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「ロランス、無事か!?」
「僕の心配より僕の主人の心配をしないか!!!」
「いっでぇ!!!」
駆けつけた若い騎士は私の護衛に蹴り飛ばされた。もしかしたら、襲撃犯よりもダメージを負っているかもしれないわね。
「申し訳ない、お嬢さん。ここまでのお話を伺っても」
「えぇ、勿論ですわ」
ロランスと若い騎士の戯れを横に壮年の騎士に尋ねられ、私は当然と頷いた。
エルキュール様から襲撃事件の話を聞いた数日は情勢を見るため、できるだけ出掛けないようにしていた。出かけるようになる時は髪の色を変化させてから出かけるように徹底。可能な限りのことをしていたと思う。けれど、問題が解決した犯人が捕まっただのという話は一向に聞こえてこなかったわけだ。そして、街に出ても赤い髪の人を見かけない。男性であろうと女性であろうと髪の色を変えたり、見えないように隠したりしていた。まぁ、赤い髪の娘という言葉が出ていたとしてもいつ対象が変わるかわからない不安があったからだろう。当然と言えば当然ね。
私にも我慢の限界というものはある。要は面倒になったと言い換えてもいい。一応、エルキュール様には連絡をしておいた。
赤い髪を隠さず出かけると。出かける日付も伝えておいたので、それなりの対応をしようと思えばできるはずよ。
「お嬢様、本当に隠さなくてもよろしいので」
「えぇ、構わないわ。だって、私、この髪色好きだもの」
「それは私めもそうでございますが」
「エルキュール様にも伝えてるわ。だから、貴女が心配することはないのよ」
マルチドたちは心配してくれたけど、エルキュール様にも頼まれてた通り、複数人の護衛も連れて行く。危険があったとしてもこれで解決になれば、それは御の字。まぁ、でも、正直囮をやるつもりはないのだけど。
「ローズ様、よろしくお願いいたします」
屋敷を出れば、出迎えてくれたのはロランス。いつもの制服とは違い騎士服の彼女はこれはこれでよく似合っていた。あれね、男装の麗人に萌えるのもわかるわ。ちなみにロランスだが、いつの間にか私の信仰者になっていた。全く心当たりがないのだけど。エルキュール様に洗脳でもされたかしら。
「今日もよろしくね、ロランス」
「はい、勿論です。僕の命に変えてでも」
「そこまではしなくていいわ。貴女の命も大事だもの」
怪我をしてでも命があればいいわと笑えば、それはなりませんといつものやりとり。年嵩のいった護衛たちはどちらの意見もわかるなと苦笑いしながら頷いていた。
それから、ロランスたちを伴い、商会を訪れて様子を見たり、孤児院を訪問したりなど平和だった。
「あとはどちらに向かわれますか?」
「そうね、この間クラスで話してた菓子店とかいいかしら」
「はい、問題ありません。そのように」
ロランスは後ろ手で後方にいる護衛に合図を送る。そして、私たちは菓子店へと向かった。
「パイなども美味しいらしいですね」
「そうらしいわね。ちょっと色々と購入して食べ比べしてみようかしら」
食べ比べといっても、切り分けてマルチドたちと一緒に食べることなんだけど。一人で食べてたら、当然太ってしまうもの。そんな会話をロランスと交わしながら、歩いていた。
「みづげだぞぉおおお!!!!」
その声は突然、響いた。振り返った先にはボロボロの服を着た痩せ切った男。叫ぶだけで息切れしているのか、ぜえはあと息を体全体で行っている。ふらりふらりと歩み寄ってくる男の手には刃物が握られていた。
「お前ざえ、お前ざえいなげればぁあああ!!!」
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