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「ローズモンド、起きてるだろうか」
「起きてません!!」
こんこんとノックされ、声かけられる。思わずそう返してしまえば、ドアの向こうでくつくつと笑う声。
「君が好きかはどうか分からないけれど、菓子を用意してもらった。好きな時に食べてくれ」
ドアの向こうでそう殿下は告げる。
「俺は君ほどものを知らなかったらしい。作ってほしい菓子の名を知らなかったからな。あれこれと言っていたら、すごく顔を顰められたよ。まぁ、後から出てきた料理長が拙い説明であったにも関わらず、導き出してくれて助かった」
君はすごいなと言う。待って、私がコックたちに茶会で出すお菓子の注文をつけてたの知られてる!? いや、そもそも、殿下自ら厨房に行くなんて。
「君の好きな菓子がわからなかったから、結局俺が好きなものになってしまったんだが、そこは許してほしい。それから、今日はもうこのままここで過ごしてもらえたらと思う。公爵家には母上が一報を入れてくれているから安心してくれ」
えっと、それから何があったかなと外で声が聞こえる。そっとドアに耳を当ててみる。
「イニャス」
「夕食の件を言ってないだろ。てか、もうメモに残せよ」
「いや、でも、彼女、起きてるし」
「起きてないって言ってたんだから、起きてないことにしてやったらいいんだよ」
「むぅ」
「あんまりグイグイ行きすぎると嫌われるぞ。妃殿下にも注意されたろ」
「嫌われるのは嫌だ」
「じゃあ、メモな」
「ん」
ギルメット様との会話。殿下、可愛すぎない? カキカキと何かに記す音が聞こえたのち、再度ノック。ゆっくりしていってくれと言葉を残し、足音が去っていく。
そっと、ドアを開けて廊下を覗けば、廊下の向こうで銀色と金色が戯れあっていた。何、あれ、尊い。いえ、そうじゃないわ。頭をふり部屋の前を確認するとドアのそばにワゴンが置かれていた。殿下が言っていたのはこれかしら。中に引き込み、確認すれば、殿下の筆跡らしいメモと複種類のお菓子。確かにどれも殿下の好きなものだわ。
くぅとお腹がなったので、それを頂戴しつつ、メモに目を落とす。
『夕食時に声はかけさせる。それから、今日はすまなかった。ただ、嘘ではないから覚悟してくれ』
嘘ではないと言うのは「愛する」と言ったことに対してかしら。まぁ、覚悟してくれと気絶してしまう前に聞いたからそうなんでしょう。それにしても、どうやら私は気を失ってしまったらしい。不覚だわ。そして、運ばれた一室がここなのでしょう。運んでくれたのは誰かしら。殿下、は無理ね。鍛えているとはいえ、厳しいでしょう。騎士の方あたりかしら。一応、控えていらっしゃったし。
メモを見終わって、それをひっくり返した私はそこに書かれた言葉に頭を抱えた。
『“殿下”と呼んだから口付けするから、それは忘れないように。出来ない時はそれは残数として記録するから』
記録しないでほしい。もし、ドア越しで喋ってたとしたら、「殿下」と呼んだ回数、後日口付けすると言うことでしょ。ない、ないわ。私が耐えられない。もう、もうもうと文句を言いながらも私はメモをそっとドレスのポケットにしまう。夜会などで着るようなかっちりとした戦闘服ではなかったから着替えさせられなかったのは救いね。柔らかい素材にして、いつでも寝れるようなものにしておいて正解だったのかしら。
夕食時、確かに声をかけられた。こちらで食べると言ったら了承を受けたのに、何故か妃殿下と一緒に夕食を取ることになっていた。なんで、どうして??
ここまで、読んでいただきありがとうございます。
ローズが着ているドレスは通常の重装備なドレスとは違い、現代の知恵とかそう言うのを盛り込んでます。ポケットなんかもそれです。まだ販売ができるレベルではないから、販売してないだけで、いずれはしようと準備は進めてたりします。







