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珍しい品が置いてあると言われる商会は当たり屋だった。いや、当たり屋よりもさらに悪質だったわ。売りであるはずの珍しいものが取り難い場所に設置していた。もう、その時点でおや? だったし、何よりも店員らしき人物が多いのなんの。エルキュール様がこれがさと手に取りかけたのを止めたほど。
「エレ、待って欲しいの」
「いや、でも、取らないとわからないだろ?」
「それなら、店員に取ってもらうといいわ。これだけ店員が多いもの」
恐らく、手に取ったときには壊れているもしくは手に取った瞬間壊れる仕組みになっているのだとすれば、店員が多いのも頷ける。すぐさま、弁償か購入を要求するために。あと、もう一点気になったのが、客であろう少女の姿。私たちが入店する前からいる彼女はキョロキョロと何かを探しているようで探してない。
「エレ、別のところに行きましょ。ココはダメよ」
「どういうことーー」
「きゃっ」
「ちょっと、お客さん、困りますよ!!」
説明しようとしたら騒動が起こった。しかも、怪しい少女と店員という組み合わせ。その近くには人の良さそうな男性。しかも、押しに弱そうな印象を受ける。あぁ、そういうことなのね。私は納得した。
エルキュール様はわからないらしく、眉を顰めている。えぇ、助けようかどうかと考えてるのかもしれないわね。これは助けないが正解ね。恐らくあの少女はこの商会の人間だわ。
オロオロとでも、だって、という少女に店員が弁償しろや買い取れなどと恫喝している。それに人の良さそうな男性が声をかけてしまう。その瞬間、少女と店員の標的が男性に変わる。お願いします、助けてくださいと縋る少女にだったらアンタが買い取るか弁償してくれよと言い出す店員。え、いやと男性は困惑している。あれは金を払うまで解放されないわね。金を払えば解放されると思うからさっさと払って店を出たほうが賢明なのだけど。
「エレ」
「助けたほうがいいんじゃないか?」
「そうした方がいいのでしょうけど、そうなると次の標的になるのは私たちよ?」
あの男性の身なりからして平民であるのは間違いないだろうし、平民であれば簡単に解放されるでしょう。ただ、私たちは言葉遣いなどから変装しているというのがバレる可能性がある。口調仕草などからも商人なら推察してもおかしくはない。となると、標的になった後が面倒。
私はエルキュール様の手を引いて、外へと出る。その際に舌打ちが聞こえた気がしたけど、振り向くことはしなかった。えぇ、気づかなかったことにした方がいいのよ。
「悪質だな」
どういうことかと説明したらエルキュール様はそう言って顔を覆った。まぁ、そういう感想になるわよね。
「前世でも当たり屋とかいたし、そういうところがあるという話なんかもあったから私はなんとなくわかったのよ」
きっとそれがなかったら、私たちはいいカモになっていたでしょうね。当たり屋のことなどを説明しながら道を歩く。エルキュール様は店に入るのを少しばかり躊躇うようになってしまった。えぇ、二連続でそんなのが当たればそうなるわね。一軒目は私が口を挟んでしまったのだけど。
広場まで来るとベンチに座って休憩をする。串焼きやクレープやらとフードカートもあるからちょうどいいわ。座って休憩してたら、色々思い出したのかエルキュール様が落ち込んでいた。まぁ、広場に来るまでにスリに合いそうになったりなんかもしたからね。
「うまくいかない」
「そういうものよ。むしろ、そういうことの方が多いわよ」
クレープをいただきながら、そんなことを話す。聞けば、色々と騎士の皆さんとかにも聞きながら練りに練ったお出かけコースだったらしい。全滅だったけど。
「別に無理に店を選んで入る必要はないと思うのよ。確かにいろんな店に入るのも楽しいでしょうけど、ここはこうであーでと喋りながら歩くだけでも楽しいと思うの。それでたまにどこかでこうやって食べ物なんかを買って、座ってゆっくり人が行き交う景色を眺める、それもありだわ」
むしろ、貴族同士なら、その方が新鮮かもしれないわね。それに私も王都はあまり出歩いてなかったから、歩くだけでも新鮮だったし。
気分が晴れたのか今度は中心街を少し離れ、露天街を歩く。行商人が一時的に広げるそのお店は例の店で見るよりも珍しいものが並んでいて、思わずどこにあるものなのか色々と情報を引き出していた。えぇ、本当に。
「サイズ違いの指輪なんて、買う人がいるのか?」
「あぁ、こちらはペアでつけるもんなんで」
土地が違えば文化も違う。当然のことよね。この世界というよりこの国には婚約という概念はあっても婚約指輪というものはない。婚約は幼い頃からすることが多いから、サイズが変わる体に何かつけるという考えがないのよね。代わりに書面が残されるのよね。
「お揃い、指輪」
なんか、嫌な予感がするのは私だけかしら。行商人にキラキラとした目で指輪のことを根掘り葉掘り聞いてるのだけど。でも、少しは気分が戻ったようでよかったわ。そのあとはぶつぶつとエルキュール様は何かを考えている様子だったけど概ね平和だった。途中、集めてる蜜蜂のシリーズを見つけてしまったのでエルキュール様に見つからないように購入するのはちょっとスリルがあって楽しかったのは内緒よ。
それにしても思いっきり楽しんでしまった。そんなつもりはなかったのに。でも、まあ、思い出づくりにはよかったわね。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
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