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「それでは、諸々の下準備をして参ります」
そう言い残してギーはシュタッといなくなった。諸々の下準備って何かしら? もしかして、ギルメット様の身分に関することなのかしら。まぁ、ギーにお願いしておいたら大丈夫よね。私は私のことをしましょう。
それからは忙しかった。私が仕事をしていると知るやいなやお母様が仕立て屋を呼んできたからだ。まぁ、数ヶ月先とはいえ、叙任式があるものね。わかってるわ。作らないといけないことぐらい知ってるもの。
「お嬢様は背がお高くいらっしゃる。そうすると一般的なベル型よりもA型の方がよろしいかもしれませんね」
「あら、このデザインかわいいんじゃない?」
「お母様、こちらは私よりもアヴリールのように童顔で可愛らしい子に似合いますわ」
「そうかしら、いいと思うのに」
私が頑なだったこともあって、お母様は残念そうにしながらも好みではないのなら仕方ないわねと諦めてくださった。えぇ、あまりにも可愛らしすぎるもの諦めてくださって助かるわ。今度、キバチの報酬にまたアヴリールにドレスを作ってあげましょう。きっと、彼女ならは喜んでくれるわね。
「出来るだけ、派手じゃないのがいいわ」
「それでしたら」
いくつかの原案をテーブルの上に並べていく仕立て屋。どんなパターンにでも対応できるように用意してるなんて、さすがね。そこから私好みのデザインを選び、色や追加の装飾、当日身につける予定の宝飾品などを決めていく。二年ほど前まではとにかく派手にだったものね。こんな細かいところまで決めなかったわ。
「それではこのような形で」
「えぇ、お願いするわ」
それから、採寸を行い、私のサイズを記録していく。ここから、体重が増えすぎてもダメだし、減りすぎてもダメ。現在のラインを維持しなければならない。お貴族様ってほんと面倒よね。仕方ないわね。体のラインに合わせて作るんだもの、そうなるわ。そうなると多少体重が変わったくらいじゃ問題のない紳士服ってズルいわよね。
後日、お兄様にそんなことを言ったら。成長期舐めんなと怒られたわ。まぁ、成長期だったら、そうね。いくら作ってもすぐに作り変え、一度も袖を通さずなんてありうるものね。そういえば、エルキュール様も作った端から成長して、着れなくなったとおっしゃってたわね。
ギルメット様の日常の行動パターンなど資料が出来上がり、王宮からアヴリールの同行が許された。言葉を喋れないというのはネックだろうけれど、許可してくれたのは私が気を置いてるからでしょうね。
「さて、作戦会議よ」
「おい、なんでオレまで」
「言っておくけど、貴方が一番重要な役割なのよ」
「ウソ、だろ」
目を見開いて驚くキバチを円卓の席に座らせれば、その隣にアヴリール、ギーにお兄様と腰を落とす。そして、私も席に着けば、作戦会議が始まる。
「ギルメット卿の行動パターンから見て殿下の就寝を見届けたあとがいいだろうな」
「えぇ、それはそうね。少しでも解呪されたのがバレるのが遅れる方がいいわ」
「日頃、この回廊を使われるようですし、ちょうどよろしいかと。この辺りは灯りが少ないため、人通りがありません」
「もしかして、オレがそこまで連れてくのかよ」
「「当然」」
「めんどくせー」
ギルメット様の行動パターンを確認しながら、タイミングをどこにするか話し合う。けれど、一番のベストタイミングは皆同じだったよう。そこから、ギーがこの辺をと王宮の見取り図を取り出して、指し示す。えぇ、なぜ王宮の見取り図を持ってるかなんて聞かないわ。聞いたらダメよ。お兄様も聞きたくなったのでしょうね、でもすぐに口に手を当てていた。
ちなみにキバチはここまで仕事したのにさらに仕事があるのかよと項垂れていた。
「あら、ひとまずこれが終われば休暇を与えるわ。それに特別給付とアヴリールに新しいドレスを与える予定よ」
「……くっそー、わかったよ。やりゃいいんだろ、やりゃ」
「キバチ、わかっていますね」
「わかってる、わかってるよ。お嬢の後ろに立つ時は執事モードになればいいんだろ」
「わかってるのなら、よろしい」
そういえば、キバチってば、情報収集の仕事以外の時はギーについて執事として仕事してるんだったわね。普段、そんな仕事をしてるところを見たことなかったから忘れてたわ。できるのかしらと胡乱な目で見たら、できるからな、見てろよと実演してくれた。さすが、ギーに教育を受けてるだけあって完璧だったわ。どうだと胸を逸らすキバチは可愛いがすぎた。
「むーむー」
「あー、もう、頭を撫でんな」
椅子の上に立って、よくできましたとアヴリールがキバチの頭を撫でる。嫌がっているように言ってるけど、その顔は緩んでる。ほんと、セットが一番可愛いわね。
「じゃあ、まとめるわね」
私の行動としては就寝したと嘘の報告をして、少ししてからキバチのスキルで回廊まで抜け出す。そして、ギルメット様の呪いを無効化、速攻で部屋に戻る。キバチはその後も少々動いてもらう。ギーを迎えに行ってもらったりだとか。それはギーが付け加えていた。どうやら、色々と下準備が整ったらしく、楽しみですと本人は言っていた。
「たっぷり、休みもらう」
「えぇ、そうね、それで申請しておくわね」
聞いてるだけで疲れたのだろうキバチはそんなことをいう。それにお兄様も私も苦笑いを零した。
そうして、叙任式の前日、私は影にキバチを潜ませたアヴリールを連れて登城する。
チャンスは一度きり、失敗は許されないわ。
ここまで、読んでいただきありがとうございます。
明日はイニャス視点になります。明後日はローズに戻って、またイニャス視点になるかと。
ようやく叙任式だ。学園入学まで後少し。後少し、なのだろうか。。。







