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クスクスと耳障りのいい声が聞こえる。うん? いや、ちょっと待ちなさい私。今何してる?
「……で、あるからして、諸君にはーー」
意識がはっきりとすると聞こえてくる男の声。これは学園長の声ね。いや、まって、なんで学園長の声??
ハッと目を開ければ、そこは式典の最中。そして、私の頭は傾いてる。そっと、頭を起こして横を見れば、幸せそうなエルキュール様。
「申し訳ありません」
目を逸らしながら、そう呟く。まさかの失態に逃げたいわ。式典の最中に寝てしまうだけでなく、エルキュール様の肩に寄りかかってしまうなんて。
「謝る必要はないよ。嬉しかったし。まぁ、別の人間にそれをやってたらわからないけど」
スッとハイライトが消える。えぇ、そうでしょうともそうでしょうとも。それにしても学園長の話を聴き始めたあたりは覚えてるからあまり時間は経ってないのかしら。周りをそっと窺ってみると、いたる所でこっくりこっくりと舟が漕がれている。
「……だいぶ時間、経ってますわね、これ」
「一向に終わる気配がなくてさ、貴族だろうと耐えられなかったみたいだ」
「エルキュール様は耐えているではありませんか」
「そりゃあ、愛おしい人が頭を預けてくれるんだ、寝れるはずがないだろ」
「……私は何も聞いてません」
そう締めくくればくつくつと笑う。別に照れてるとか恥ずかしくなったとかそういうのではありませんから。そうしているうちに学園長の話は締め括られ、ようやく式典が先へと進んだ。
「それでは教室へ転移させていただきます」
その言葉にうん? と首を傾げてしまう。自らの足で向かうのではなく転移とは。
「まずはEから」
そう教員が宣言すると数人が消える。その中にハニーゴールドの髪があった気がする。いやいや、まさかね。それにハニーゴールドくらいの金髪だったら至る所にいるわけだし、まさかヒロインがそんなところにいるはずはないわ。
「次はD」
そう続けて呼ばれ、次々と生徒たちは転移されていく。Aまでくるともう残り少ない。
「それでは、Aの方」
Aクラスの人間が消えると残りは十五人程度。私にエルキュール様、キバチにアヴリール、イニャス様、ノサップに彼の婚約者と数名の子息子女。
十名以下であればAクラスに吸収されていたらしいけど、今年も豊作だとSクラスは継続された見たいね。
そして、残された私たちSクラスも教室へと転移される。
「ヒロインはいた?」
「どの金髪かわかりかねますわ」
「まぁ、顔見ないことにはわからないか」
「えぇ、そうですわね。ただ、SクラスやAクラスにはいないようでした」
「えっと、彼女、ゲーム上は優秀だったんだよな」
困惑するエルキュール様に私も頷くくらいしかできなかった。お世話になっているからとそれぐらいしかできないからと努力するのが私の知っているヒロインだった。まぁ、男性に媚び売ることにも努力する子でもあったわけだけど。
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