65 side:Heracle
父上から指輪の説明を受けた。異常魔法や状態異常を引き起こす物質について石ーー水晶は反応するらしい。そのため、色が変化したら元に戻るまで距離を取るか、原因を排除することが必要だという。また、指輪は生涯外れることはない。指を切り落とせばなどと考えても強化がかかるらしく指は切り落とせない。むしろ、切り落とせない分、激痛が走ることになる。これは父上の経験則からくるもの。まぁ、腕をあれだけ切りつけられているのだから、そうなるだろう。それにいつも父上が袖の長い服を着る理由もわかった。ちなみにその時に母上に出会ったのだとか。父上の表情におや? と思ったけど、藪を突くようなものだと思い、口を噤んだ。
「説明は以上だ。質問などはあるか?」
「生活に問題がなさそうなので特にはありません。あ、ですが」
「なんだ」
「ついでに一つ頼み事しても良いでしょうか」
「ほう、頼み事とな」
契約魔法ならばと思っていたのだけど、これならばきっと彼女は安心することができるはずだ。
「契約魔法の使用許可を」
「何に使用する」
「俺とジラルディエール嬢の婚約を解消しないために」
彼女が婚約を解消しようとしているのは父上もご存知のはず。そう続け、父上を見れば渋い顔。どうしようか悩んでいる時の顔だと母上が言っていた気がする。
「そして、契約の証は書面ではなく、指輪にしていただきたい」
「その意図はなんだ」
「とある国では婚約すると男女ともに指輪をつける風習があるそうです。それにあやかりたく」
「なるほどな。しかし、契約魔法ともなれば、ペナルティの設定もあるが」
「はい、そこは産んでいただいた父上や母上には悪いとは思っていますが」
「もう決めてることなのだな」
「はい、それはすでに」
俺の言葉の意味に気づいてくれたのか父上は大きく息を吐くとよかろうと言葉を口にした。
「しかし、婚姻を結べばその契約は破棄にならんか?」
「その際は契約を重ねて離婚できぬようにするつもりです」
もう、俺は彼女を手放すことなんて考えてない。考えられない。だから、離婚もしない。たとえ、彼女のいう強制力が働いたとしても、その強制力は婚約解消を破棄を叶えることはできないだろう。
それから、父上にはその契約魔法の媒体とする指輪の製作を頼んだ。露天の店主曰く婚約指輪はダイヤなどをあしらったものが多いらしいのだが、俺たちのはシンプルに銀の指輪にしてもらうつもりだ。宝石のついた指輪など後からいくらでも渡せるだろうし。
あとは用意してもらった指輪と共にロジェと契約を交わすだけだ。うんと言ってもらえれば、それでもう彼女は俺のそばから離れることはできない。
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