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予想通り、キバチは数日で情報を掴んできた。流石ね。
私がほしいと思っている技師がいる工房。そこは十数人働いている。様々なガラス製品を出しているのだけど、品質自体は良くも悪くもない感じ。ただ、時折出てくるガラスの製品は幻とまで呼ばれるほど品質が良く、多くの人が買い求めるらしい。けれど、それを購入できるのはある一定の金額を払った客だけ。なんて、質の悪い工房かしら。
「その工房の技師の中にはあんたの望む人物はいなかった。ただ、その工房で下働きをしてる“罪人”ってやつがそれっぽい。生活しているらしい物置小屋を調べたら、細かなガラス片があった」
そのガラス片を調べてみたら、工房の売り物とは比べ物にならない質の高いものだったとキバチは言う。
「そう、わかったわ。その人と会えるようにしてもらえるかしら。勿論、特別手当は出すわ」
「……金はいい。代わりにアイツにあんたみたいなドレスを見繕ってくれ」
「ふふ、貴方がそれでいいみたいだから、そうするわね」
「ああ」
表情は変わらないのに耳を真っ赤にしたキバチは闇へと消えた。
それにしても、やはりというべきか優秀な技師が搾取されている形に私は一人大きな溜息をついた。どういう理由で搾取されるようになってしまったのかの確認もいるでしょうし、どんなパターンが来ても交渉ができるようにぐらいはしておく必要があるわね。
後日、キバチから謝罪を受けた。どういうことか確認したら、“罪人”という人物は言葉が不自由なのか、キバチが接触してもリアクションを殆ど返してくれないらしい。それ故に話が詰められないそう。正確には言葉が通じてるかどうかがわからないらしい。
「そうね、私が直接接触するから、その人物の行動パターンを洗い出してもらえるかしら」
どこかで会って話すというのが無理なら、邪魔にならないタイミングで声をかけるのがいいかもしれないわね。キバチは特別給付がなくなるのにしょんぼりしている様子だったけど、なくす予定なんてないのに。まぁ、驚かせてみたいから言わないけど。
それから、キバチはすぐに動いてくれた。
「ギー、ちょっと付き合ってもらえるかしら」
「ええ、構いませんが」
「じゃあ、見習い執事の体でお願いね」
「ふふ、かしこまりました」
私の言葉に笑うとギーはあどけなさの残る若い青年になった。これでよろしいでしょうかと笑うギーに私は上等よと頷く。
ギーの固有スキルは年齢操作。本来はお祖父様の代から仕えていることもあってそれなりのお年なのだけど、これを使うことによってある一定の年齢のまま現役で仕えてくれている。ただ、女性からしたら垂涎もののスキルなのよね。もし持ってたら、それを利用して殿下から逃げたいほどよ。ま、実際、私はまだ固有スキルが発現してないわけだけど。固有スキル自体いつ、どこで発現するかわからないから、こればかりは運任せね。ゲーム上の私はどうだったかしら。
「それで、今度は何をされるご予定で?」
「そうね、ちょっと優秀な技師を商会で雇おうと思ってるの」
商会のお嬢さんという形をとって接触する予定であること、雇う為に必要になるであろう費用は商会から捻出することなどある程度のことは伝えた。
「ふむ、なるほど。して、その工房があるというのはどちらでしょう」
確か、公爵領ではあるけれど、男爵家が管理してくれている土地だったはず。それを聞いて、また一つなるほどとギーは頷いた。何かあるのと尋ねれば、これだけは頭に入れておいてくださいと税収や男爵の特徴といった情報が渡される。あー、そういうことね。理解した。
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なかなか前に向いて進まない。ひとまず、この技師の話はあと二話ぐらいで区切れればいいなと思ってます。そのあとはまた王太子視点かそこらを挟み、二人の関係の発展をさせたいところ。
とある部下への報奨
「むー! むうーむむ♪」
至極色のドレスを着て、楽しそうにくるくると回るアヴリール。それを見て、真っ赤に顔を染めるキバチ。
「おい、オレはあんなの頼んでない」
「あら、可愛くなかったかしら」
「かわ、いや、そうじゃなくて」
「むー?」
「いや、よく似合ってる、似合ってるけど、そうじゃなくて」
「似合ってるなら、いいじゃない」
ローズモンドは真っ赤になってわたわたとするキバチに貴族の知識を与えておいて良かったとほくそ笑む。そして、そんなキバチに気づいてないのかアヴリールは幸せそうに胸につけられたゴールデンベリルのブローチを抱きしめていた。
「むふー」







