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「僭越ながら申し上げますが医者にかかったほうがよろしいのでは?」
暗に目が悪いんじゃないのと言ってみたけど、殿下は気にした様子もなく、ふふと笑っただけだった。見た感じ、健康そのものであるし、目だって曇っている様子はない。相変わらず、美しい目ね。ただ、一つあるとしたら、魅了魔法とかかしら。私と婚約を解消させないために何らかの魔法が施されてしまったと言うのならば、私のスキルが役に立つと思うのだけど。
「殿下、一つよろしいでしょうか?」
「何?」
「お手を拝借してもよろしいでしょうか」
「構わないよ、どうぞ」
机の上に差し出された殿下の手。何の疑いもなく、ポンと出されて、私は思わず固まってしまった。
「ジラルディエール嬢?」
「……あ、いえ、失礼致します」
声をかけられ、私は殿下の手を取った。何だろう、この手の温かさ。夢心地だったあの時にも感じたような温かさだわ、これ。でも、殿下は見舞いに来てないのだから、幻想ね。それにしてもーー。
「頑張り屋さんの手ですね」
まだ小さな手にはすでに剣ダコやペンダコができている。一体、どれだけ、剣を振るっているのか、ペンをとっているのかわかりはしないけれど、その証拠はこの手の中にある。
「……ジラルディエール嬢は俺が王太子になると思う?」
一体、この方は何を言っているのだろう。顔を合わせれば、揶揄う様子もなく、笑みを浮かべてる様子もなく、とても真剣な目をしていた。王宮に暮らす碌でもないものに言われたのか、囀っていたのかは知る由もないけれど、ただ私が言えるのは一つしかない。例え、ゲームで彼が王太子になることを知っていたとしても、確定したとしていてもーー。
「日々、国のためにと努力されている方を王太子とせず、誰を王太子にするというのです? 陛下であれば、これほど手に努力の跡を残しているというのにそれを無駄にするような判断はなさらぬはずです。例え、我が父に気持ちわーーではなく、異常なほど執着している陛下であろうと」
言ってから気づいたのだけど、言い直したけれど陛下に対しての言葉が変わってない気がする。いや、でも、きっと王太子になれるということが伝わればそれでいい。
「ジラルディエール嬢は王妃になりたい?」
私の言葉に。ふくくと笑った後に優しげな顔でそう尋ねる。けれど、私の答えは決まっている。
「いいえ、全然、全く。微塵たりとも思いませんわ」
てか、なぜ、私が王妃になるという話になったのかわからないのだけど? 確かに殿下が王太子になればゆくゆくは国王になるわけだし、その妻は王妃になるだろう。でも、それはきっと私の役割ではないはずで。
「そう」
殿下はそう返事をしたけれど、そこから感情を読み取ることはできなかった。一体、彼に何があったのかしら。男子三日会わざれば刮目してみよ、とはよく聞くけれど、そういうことなのかしら。よくわからないわね。
結局、本日の茶会はいつも以上に会話をしてしまった。必要なことだけ話そうと決めてたのに、殿下に狂わされた。
「それでは殿下、私はこれにて失礼いたします」
「あぁ、一つだけいいかな」
「なんでしょう?」
「好みってね、日々変わるものだから」
「左様でございますか。しっかり、心に刻んでおきますわ」
ニッコリと笑ってそんなことを言った殿下。あれなのかしら、頻度が上がっていたせいで厚化粧やド派手衣装になれてしまったという。そうね、あえて次から落ち着かせてみようかしら。その反応を見ながら解消に向けて模索するしかないわね。
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ブクマも評価も嬉しいです!四十から五十くらいには学園に入りたいものです。
さて、雑談。エルキュールのイラストの納品があってからエルキュール一色の俺です。あれね、もうたまらんですよ。ヤバいですよ。語彙力が消失するんですよ。額に入れて飾りたい。来月には別の方に依頼してるローズが来るはずなので、またTwitterで暴走してると思います。







