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A戦場へようこそ。  作者: 三方カケル
9/9

ハレノヒ

晴れの日には掃除をして、新しい朝を迎える。


私の住処の下には、ミカエルフランクのブロンズ像があり、いつも私を見守っていた。


つい先日の話だ。そう、大きなものが私を見つけて上げた金切り声と共に始まった日。


私は咄嗟に家を離れ、相手の出方を伺った。大きなものがその場から離れる音が聞こえて、しばらくすると、別の足音が聞こえてきた。


どこだよ?そんな声が聞こえた。


そこよそこ。大きなものは先程まで私がいた家の辺りを指さした。


ああ、これか、初めて見た。


彼らは私の家を破壊した。


二十度、月を見送りながら作り上げた家が、一瞬にして無くなった。


だけど、悲しむことはない。私は何度もこのような試練を経験してきた。悲しむことはない。この苦境を乗り越えることができれば、私はきっと成長できるのだから。


この楽園はもう終わりだと、私の直感がそう告げていた。




初めて口にしたのは母親だった。


私にその記憶はないが、兄弟たちからそう聞いた。


優しく、強い母親だったそうだ。一番食べたのは私だったという。元気が有り余る赤ん坊だった。


私は母のようになりたいと思った。それが、本能か私の意思だったかは分からない。だけどそれが私の夢になった。




新しい楽園は直ぐに見つかった。


遠いところから来た私の仲間の話では、楽園がとても少ない地域もあるのだというが、この地域には少なくない数あった。


散策し、この楽園の中でも一番と思える一本を見つけ出し、それから家を作る日々が始まる。


丁寧に織り込んでいく。自分の何倍もの大きさのそれを、丁寧に丁寧に。


男を呼び込まなくてはならない。


朝は眠って、夜は外に出て食事をした。そんな日々を過ごしていたある日、家の壁が破られた。


入ってきたのは男だった。


あまり顔は良くなく、身体は頑丈そうな男。身体はだけど傷だらけで、足の一本が千切れていた。


彼は間違えて、大きなものの住処に入り込んでしまったらしい。


大きなものは彼を殴った。だけど彼はぼろぼろになりながらも逃げきり、だけど傷は浅くなく、命尽きかけたその時私の家を見つけたのだという。


男は私との交尾の後、程なくして息絶えた。私は彼の体を頂いて、子供たちへの栄養とした。




腹も膨れてきた頃、私にとって天敵ともいえる敵が現れた。


それは、突然、私の家の壁を突き破ると、私の腹にその刃を突き刺そうとしてきた。


私は必死に抵抗したが、その刃は私を貫き、程なくして身体が痺れ動かなくなった。




私の腹から生まれたのは私の子ではなかった。我が子でないそれらは私の子のための私の身体を食い破りそして食い尽くした。




一番良く食べる子は首を傾げて言った。




お母さん?




いいえ、私はお母さんではないのよ。

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