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調査報告書に記載されていたのはヒロインと攻略対象者のクラス。そして、ヒロインの行動記録だった。はっきり言おう。攻略対象者のほとんどはEクラス。さらにヒロインもEクラス。なんで、どうしてと私が頭を抱えてしまいそうだわ。
「地頭はいいのだから、詰め込めばそれなりに上のクラスに上がれたはずよ?」
正直、私が上位クラスに入れたのはローズモンドの力だと思う。えぇ、前世では外国語にまで手を出すことなんてできなかったもの。それなのにこちらに来てからはスポンジに水が染み込むように覚えていくことができた。まぁ、ゲーム上でも彼女は馬鹿ではなかった。上位クラスにいたわけだし。ただ、恋愛がエルキュール様に対する思いが彼女をポンコツにしたのは間違いないわ。であれば、あんな馬鹿な行動をするとは思えないもの。
「ゲーム上は彼女も上位クラスにいたと」
「えぇ、彼女だけでなく攻略対象者は漏れなくといったところでしょうか」
だからこそ、尽く下位クラスにいるのが解せない。
「主人公補正がかかると思ってるのかしら」
可能性はないわけではないけど、そこまでおバカであると考えたくない。
「主人公補正?」
「えぇ、彼女はヒロイン、つまり物語上の主人公。であるならばと世界が主人公であるための補正をかけることが転生系の物語ではよくありましたの。けれど、今のところ私に強制的なものも修正するような補正もかかってきてないので、彼女にも補正はないのだろうと思ってるのですが」
むしろ、彼女の場合、学園に入学するということ自体に補正が使われてしまったのではないかと思ってしまう。そもそも私にだって補正どころか抵抗力が追加されてる状態だし、恐らくそういう強制力的なものが少ないのだろうと思われる。いや、思いたいわ。
「自分中心に世界が回ってると思っているのであれば、そう思っても仕方ないかもしれないですけど」
「そう思ってるんじゃないか? 現に守衛からの報告で例の場所で彷徨いていたと書いてある。流石に最後は寮まで強制的に連れて行ったらしいが」
いや、それでもと思ってしまうのは少しはヒロインに夢を見たいからかもしれない。エルキュール様に唾をつけるとしても、なんだろうとしても、自分から奪うからにはそれなりの人であってほしいと思ってしまう。けれど、報告書を読む限りそう思えないのもまた事実で。
「一応、こちらでも注視するようには伝えておこう」
「そうですね、まだ大きく動いてませんし、様子見だけで構わないと思います。ただただ、バカでないことを祈りたい」
「無理だと思うけどな」
エルキュール様の言葉に溜息が零れてしまう。転生者とすれば、同郷にはなるだろうけど、そういう思いは捨てた方がいいかもしれないわ。
この話の他に攻略対象者を含め、イベントなどを洗い出し、注意しなければならない点を確認し、私は屋敷へと戻った。屋敷である理由は簡単で、私が寮住まいではないから。寮から通う者は大体は平民であったり、王都の屋敷を彼彼女だけのために維持できない中小貴族が多い。伯爵家や侯爵家、公爵家になれば、人の管理もでき、子供一人だけでも王都に移し生活させるだけの基盤を持っていたりする。もしくは我が家のようにする場合もある。
それにしても、なんとか平穏無事に学園生活を終わらせたいものね。
ここまで、読んでいただきありがとうございます。
ローズモンドの帰宅後の主従
「イニャス、あいつはローズを狙ってると思う?」
「まぁ、行動的に見てその可能性はあるだろうな」
「そう、なら先手を打つことができて喜ぶべきかな」
報告書の最後に記載されていたローズモンドの後をつけ、タイミングを見ていたようだと書かれるアベイル。その文字を指でなぞり、エルキュールは彼の行動理由がわからないと溜息を一つ零す。それにイニャスも肯定するように頷くのだった。
「ひとまずは気づかれるかもしれないが、影をつけておいてくれ」
「あぁ、わかった」







