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どうにも殿下に気に入られているような気配がする。夜会の前と後にそれぞれ心配する手紙を頂戴したし、さりげない贈り物も増えた。いつだったかに高価な贈り物は迷惑と言ったのを覚えていたらしい。言ったかしら? 一応、ちょいちょい話すようになってしまったのでどこかで言ってしまった気もする。確証はないのだけど。
「お嬢、天の民たちの居住が完成したらしい。見にいくか?」
商会の執務室で考え事をしていた私のもとにフォルジュがそう言って顔を覗かせた。
天の民。簡単に言ってしまうと鳥の人。鴉天狗のように背中に翼があるタイプではなくてハーピーのように腕が翼になっている。上半身は人の形なのだけど、下半身が鳥。猛禽類のようながっしりとした足だったわ。服は古代ギリシャで見られるキトン。まぁ、腕が翼で下半身が鳥だものね、その方が着やすいのでしょう。そして、住処は高い山脈に囲われた高地。そこに複数の天の民一族が集まって生活しているらしい。
で、なぜ、そんな天の民の名前が出たかというと簡単。我が領に現れたから。本来であれば、現れないはずの天の民。発見したのは異常を感じたフォルジュ。そして、ルヴェールだった。
「えぇ、もちろん。提案したのが私だもの。彼らから意見や感想を聞かなくちゃ」
生憎、我が領地には彼らが住めるような高地はなかった。それなりの山なり海なりはあったのだけどね。そこで、私が提案したのはツリーハウス。彼らが現れたところが万年木と呼ばれる巨木のある森だったのもちょうどよかった。元々高地に住んでたのは外敵から身を守るため。であれば、高い場所に家を作ればいいと思ったのよね。だって、高いところって彼らのように飛べるのならいざしらず、普通は梯子なり浮遊術なりがないと手が届かないはずだもの。その発案に彼らは頷き、我が商会と協力して住宅を作ることになった。
軽く出かける準備をしてフォルジュやルヴェールと共に馬車に揺られ、訪れた森。表はしんと静まっているけれど奥に進むと人の営みが聞こえてくる。そして、見上げれば、大小様々な家が宙に、万年木に作られていた。
「これは、想像以上ね」
思わず、呟いてしまった声に森がしんとする。そして、バサバサバサッと次々と私の目の前に天の民たちが降りてくる。
「お嬢様、ようこそいらっしゃいました」
そう言ったのはまだ年若い一族の長。それに続くように皆が私を迎える言葉を告げる。
歓迎するように向けられる多くの菫青石のような瞳は天の民の特徴の一つ。これに魅了させる人間は多いのだとか。まあ、気持ちはわかるわね。
「もう、体調は平気そうね」
「えぇ、お陰様で。我々のために尽力していただき、お嬢様には感謝の念が尽きません」
「あら、気にしないで。私は私のためにやったことだもの」
一人一人に触れさせてもらって毒素が抜けているのを確認する。
そう、彼らがこの地にやってきた理由はその身に毒を宿してしまったがためだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!!
次回は少し過去に戻り天の民との出会いになります。







