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お茶会から戻り、ベッドに寝転びながら左手を眺める。何度見てもそこには間違いなく銀の指輪が収まっている。何をどう見ようと何の変哲もない銀の指輪。かなり強い契約魔法の証明でもあるそれは契約完了後指から抜けなくなった。
「まぁ、抜けないのはいいのだけど」
汚れなどが気になるのであれば、洗浄魔法を使用すればいいだけのことであるし。
ただ、この契約が強くなった理由は単純。二人分の命をかけられているからに過ぎない。普通は契約魔法に命をかけることはしない。どちらかというと契約よりも誓約の方が命をかけることが多い。とはいえ、誓約は一方的なものだ。誰それにそう約束すると誓うもの。契約は互いにそれを誓うもの。
エルキュール様はだから、契約を選んだのだろうと思う。むしろ、誓約だけじゃ足りないと思ったのかしら。
「サラッと白紙化も含むっておっしゃってたわよね」
別に白紙になるくらいはいいと思うのよ。でも、それも含めたということはどういうことか。
「あれ? そういえば、どちらかが死んだ時は大体白紙に戻すというわね」
まさかと、頬がひきつる。もはや、契約というなの結婚指輪ではこれ。いや、まって、結婚したら婚約ではなくなるわね。そうなるとこれは外れるということ。結婚すればーー。
「まぁ、その辺もエルキュール様は把握していて何か準備でもしてそうね」
だって、死すらも分つことを許さないとばかりの契約だもの。安易に頷いてしまった私も悪いのだけど、それを誓われ嬉しく思ってしまうのも大概だわ。
「もう少ししたら学園が始まる。ゲームが始まる」
一応、うちの領からある程度入学させることになっているけれど、それが吉と出るか凶と出るかはわからない。すでに入学している子たちからの学園評価は普通。ただ、やはりというべきか貴族との確執はあるみたいね。とはいえ、うちの子たちはある程度の教育を受けているから他の子達とは当たり方が違うらしい。むしろ、どちらからも忌避されてるのよね。商売人の家系だとか特殊なものでなく、普通の孤児であったり、一般的な領民というだけだから、なんでとどこにそんな金がと言われることも多いらしい。本人たちは気にしていないというけれど、私が気にするのよ。なのにあの子たちったら、お礼を言うのだもの、何も言えなくなってしまう。
「その辺をなんとか解決できるようにしなくてはいけないわね。それから、しばらく離れることになるから開発途中のものをどうするかも今度話し合っておかないといけないわね」
少しずつ進めていたことだったけど、そろそろしっかりと詰めておかないといけないわ。まぁ、ナタンやフォルジュたちに任せておけば問題ないでしょうけど。色々と商会に関係してくる人も増えたし、少しでも私も把握しておかないと。
あれもこれもやらないとと考えていると自然と私は眠りに落ちた。だから、知らなかった。傾けられた耳があったなど。
「父上、やはり事後報告は良くないと思います」
「まさか、ローズの命までかけるとは、あのクソ王子め」
「ローズのことを好いてるのは知ってましたが、あまりにも酷いですよね」
「一応、俺の主人なので悪口は控えてもらってもいいですかね。悲しくなってしまうんで」
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