058 side:pères
妻子がギーに追い出された後もヴィルぅ、よせ気持ち悪いなどとやりとりを一頻りやるとヴィルジールと国王オラースは何事もなかったかのように席に座り直す。そんな二人にギーは特に驚く様子もなく、紅茶を準備する。
「それでギーよ、模造ギルメットからは情報は引き出せそうか?」
「いいえ、恐らくは無理でしょうな。裏にいた人物はアレらほど愚かではなかったらしく、家を捜索してみましたが一切の痕跡を残しておりませんでした」
「なるほど、奴らがイニャスを切り捨てたと同様に黒幕には最初から切り捨てられていたと」
「恐らくそうでしょう。使える程度に使う、ようは使い捨てだったのでしょうな。いやー、上手い使い方です」
ほっほっほと笑うギーにその伯爵家の本来の当主はお前だろうと言いたくなるヴィルジールとオラース。ギーはいつからか不明であるが未だに王家の影として暗躍している。そもそもそういう契約を王となるものと交わすらしいのだが、スキルの効果もあってか実際の年齢が全くわからない。現に国王であるはずのオラースもそれを把握していない。
「それで、ギルメット家はどうする?」
「何、そこはまた適当に作りましょう。ひとまずは今捕らえている者たちはギルメット家を騙ったものにでもしておけばよろしい」
そもそも模造ギルメット家はそういう家であるから、問題はないと朗らかに笑うギー。そして、後は王家や公爵家が上手いように貴族と民衆を操作すればいいと簡単に言ってのける。それがめんどくさいから聞いたのにと口を尖らせるのはオラースだ。ヴィルジールにおいては幼い頃から彼の手腕を見ているため、そうなるだろうなと簡単に予想はついた。
「それで、イニャスを跡取りにするのか? あれは表の人間だろう」
「えぇ、表も裏も関係ございませんし、跡取りにしますとも。まぁ、先に死んでしまったらしょうがないですが」
理想は別の人物だったのですが、彼らはまあお嬢様のものなのでと笑ってみせるが、実はアプローチはしていたことをヴィルジールは知っている。けれど、理想の人物とされた彼らはローズモンド以外に仕える気はないとしてはっきりとギーの提案をフッていた。いい候補者だったのにと水で管を巻いたギーに愚痴られたのは記憶に新しい。
「まぁ、伯爵自身がそれでいいというのであれば、それで良いが」
「えぇ、適当に放っておいてもらえればよろしいかと。それよりも本題はそちらではございませんでしょう?」
「本題? 今回の叙任式の件だけではなかったのか?」
目前の問題として目が向くのは当然のこと。けれど、オラース曰くただの世間話程度に過ぎないらしい。
「お前から見てうちのアレ、どう思う?」
「殿下のことか。そうだな、ローズを失ったら狂いそうだな」
「やはり、そう思うか」
「なんだ、なにがあった?」
ヴィルジールから見てそうならそうなるだろうなとぐぬぬとオラースは唸る。それに顔を顰め、ヴィルジールが問えば、内密の内密でなと声量を落とし、言葉にする。
「実はな王家の秘宝“過去戻りの雫石”が使用されてる形跡がある」
「それは……殿下が使用したと?」
「いや、そこまではわからん。しかし、何度か過去戻りが行われているのは間違いない」
ギーと呼べば、こちらをと質素な箱が二人の前に置かれる。オラースが蓋を開ければそこには黒く濁った雫型の宝石が鎮座していた。よくよく目を凝らしてみれば、その宝石には所々小さなヒビが入っているのがわかる。
その宝石はかつてオラースが王太子になった際にヴィルジールに自慢げに見せてきた王家の秘宝にそっくりだった。いや、オラースの言葉を考えれば、まさに王家の秘宝であり、オラースが勝手に持ち出したことで先代から二人揃って拳骨を頂戴することになったそれであることは間違いないだろう。ヴィルジールはその時完全に巻き込まれであったし、理不尽なと思ったことでよくその秘宝のことは覚えている。それにしても、当時の面影がなさすぎた。
ここまで、読んでいただきありがとうございます。
昨日は更新できなくて申し訳なかったです。なので、今日はこれともう一話分、更新する予定です。続きもパパたちのお話であります。よろしくお願いいたします。







