26 side:Heracle
『ガーランド・カラック』
隣国の王族。留学生。チャラくて胡散臭い。
「隣国の王族と書かれている通り、フローファルサ王国の王族の中に名前はあった。流石にそれ以上の情報はない」
まぁ、それが普通だろう。王族であれば尚の事情報開示もしてないだろうし。
「えっと、出会いは学園の庭園。見つけた猫を追わえた先。え、なんで、猫を追わえるんだ? 近づいてきたら、構ってやるぐらいでいいだろ。そもそも、それ本当に猫か?」
言いたいことはわかる。本来、学園というところは管理された環境と言っていい。だから、野良であれなんであれ、動物の類が入れないはず。けれど、そこに現れた猫。疑ってかかるのが正しい。大体は誰かの使い魔であったりするのだが、この場合、カラック卿の使い魔である可能性が高い。なんのために? 普通であれば、利用するためというのが一番の候補か。
「あとはこのチャラくて胡散臭いっていうのを考えれば、女遊びが激しいとか」
「……クズじゃないか」
「まぁ、そうだとしたら向こうもわかっててコレを送り込んできてるってことだろ」
こちらで適度な娘を掴めば、そちらに放り込めばいい。待て、そもそもコイツにも婚約者がいただろ。うん、いると書いてる。え、婚約破棄する前提に婚約して、こちらに責任を押し付けて放り込もうとしてるのか、これは。つまり、体のいい厄介払いに使われているということか。はぁ、と大きな溜息を吐けば、イニャスは向こうの国終わってんなとケラケラと笑う。
「交流は庭園奥のガゼボ。……あそこって確か、行事や茶会以外での立ち入りは禁止だったはずだけど?? え、何考えてんの? ナニしちゃおうとか思ってんの? ウッソでしょ!? マジでねーわー」
天を仰ぐイニャス。ナニとはなんだ。とりあえず、碌でもないことはわかる。留学生の条件に人物の品性などの調査もしくは問題を起こした場合即刻送還を入れるように父上にお申し入れをしておこう。これで少しでも面倒事が減ればいい。
「よし、気を取り直していこう」
『イーヴ・アセルマン』
商人の息子。王都で勢いのある商会の会長子息。
「存在は確認済み。ただ、勢いがあるかという点は微妙なところ。でも、そこそこ大きな商会だな。ただ、強いていうなら、きな臭い噂がそこらじゅうに漂ってる」
まともな人材であって欲しかったんだが、無理そうだな。学園に通えるということはある程度の金を持っているか、貴族との繋がりがあるかなんだろうが。
「出会いは幼少。商会でヒロインの母親が働いていてそこで出会っている。ただし、母親亡き後は商会に関わっておらず、学園ですれ違った時に再会。商会の人間であれば、頑張ったら調べられたんじゃないか?」
「そのヒロインの母親の詳細は?」
「流石にそこまでは調べられてない。それに貴族ではない場合、存在確認だけで精一杯だ」
そこから調べれば、今のヒロインとやらに辿り着けると思ったんだけど、そうは上手くいかないか。まぁ、そもそも詳細の前に名前だけ渡して存在の確認を要請したから当然と言えば当然か。
「交流は街中。家で決められた婚約者がいるってのに人目のある街中で堂々と逢引きとかバカなの? しかも、たまに商会に顔を出して、仕事を手伝うとかよく親許してんな。新しい従業員とかっていう認識なわけ? それとも公認の愛人予定なの?? それともなに、貴族を引っ掛けてきて息子よくやったなの?」
すごいな、イニャス。どうしたんだ、言葉が止まらないぞ。放っておいたら、ずっと喋ってるんじゃないか?
「俺、もう疲れてきたんだけど、もう終わりで良くない? だめ?」
「あと三人みるだけだ」
「まだ三人もいるのかよー」
俺、疲れたのーと言いながら、冷めた紅茶で喉を潤すイニャス。まぁ、疲れたのは俺もだ。運動や鍛錬をしたわけでもないのに疲れることってあるんだな。
『ジョルジュ・ミゴー』
学園の教師。隠れ美人。ドジっ子。
「現在、教職についてる。一応、伯爵家の三男らしいわ。つーかさ、大の大人がデビュタントは終えていたとしても成人してない学生に手を出すなよ」
正論だな。隠れ美人ってどういうことだと思ったら、教員というよりも研究者でボサボサの髪をしていて目が隠れているらしい。なるほど、顔がほとんど見えず、小綺麗にしたら美人であるということか。ドジっ子に関しては何もないところでよく躓くらしい。ただ単に足がもつれて躓いているか、髪のせいで前が見えてないだけじゃないのか??
「出会いは学園の廊下。躓いて教材をばら撒いたところにヒロインと遭遇。集めるのを手伝ってもらう。普通、逆じゃね? 今までの流れからして、普通はヒロインの方が躓いてそれを助けるのが役目じゃないのか? え、俺、間違ってる?」
まぁ、間違ってないと思う。ふと、気になった。
「婚約者は」
「いるね、いるけど、婚約状態のままだな」
メモの方も婚約者がいるになっている。なんで、結婚してないんだ?
「どういう状況か、後で探っといてみるわ」
「頼んだ」
結婚していれば、学生に手を出すこともないだろう。多分。
「交流は教員の準備室。授業の準備を手伝ったり、採点を手伝ったり。いや、採点を手伝うのはダメだろ。たまに街にデート。いや、だから、教員!!」
もうやだ、指摘するの疲れる、次行こ次とメモをめくる。確かにここまでずっとどうだこうだと言ってきたからそうなるな。とりあえず、父上には一度教員の適性を確認しておいてもらおう。
『フヒプュイ・グルー』
詳細は不明。
「メモにある通り、こちらでも情報はなし。あと出会いや交流についての情報もないっすね」
全てが不明か。どうしようもないな。じゃあ最後とメモをめくる。
『デフォルト名覚えてない』
ヒロイン。ゲーム上ではプレイヤーが好きに名前をつけられる。母親亡き後、男爵家に引き取られる。ハニーゴールドの髪にピンクの目。ふんわり可愛い小柄な女の子。胸でかい。
「名前がわからないので、調べようがない。容姿だけで探せなくもないけど、王国をひっくり返さないとまず無理」
「男爵家を対象に調べるのは?」
「いつ、母親が亡くなるのか明記されてないんで、今調べても引き取られてない可能性もあるぞ」
確かにそれはそうだな。それにしても、好きに名前がつけられる、か。なるほど、だから疑似恋愛なのか。この子に対しては今のところ手が出しようがないな。ただ、スパイや工作員ということも考えておいた方がいいだろうな。
一国の王太子からその側近、教師、商人まで幅広く手を出してるわけだからな。そういえば、ジラルディエール嬢はどうなんだろう。
「……ないか」
「何が?」
「いや、流石に自分のことを書き出すことはなかったんだなと思ってな」
書いてあったら、少しは彼女のことを知れるのではと思ったが、しょうがない。次の茶会の時、どうしようか。
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