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殿下に想いを告げた夢を見た数日後、私はすっきりと目が覚めた。
昨日まで体を侵していた気怠さもないければ、熱だまりもない。私、完全復活。これだけ楽になるのだったら、ちゃんと養生しとけば、デビュタントに行けたのかなぁなんて考える。
ちりりんと魔法ベルを鳴らせば、マルチドや他の使用人たちが部屋に来る。
「お嬢様、お加減はいかがでしょう」
「問題ないわ。屋敷の方はギーたちにお願いしてたけど、大丈夫だったかしら」
「はい、問題ございません」
「そう、それならよかったわ。あ、そうそう、一応、お医者様を呼んでいただける? ちゃんと体調が良くなったと診断してもらわないと部屋を出ることも叶わないもの」
「かしこまりました」
その後、診察に来てくれた主治医は問題なしの診断書を書いてくれた。よし、これで孤児院にも行けるし、活動ができるわ。
主治医が帰った後、私は確かこの年齢近辺でイベント的なことがあったなと思った。最近はだいぶ、忘れかかってるからメモは必至よ。
いつも通りのところにあるだろうと引き出しを開けたが、空。
「え?」
ここにしまっておいたはずよ? もしかして、間違って仕事の山の中に入れたかしら。仕事の書類の山を一枚一枚丁寧に確認するけれど、そこにはゲームの文字すらない。まさか、ゴミ箱にと思って横に置いてあるゴミ箱を見たけれど、空。片付けた時にはゴミが入ってたはずだから、寝込んでいる間に処理されてしまったのね。
こうなるとどこに行ったか確認ができない。でも、まぁ、可能性があるとしたらゴミになったぐらいだろうし、誰かが持ち出したなんてことはないでしょう。
「改めて、書き出しておきましょう」
この世界には固有スキルとして範囲は様々だけれど予言ができる人間もいることだし、一部流出したところで勘繰られることはない。
初めて書き出した時は思い出す限り書いたけれど、今ならきちんとまとめて書けるはずよ。抜けが多くなりそうだけど。
「お嬢様、失礼致します」
「あら、ギー、私が寝込んでいる間ありがとう」
「いいえ、とんでもございません。我々の仕事でございますから」
「そう、それならいいのだけど。あ、そうそう、来客などはあった?」
「特には予定も入っておりませんでしたし、何かお迎えする方でもおられましたかな?」
「ないのならいいのよ。もしあったら、お父様たちいないし、私がお出迎えしなきゃ行けなかったでしょう。もし来た人がいたのなら、お詫びの手紙の一つでも出しておこうかなと思っただけよ」
「左様でございましたか。しかし、お嬢様は体調を崩されておりましたのでそのような心配はご不要でございますよ」
まぁ、ギーの言う通りかもしれないけど、気にしちゃうのよね。でも、そっか、特に訪問客はいなかったのね。
「して、お嬢様、このあとのご予定はいかがいたしましょう」
「そうね、とりあえず今日は家で仕事をするわ。明日は孤児院に行こうかしら」
「では、なにか用意しておきましょう」
「ええ、そうしてもらえると嬉しいわ、よろしくね」
「はい、では、そのように」
さすが執事長、予定を伝えただけで察してくれるなんて嬉しい。ギーが退室して、私は机に向かう。
「仕事の合間に書き出すので大丈夫よね」
今度から間違っても捨てないように何か箱に入れてからしまうことにしよう。
計画書の見直しや作成をしていると私が快気したと知って商会の人間が面会を求めてきた。勿論、断る理由もないし、確認もしたかったから丁度いい。
「あら、ノサップもいるのね」
「なんだよ、俺がいちゃ悪いってか?」
「こら、ノサップ、会長になんてことを言うんだ」
「ふふ、ナタン、いいのよ。私は気にしてないわ」
面会の時間になって、サロンに行けば、そこには予定していた人と共に予定になかった人物が待っていた。ノサップ・ガリマール、ナタン・ガリマールの息子で私と同い年の少年。父親のナタンは私の商会『999本の薔薇』で会長代理をしてくれている。商会の名前はその私の決意的なもの。だから、変えても平気だといったのだけど、ナタンたちはこれでいいとそのままにしている。
そもそもの出会いは私が商会を作るので協力者が欲しいと商人ギルドで声を上げたこと。十歳の子供が商会を作るので協力して欲しいといって何人が真剣に取り合ってくれるだろうか。まぁ、結果は勿論、笑われて終わりよ。ナタンと数人の商人以外にはね。私は協力者を求める上で商会を作る目的と扱う商品については話した。全部ではないけれど。それでもそれを聞いて興味を持ってくれて、協力してくれて今がある。笑ったものたちはチャンスを不意にしたことを悔やんだらしいわ。だって、私の商会の後ろ盾は当然ながら我が家だったもの。ちょうどいい篩になってよかったわ。
「それで、ナタン要件は何かしら?」
「まずは快復をお祝い申し上げます。次に会長の希望のものを作成できる技師を見つけました」
「ほんと!?」
「はい、それでいかがなさいましょう」
「そうね、まずは会って話をしてみるところからね」
「では、そのように」
日時はと話している中、私はノサップが大人しいことに疑問に思う。ちらりとノサップをみれば、ギーたちにどんどんとお菓子や飲み物を勧められていた。あぁ、なるほど、私とナタンの会話の邪魔にならないようにされてたのね。私も本当は子供らしくあるべきなのでしょうけど、自分の未来がかかってるから難しいわね。
「すみません、息子が」
「いいえ、私が変わってるだけだもの。ノサップはあれでいいと思うわ。まぁ、商会で働くつもりがあるのならそろそろ言動は気をつけるようにしなくてはならないでしょうけど。あ、そうだ、商会のみんなにもお菓子を持って帰ってあげて。ノサップだけ食べるなんてズルいもの」
「かしこまりました」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
また評価、ブクマ、いいね感謝してますヽ(=´ω`=)ノ
段々と登場人物が増えていく予定。
あと、今後はどこに差し込もうか悩んだ小話とかあとがきにちょいちょい投下していきます。時系列は、その、無差別であります(*`・ω・)ゞ
とある親族の会談
「ヴィルジールぅううう」
「汚い! 寄るな! 近寄るな!」
「汚いとは酷いではないか!? そもそもすぐに帰ろうとするでない」
「帰るに決まっているだろうが! 娘が熱を出して苦しんでるんだぞ」
「え、あれ、嘘じゃなかったのか」
「なぜ、嘘をつかねばならんのかわからんな。そもそも、こちらは欠席予定だったのだ」
「いや、だが、公爵家が欠席というのは」
「だろうな、わかっている。だから、出席はした。早々に帰りたかったのにお前が引き止めるから」
「当然だ、エルキュールとローズモンド嬢について話し合わねばならぬだろう」
「話し合うことなどこちらには一つもないのだがな」
「そんなことを言うなよ、ヴィルジール」
「ええい、ひっつくな、気持ち悪い」
「母上、父上と陛下はどういう関係なのですか?」
「幼馴染で再従兄弟かしら。お義祖母様と陛下のお祖父様が姉弟だったらしいわ」
「……なる、ほど?」
「まぁ、はっきりいって、先先代もお義祖母様が気持ち悪いぐらい大好きだったように陛下もヴィルのことが気持ち悪いぐらい大好きなのよ」
「……気持ち悪いぐらい」
「えぇ、気持ち悪いでしょう。一度、執着を見せ出したら、そこからずっとらしいわ」







