38 side:Heracle
やってしまった。わかっている。やってしまったなどとはわかっているんだ。
茶会が終わり、自室に戻った俺はソファに倒れ込み、溜息ばかり吐く。
最後なんて、全部反応してくれなかった。確かに、彼女の気分を害することを言ったと思う。そのせいなのはわかる。ぐるぐると同じことを考える。
「エール、妃殿下からお呼び出しだ」
「……何故?」
「んー、言いたきゃねーけど、ジラルディエール嬢と一緒にいた」
バッと飛び起きてしまった。いや、起きるだろう。なんで、なんで母上とジラルディエール嬢が一緒にいたんだ!? それが顔に出てたのかイニャスはお茶会してたんだとという。俺とのお茶会の後に? そもそもその予定が入ってたのか? 俺は知らなかったが?
「事前に予定を知らせておくとお前が乱入してくるだろうから、しなかったんだと」
「いや、乱入って」
「するだろ」
「しなくはないかもしれない」
「そもそも、女同士のお茶会だから男はいらんって」
「そ、そうか」
俺が一人驚いている中、ソファに倒れ込んでしまっていたため着崩れた服をイニャスが整えながら説明してくれた。納得は納得なんだが、なんだか腑に落ちないな。しかし、なんだ、この流れから母上のところに呼び出しというのは恐ろしいとしか思えないんだが。
「……まぁ、ジラルディエール嬢といたことから、今日の茶会のこと知ってんじゃね?」
「終わった」
間違いなく終わった。しゃがみ込みそうになるけれど、脇に手を入れたイニャスに阻止される。
「イヤだ、行きたくない」
「はいはい、我儘言わないの。行きたくないのわかるけど」
よいしょっとそのまま抱えあげられる。あーもう、身長差が憎い。ジラルディエール嬢にも正直負けているから尚の事だ。思わず、イニャスとジラルディエール嬢が並んだ姿を想像してしまった。なんか、似合いそうで腹立つ。
「こら、力いれんな」
「どうせ、俺はチビだ」
「え、何に腹立ってんだよ。お前の成長期はこれからだろ」
成長期はこれからだと言っても、同年代の令息たちに比べて俺は小柄な方らしい。つまるところ、成長しても然程変わらないんじゃないかと思うほどだ。だから、これからだと言われても希望が得られない。
「妃殿下や陛下を見てみろ、身長あるだろう」
「お祖父様やお祖母様は小柄だった。隔世遺伝とかそういうのあるだろ」
「お前、そこはそうだなって納得するところだろ。なんで先代たちを引っ張ってくるかな」
あーもうめんどくさいと言うイニャス。どんどん母上の部屋が近付いてるんだが、どうにか逃げられないかな。
「お前、物凄く逃げたそうな顔をしているな」
「まぁ、そりゃあ、怒られるだろうし」
「ほぉ、怒られるのがわかっておるのか、なるほどな」
「!?」
バッと顔を上げれば仁王立ちしたにこやかな母上の姿。ちらりとイニャスを仰ぎ見れば青い。
そっと地面に降ろされる。そして、ついでとばかりに背を押される。やめろ、押すな。
「ご苦労だったイニャス。あとは私が連れて行こう。お前はお前の残っている仕事をするとよい」
「あ、はい、失礼いたします」
母上に手を取られ、母上がそんなことをイニャスに言う。え、イニャスも一緒ではないのか??
「なに、息子だ、取って食いやしないぞ、そんなに怯えるな」
俺の様子を見てくつくつと笑う母上。イニャスはご健闘を言って逃げるように去っていった。
「あ、いにゃーー」
「さて、私達も行こうか。お前にはよくよく聞きたいことがある」
抵抗虚しく、俺は文字通り母上に引きずられていった。そして、無情かな、母上の自室は人払いされ、扉もしっかりと閉められた。
「さぁ、久しぶりの親子の時間だ。ゆっくりじっくり語り合おうじゃないか」
母上のその言葉は死の宣告にしか聞こえなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次もエルキュール視点です。お話し合いまでいけなかった。







