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まず、行ったのは天の民たちの選別。軽症、重症とし、軽症者には回復薬を飲んでもらい経過観察。重症者も経過を見ながらの回復薬投薬。ただ、重症者は毒を受けていた時間が長い人たちであることもあって、いまだに毒に苛まれていると感じてしまっている人たちが多い。そういう人たちには精神的な薬の投与も様子を見ながらお願いした。薬に頼りきりになってしまうのはあまり良くないからあまりに酷い時と条件をつけたのだけど、どうなるかしら。ある程度回復するまではそうせざるを得ないとは思うのだけど、それ以後も頼るようならば、また何か考えなくてはいけないかもしれないわね。また軽症者は要経過観察としながらも、動ける人には動いてもらう。まず、家財道具の確認と分別。あの場所に落ち葉がたっぷりと敷かれてあったとしても物によっては破損もありうる。今のうちに直せるのであれば、そういう手配をしておく方がいい。
「人族の薔薇の娘、私たちには返せるものがない」
「今はでしょ。それにあれだけやって、あとはどうぞなんて放り出すほど私は冷酷ではないつもりよ。それにこれは先行投資でもあるの」
悔しそうな申し訳そうな顔をしてそう言ってきたのは羽を頭につけた青年。もしかして、年若いけど彼がリーダーなのかしら。他の者たちは特に何も言わず、指示を仰ぐように彼を見ることが多かったし。
「まぁ、こういう話はここでやるべきではないわね。ここの領主である私の父も呼んでくるから別室で話しましょう」
「……わかった」
頷いてくれた彼を別室に案内し、私は商会の人間にお父様を呼んできてもらえるように指示を出す。勿論、私からだという一筆を持たせて。
程なくして、お父様が到着。私と共に青年のいる別室へと入った。
「お初にお目にかかる。ジラルディエール領領主のヴィルジール・ジラルディエールだ」
「この度は救いの手を感謝致す。天の民二の族の族長であります」
こつりと杖で床を叩き挨拶をするお父様。それに青年は応えるようにソファから立ち上がり、胸の前で翼を重ね、腰を折る。まるで、拱手のようね。それにしても、やはり彼がリーダー、族長だったのね。若いわ。
お父様が席に付き、私も彼も席につくとお父様が話を振る。
「随分、若いものが選ばれるのだな」
「私の場合はたまたまです。たまたま、族長に相応しい目を生まれ持ったものですから」
聞けば、天の民は目の輝きで族長を決めるらしい。菫青石の目と呼ばれるだけあって見せてもらったその目は確かに美しい。私の好み的には殿下のルビーのような目が最高に美しいと思うのだけど。
「族長になるものは少なくとも黄色が入っていなければならないのです」
「そうなると、まるで夜空を切り取ったような貴方の目は格別なのでは?」
「はい、更に貴重となってます」
生まれたときから長になることが約束された彼はどんな気持ちだったのかしら。妬みや僻みなんて、当然あったでしょうね。場合によっては目を潰そうとした人もいたんじゃないかしら。
「それで、気になったのがね、天の民の二の族というのはどういうことだね?」
お父様の言葉に彼は気になるのも当然だと鷹揚に頷くと天の民について語る。
曰く、天の民はその目の貴重性から狙われることが多い上に外敵対抗する術、守る術が少ない。そのため、高い山脈に囲まれた高地を住処としている。
曰く、天の民は前記を含め複数の一族が固まって過ごしている。複数ということから便宜上一の族、二の族、三の族と言うように○の族と名乗るようにしている。また各自名称を持たないため族名と特徴を組み合わせて呼ぶらしい。例えば、二の族の赤毛の娘とかそういう感じに。
なるほど、だから、彼はここに来てから私のことを「人族の薔薇の娘」と呼んだのね。人が多いから、娘だけだとわからないと思ったのね。面白いわ。
「なるほどな。それで、なぜ、君たちは住処を出たのかね?」
お父様の言葉に彼は背を伸ばし、口を開くーー。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!!
一区切りまであと少し。







