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疲れた。疲れたわ。これは身体的なものではなく、精神的に。きっと、お父様は私以上に疲労してるでしょうね。
屋敷に戻った私はひとまず、本日のみエルキュール様のために客室を用意させた。ただ、一人にしてしまうと何をしでかすかわからないから、イニャス様は強制的に同室に。逃げたそうな顔をしてたけど、逃すわけないでしょう。
そして、イニャス様にエルキュール様を任せて食事の手配やお父様への説明をこなし、こうして部屋に戻ってきたわけなのだけど。
「うにゃー」
「貴方のことで疲れてるのよ? そこのところ分かってらっしゃる?」
私の膝の上に頭を乗せ見上げるエルキュール様。きょとんとルビーをまんまるにするところを見れば、分かってないのでしょうね。えぇ、猫だもの。分かってるわ。ユルリッシュ曰く本人の意識はあるだろうが精神的に猫の要素が強くなっているとのことだったし、理性よりも本能が勝ってるってことよね。つまり、私にこれほどまでに甘えるのも匂いつけをするのも私が好かれている証拠なのでしょうね。
「いっそのこと、この首に私のものだと首輪をつけて差し上げようかしら」
するりとエルキュール様の首に指を這わせれば、私を見つめながらもゴロゴロと喉を鳴らし、うっとりと目を細めるエルキュール様。顔がいいわ。
「……貴方が本当の猫ちゃんになってなくて本当によかったわ」
猫化が成功してしまっていたらあまりの可愛らしさに猫吸いをしてたことでしょうね。ええ。
「俺は置物、俺は置物……俺は置物」
自分に暗示をかける声が聞こえる。誰とは言わないけれど。
「イニャス様」
「……何も見てない、聞いてない」
「別に気にしてないわ。それよりもエルキュール様のことだけど、私が離れてる間疲れ様子だとかあったかしら?」
「気にしねぇんだ。いやまぁ、それはそうとしてエルの様子は特に変わったところはなかった。四足歩行したり動作は猫っぽくなってたが」
そりゃあこの歳になって前世の記憶を思い出したら、落ち着かないでしょうけど、流石に小さい頃から人のいる生活をしていれば、自然と慣れるものよ。もとより、前世で友人に「ケッ、これだから金持ちは」なんてよく言われるくらい恵まれた生活を送っていたわけだけど。
それよりも、エルキュール様の行動は猫化してるぐらいなのね。疲れた様子がないということは消費した魔力は少なかったか、もしくはエルキュール様が保有する魔力が多かったか。魔法陣を発動までさせているから消費した魔力が少なかったってことはないわね。
「私もある程度持ってるし、王族ともなれば魔力量が多いのは当然ね」
「そんなに消費されるものか? そりゃあ、魔石を大量に作らされりゃ枯渇するだろうが」
「あら、魔法陣が廃れた理由の一つは魔力の消費量からよ。ユルリッシュは平気で使ってたかもしれないけれど、単純な魔法陣ですら大量の魔力を消費するの」
魔法陣が廃れた理由は魔導具の台頭、手作業による手間、複雑化によって肥大化するし場所を取る陣に先程あげた魔力の消費量。今では利用する人は我が商会などで利用しているくらいでほとんどいないんじゃないかしら。研究自体もよっぽどの変人かユルリッシュくらいでしょうし。
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今後は更新頻度を上げるためというのも含め少し短めで更新していきます。十月が終わるまでには学園に戻りたいものです。







