師匠ォ!
魔女が迫害されていた時代――”刻印の魔女”クドから娘ソラを託された。クドの愛弟子であるシロはクドが抱いていることを気づき、ソラを引き受けた。
ソラとは五本の指くらいの数しか離れていないほどの年頃だ。
ソラは眠っていた。気が利いてクドが眠らせてくれたのだろう。これが本当の別れであることを隠すために。
「この子を守ってくれ、これが私の最後の望み――」
地面に魔法陣が浮かび上がる。転移の魔法だ。
クドは俺らをどこか遠くへ移動させるために、魔力が底をつくほど魔力を注いでいたのを毎日目撃していた。クドは疲れ切っていたが、「この子たちのためなの…」と必死さゆえに声を掛けられずに見ていた。
「師匠、俺…ソラを守って、立派な魔女にして見せるから! だから、俺らを残して死なない―――」
「いって!」
光がつつまれた。
建物や馬、花壇のカタチが消えていく。目の前で見ていたクドはいつの間にか光に包まれて消えてしまっていた。
「師匠ォオオオオーー!!」
大声を上げたとき、そこは見知らぬどこかの島にいた。
雨が振りそぐ中、俺はクドが絶対生きていると信じて、ソラとともに崖下に見える町に向かって歩き出した。
「ママ…どこ?」
と寝言を立てながら眠っているソラを見つめながら、ぎゅっと抱きしめて、「俺、やってみせるよ。だから、生きていてくれ…」と願って。