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比較的この数ヶ月平穏だったのではないかと思う。えぇ、思うわ。まぁ、ヒロインに魅了持ち疑惑が持ち上がったり、私がカントルーブ様にやたらと絡まれるということ以外。
クラスでも浮いてしまうかなと思ってたけど、そこはライベルン様のおかげで回避することができた。正確には『999本の薔薇』に食いついたライベルン様のおかげというべきか。
「このモノクルは隣国で手に入れたのですが、人に合わせて調整されていることもあってよく見えるのです」
「あぁ、それはそれはご購入ありがとうございます。メガネ、レンズ共に我が商会の目玉商品でありますから、そう言っていただけると嬉しいです」
いいものを購入させていただきましたというライベルン様にノサップはニコニコと対応する。会長も喜ばれるでしょうとこちらをちらりと見ていうものだから、ライベルン様もクラスの人たちも気づく。
「もしや、ジラルディエール嬢が会長なので?」
いや、でも、年下ですし、と混乱するライベルン様。思わず笑ってしまい、正直に明かした。私が会長であるということを。
「名前ばかりですわ」
「いやいや、嘘は勘弁してほしいですね。会長が辞めたら、こっちは大損失になるんですから」
まぁ、私に忠誠を誓ってくれている彼らがいるからそうなるかもしれないけど、まさかノサップの口からそんなことを言われるとは思わなかった。それから二、三言葉を交わしていると元々『999本の薔薇』に興味を持っていてくれたようで、ライベルン様以外の他のクラスメイト声をかけてくれるようになった。
「グーディメル様はーー」
「あぁ、弟も同学年にいるので名前で呼んでいただいて結構ですよ。殿下もクラスの皆様も」
その言葉もあって、私たちはライベルン様と呼ぶようになったし、私の方もクラスメイトになったよしみということで名前でどうぞと伝えた。
「……ムカつく」
「いや、お前が中々呼べなかったのはもだもだしてたせいだろ」
そんな会話がすぐ隣でされていたけれど、私は聞かなかったことにした。ずっと呼びたかったのかそうなのかと可愛いなとは思っていない。
ちなみにライベルン様には婚約者がいらっしゃり、その婚約者様は一つ下のクラスにいる。ある時、ライベルン様に会いに顔をひょっこり覗かせた際にライベルン様がクラスのみんなに紹介していた。もちろん、私もそんな彼女とも知り合いになり、言葉を交わすようになった。なお、ライベルン様はすごく彼女のことがお好きなよう、微笑ましい限り。そんな感じで私は浮くこともなく、平穏な学園生活を手に入れていた。中間や期末試験の前の勉強会など本当に学生という感じを味わえて楽しかったわ。
「なんなんだ、あの女は」
期末試験も終わり、冬休みはどう過ごそうかと考えていたところにお兄様に呼び出され、言われた言葉はこれ。
「モブだが見た目はいいしとかふざけてるのか、あれは」
どうやら、ヒロインに声をかけられたらしい。たまたま一学年下に用事があって行ったお兄様と何故か一学年上の教室にいたヒロインが出くわし、声をかけられたと。なぜ、上の学年に行ったのかは知らないけど、概ね攻略対象者のところに行ったのでしょうね。
「すぐに人に触れてこようとするし、喋り方が気持ち悪いし、なんなんだ、ほんと」
過剰なボディタッチに甘ったるい話し方らしい。間違いなく転生者ね。本来のヒロインであれば、そんなことをする必要がないもの。
「あぁ、それから、ローズほら」
お兄様が手渡してくれたのは匂い袋。その中には割れた石。これは護石と呼ばれる海の産物なのだが、粉々に近い状態になっている。
「魅了が使われた回数分、割れたのね」
お兄様のことを守ってくれてありがとうと礼を告げ、匂い袋の中身を入れ替える。ひとまず、新しい護石を入れておきましょ。
「見目がいい人間にちょいちょいちょっかいをかけているらしい」
「でしょうね。彼女の信奉者が出ているらしいですし」
目立った動きはないけれど、彼女を崇拝するような声が聞かれるようになっていた。えぇ、ほんと、新たな宗教でも建てないのかしらね。あまり気にしていなくて、呪いも見ようとしなかったので気づかなかったのだけど、見てしまえばかなり多くの被害者がいたのよ。あれには驚いたものだわ。
「まぁ、弱い魅了だったから、冬休みを終えたら、落ち着くでしょうね」
多分、あのタイプはかけ続けなければならない。彼女が冬休みに実家に戻るのであれば、少しは被害者は減るだろう。まぁ、定期的に無効化はかけるようにしたほうがいいかもしれないけど。
ここまで、読んでいただきありがとうございます。
遅くなりました、すみません。
暑さでへばっておりました。いや、ほんとまだ七月なのに暑すぎて、干からびそう。
一応、学園の設定としては欧米の学校スケジュールをもとにしてます。九月ごろに入学の十月中間、十一月期末の冬休みを挟んでという感じで。







