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39 side:Heracle

「なに、式典などではないのだ。そんなに固くなる必要はあるまい」


 さ、座りなさいと席を母上に進められ、俺は恐る恐る腰を下ろした。母上は先にメイドたちに用意させておいたのだろう、茶器をテーブルへと運んでくる。そして、ポットに湯を注ぎ、湯の中で踊る茶葉を見つめる。


「何故、わざわざ嫌われるようなことを言う」

「…………」


 嫌われると言うのは今日の茶会のことだろう。彼女に向かっていたあの言葉たち。


『女性が仕事や勉学に励むというのは好ましくない』


 彼女が仕事や勉学に励んでいるのは知っていた。知っていたからこそ、より頑張って欲しくて吐き出した言葉は最低な言葉だった。彼女の怒った目を見て、間違えたことに気づいた。


「前々回の夜会では薔薇のカフスを選び、前回の夜会ではラペルホールに薔薇の花を差してたのに、なぜだ」


 いい状態になったのか、母上は茶葉を漉しながら紅茶をコップへと注ぎながらそのようなことを言う。気づかれてた。


「陛下は気づいてないぞ。アレが細かなことに気づくのは公爵に対してだけだ。基本的に他はどうでもいいのだ、彼はね」


 驚く俺に母上は言葉を続け、父上は気づいてないという。まぁ、確かに公爵に対してであれば、髪をミリ単位で切ったとしても気づきそうだ。


「私は騎士の頃から人の動向を観察するのが癖だ。だから、気づいただけにすぎない。しかし、それだけローズにアピールしているお前が何故、わざわざ嫌われる言葉を吐く」

「……ローズ、って」

「ん? あぁ、ちゃんと彼女には許可をとっておるよ? なんだ、お前はまだ名前で呼べぬのか、情けない」


 俺とその正面の席に紅茶を置くと母上は正面に座りながら、言葉を綴る。ただ、気になった言葉を復唱すれば、大きな溜息を吐かれた。確かに、俺はジラルディエール嬢の名を呼ぶ許可をもらってない。それにしても交流回数の多い俺よりも母上が先にもらうなんて、ズルい。しかも、愛称でだなんて。グッと湧き上がるものに唇を噛み締め我慢をすれば、目が潤む。


「男が簡単に泣きそうな顔をするんじゃない。そもそも、さっさと名前呼びの許可を取ってないお前が悪いのだぞ」


 涙が溢れそうになっているのか母上が手を伸ばし、俺の目元をぐしぐしと擦る。いたい。


「ローズが嫌いなわけではないのだな」

「ん。でも、好きなのかはわからない」

「だが、気に入ってるのだろう」

「うん」


 母上の言葉に正直に答える。彼女のことを気に入ってるのは間違いない。本当は好きなのかわからないのではなくて、なんと言っていいか言い表せないんだ。


「ただ、茶会のようなことをしていれば、彼女が離れて行くぞ」

「いやだ」

「そうか、嫌か。では、何故そのようなことをした」

「……彼女が俺に嫌われようとしてるから」


 嫌っているふりをしたかった。彼女が満足できるのなら、それでいいと思っていた。


「彼女は俺を遠くから見るだけで十分だと」

「彼女がそれをお前に言ったのか?」


 首を振る。彼女はそういう話を俺にしてくれない。ただ、以前持ってきてしまったメモにそれが記されてただけだ。


「お忍びで公爵領に行った時、彼女がそう言ってるのを聞いただけ」


 お忍びで行ったことは間違いないから、そこで聞いたことにする。メモのことは母上に教えたくはなかったから。


「そうか、他にも何か聞いたのか?」

「……ジラルディエール嬢が体調不良だった時」

「あぁ、お前が城を抜け出した時か」

「うん、俺を、慕ってるって」

「それは彼女から言われたのか」


 俺は頷く。確かに彼女は俺をエルキュールを慕っていると言ってくれた。ただ、そのエルキュールは遊戯(ゲーム)の俺だったのかもしれない。それでも、それでも構わないと思った。いや、よくはないな。彼女には俺を見てほしい。見て欲しかった。

 グッと拳を握る俺に母上はふむと頷く。


「では、何故、ローズはわざわざお前への想いに蓋をしてお前に嫌われようとしておるのだ」

「夢見が悪かったらしい。彼女は俺と一緒にいると死んでしまう夢を見るらしい。あまりにも現実味が帯びすぎるその夢を彼女は怖がっているみたいなんだ。公爵子息であり彼女の兄であるグラシアン殿が言っていた」

「なるほどな。しかし、ローズに慕われていると言うのであれば、ローズがそれを隠せなくなるまで愛せばよかろう。それに死の不安があるのであれば、お前が排除してやればいい。お前にはその気概はないのか? ん? それにだ、お前と彼女は男女で、婚約者だ。なんの障害があると言うのだ?」


 天啓というのはこういうことを言うのだろうか。母上の言葉に俺の中に渦巻いていた悩みがスッと消え失せた。

 そうか、俺が彼女を愛せばいいのか。彼女に嫌われるような言葉を吐く必要もない。それに彼女が恐るバッドエンドも王子である立場を使えば、覆せるかもしれない。なんで、そんな簡単なことをなんで思いつかなかったんだ。


「あぁ、だが、陛下のように暴走はするな。拒絶させることになるぞ」


 ジラルディエール嬢に拒絶される。ないな。ない。それは俺が無理だ。父上みたいにはなれないし、なりたくない。


「まぁ、まずは名前を呼ぶ合うところからだな」

「えっと、あの、母上、どうやって提案したら」

「そういうのは自分で考えるものだ。甘えるな、バカめ」

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


次からローズに戻ります。

ひっそりとあらすじを変更しました。これからも話が進むごとにちょいちょい変更を加えていくと思います。

あらすじ、難しい……。

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ローズモンドやエルキュール、イニャスのイメージ画を以下においてあります。エルキュールとイニャスはサイズの関係でミニキャラでお送りします。等身はTwitterもといXにございますので興味がある方は覗いてやってください。
















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ローズモンド・ジラルディエール
ココナラで四月とを様に書いていただきました。




html>
エルキュール・ヴェルディエ
html>
イニャス・ギルメット
ココナラでアトリモコ様に描いていただきました。
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