確かめる。


「気づくというか、エルキュール様のことだから、イニャス様か貴方を放り込んでくるんじゃないかと思っただけよ?」


 ここ最近、過保護が加速してるし、そのぐらいするだろうと思った。それにわざわざ姿替え(スキン)を使わせなければならないということは広く姿を知られているということ。そう考えれば自ずと答えはわかるというものだ。


「まぁ、エルキュール様からしたら、実用のための実験という意味もあったのでしょうけど」


 こういう実験は口の硬い人間に任せるのがいい。また今いるのは騎士たちと我が公爵家の人間。つまり、ここから姿替え(スキン)の話など漏れれば間違いなくこの中から出たということをさす。団長であるバルテレミー卿であれば、ここにいる騎士は既に把握済みでしょう。


「全く殿下にしろ、貴女にしろ、恐れ入る」

「あら、貴方に叱られるほどなのだからまだまだ小娘よ」

ここまで読んでいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ローズモンドやエルキュール、イニャスのイメージ画を以下においてあります。エルキュールとイニャスはサイズの関係でミニキャラでお送りします。等身はTwitterもといXにございますので興味がある方は覗いてやってください。
















html>
ローズモンド・ジラルディエール
ココナラで四月とを様に書いていただきました。




html>
エルキュール・ヴェルディエ
html>
イニャス・ギルメット
ココナラでアトリモコ様に描いていただきました。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ