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困ったわ。困ったわね。殿下が、んん、エルキュール様が心変わりする様子が年が変わってもない。
えぇえぇ、茶会で殿下と呼んだらにこやかに微笑まれて指先に口付けされたわ。その時、悲鳴を上げず耐えた私を褒めてほしいものね。それ以来、思考の中でも殿下とは呼ばず、エルキュール様と呼ぶように心がけている。思考で殿下と呼んでいて、ぽろっと声に零してしまったらまた口付けられてしまうもの。断固回避よ。
正直、以前までのエルキュール様であれば、まだ幼さも残っていたことからお可愛らしいことと終いにできたと言うのに今エルキュール様は絶賛成長期真っ只中。茶会の際にぐんと伸びていらっしゃって驚いたわ。本人はすごく痛かったから小さいままでもいいかなと思ったとおっしゃってたけど。まだまだ成長するでしょうし、よりゲームのエルキュール様に近づくと同時に男らしくなられることだろうから私の目に心臓に毒だわ。無効化できない毒なんて最悪ね。
「……だめね、これはもう使い物にならないわ」
そんな茶会の一方でここ最近、商会では呪われた品を受け入れていた。これは勿論、私の熟知を上げるためのもの。いくつか呪われた品の呪いを無効化したのだけど、呪われていた期間が長いものに関しては無効化した途端、崩れ落ちるものもあった。今回、無効化したものもそれ。私の目の前に砂の山ができている。
ピコン。けれど、熟知は上がったよう。
『熟知アップ:呪いの詳細が確認できるようになりました』
グッと拳を振り上げた。待ってた、これを待ってたのよ。呪いを可視できるとはいえど、それは呪いにかかっているか否かが見えるだけ。詳しい状態などはわからなかった。けれど、今回の熟知アップでそれが確認できるようになる。試しに先程のとは別の呪われている品を確認する。
『厄災の木箱:開けた者に小さな不幸を振り撒く』
小さな不幸って何かしら。すると注釈が入り、箪笥の角で小指を打つ、何もないところで転ぶ、会計の時持ち合わせが少し足りないなどと文字が出る。えぇ、地味に嫌だわ。一体誰がこんな呪いを作ったのかしら。意味がわからないわ。あっても無駄だしと箱に触れ、スキルの使用選択で箱を選択する。すると、パッと光って呪いは無効化された。このスキルの使用選択のおかげで無差別に行われてしまう無毒化や呪いの無効化は限定することができる。まぁ、これに気づいたのは結構最近だけど。
ちなみにこの呪いの詳細を確認できるようになるまでに海の民の忠誠を獲得したり、その彼女たちのおかげで海路が開けたりなどあったわけだけども、そこは割愛するわ。ただ、そう、フラグは回収してしまっただけよ。
『半隷属:主人と設定された者からの命令に逆らうことはできない。完全な隷属ではないため、比較的命令されていない場合自由にできる』
『死の拡散:自決した場合、周囲(広範囲)をも巻き込む』
まさかの二重の呪い。えげつないわ。ただ、どちらの呪いも中途半端だけど。
「解呪しようとしてないということはそういう命令が下されているというわけでしょうね」
それに今私から近づくのは怪しいわね。下手すれば私に容疑がかかってしまう。かけた人間はそれも見越してたのかしら。でも、普通は選考の時点で呪いにかかってれば弾かれるのだけど思うんだけど。まさか、選考に通ってからかけた? つまり、呪いをかけたのは近しい人間ということ?
全く面倒くさいわ。けど、要警戒人物ってメモしておく必要はあるわね。
貴方は一体何を思い、エルキュール様の傍にいるの? イニャス・ギルメット様。
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