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「君はヒロインかもしれない」
エルキュール様とのお茶会、唐突に言われた言葉に私は首を傾げる。この方は何をおっしゃってるのかしら。
私がヒロイン? とんでもない、ヒロインの邪魔をする悪役令嬢よ?
「そうじゃなきゃ、説明がつかないだろ」
ほら、と見せられたのは簡略化された攻略対象者との出会い。まぁ、確かにライベルン様はそんな感じね。でも、他はそうではないでしょう?
「ノサップは君のところの商人だが、王都で入学した時久々に会ったのでは」
「確かにそうですわね。隣国に修行しに行っておりましたし」
「モール先生は担任だが、君のいうイベントとと考えたらどうだろう」
「確かにゲーム上の攻略対象の教員とは似た感じのイベントですわね」
「極め付けはあいつだ。迷った時に出会ったんだろ」
「まぁ、そう、ですわね。いや、でも、なんで私がヒロインの立場に??」
「それがわかったら苦労しないけどな。とりあえず、君はそういう立場の人間に気をつけたほうがいいかもしれない」
「でも、彼らは婚約者も奥様もいらっしゃいますし、大事になさってますわよ?」
「あいつにはいない」
苦々しく絞り出された言葉はカントルーブ様には婚約者がいないというもの。まさか、あれだけの貴公子にと思えば、イニャスが大事な人のために開けているんだと断っていると教えてくれる。その大事な人というのが私? いえ、あの叙任式で見かけたのが初めてよ?
「それから、学園の依頼は受けておいてくれ」
「あぁ、問題集作成の件ですわね」
「そうだ、君のところの問題集を学園公認とするためだ」
「疑惑避けのためですか」
「ああ」
私の商会のアレが公になれば、学園と忖度していたなどと言われることは必至ね。そうなると商会の信頼が失われることになる。逆に学園の公認であれば、きちんと申請を通しているという証になる。つまり、失われる信頼はないということだ。最初からそうしておけばよかったかしら。いや、でも、初めは実績など皆無だからむしろ向こうが了承しなかったわね。
「作成後の問題集はまず学園へと送ってほしい。そこで魔法をかけ、君たちのところに戻す。それを販売するように」
「魔法というのは?」
「模倣不可の魔法だ。恐らく、売れるとわかれば、続々と手を出す商人たちが現れるだろう。中には購入して、それを模倣なんてことも考えられる」
我が商会は前世の万引き防止を模倣して、万引きできない工作を商品一つ一つに行っている。けれど、やはり転売というのは食い止めることは今のところできてない。考えれば考えるほどその可能性もあるわね。模倣も然り。
ちなみに模倣不可の魔法とはどんなものかと尋ねたら、問題が歪むのだそうだ。一見すれば正しく書いてあるように思うが、実際に解いてみると解けなかったり、チグハグになっていたりするみたい。そうなると問題集の体をなさない。購入店に苦情が行くことでしょう。ただし、我が商会の名を出されたとしても学園を盾にできる。学園に作られたものが一度納品されるからだ。それに学園では一度先生方がその問題を解くことになるらしい。
「もしかして、エルキュール様が学園に呼びかけてくださいましたの?」
「だって、ローズは商会が大事だろう」
「えぇ、まぁ、我が子のようなものですわね」
「だったら、俺が協力しないわけにいかないだろう」
愛おしい人が楽しそうに過ごしせる場所があるのはいいことだというエルキュール様。ここの所こういう傾向が強くなっておりませんこと!? できる限り私の意に反することのないように行動されて、好意が爆上がりなんだけど。やめてほしい。いや、いずれ結婚することになるのだから、悪いわけではないでしょうけど。でしょうけど。
「エル、あれを伝えておいた方がいいんじゃないか?」
「あぁ、そうだった」
和やかに終わりそうだったお茶会。けれど、イニャス様の言葉にエルキュール様は身を正す。
「ここ最近、王都内で襲撃事件が起こってるらしいんだ」
「そんなことが」
「あぁ、襲撃対象は赤髪の娘」
「え?」
思わず声が出てしまうのはしかたないでしょ。だって、赤髪となれば、私も赤髪だし、娘というのがどの年齢をさすのかわからないけど、娘かと可否を問えば否とは言えないだろう。
「出かけないでくれと言ってもローズのことだから出かけてしまうだろうな」
そんな言葉にムッとなってしまうけど、否定ができない。間違いなく出かけるわ。
「だから、護衛は必ず複数名連れて行ってくれ」
「一人ではいけませんの?」
「一人は止めてくれ。最低二名は近くに置いてくれ。それから、遠くにも」
懇願に近い言葉に私は頷いた。まぁ、確かに一名では複数対応が重なったときに対応しきれないものね。身を守るためにも仕方ないわね。
「できるだけ早く解決させるから」
「あまり無理をしたり、させたりしないでくださいしませ」
「わかっているとも」
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