3.騎士団が来た
森の奥で自給自足生活を初めて半年が過ぎた頃それは突然やって来た。
「きたー」「ひとがきたー」
「えっ人が来た?こんな森の奥に?」
「いっぱいー」
マップのボタンを押すと大きくなった。
「うっ、青い点がいっぱい近づいてくる。ヤバいな。」
「おいかえすー?」
「えっだめだめそのまま通して。」
とにかく身支度して笑顔で迎えよう、あんなに大勢と敵対したらだめだ。
いざとなったら逃げるしかないが。
◇
第三騎士団団長アレン・ルーメルを先頭に20名の騎士が森を歩いている、
団長の隣には騎士のニール・ベンテンスが歩いている。
「団長ー魔女ってホントにいると思います?」
「ニールそれを確かめるのが任務だ。」
「それはそうなんですけど。」
「街のみんなが噂で怖がっているんだ、いないにしても確かめるのが俺達の仕事だ。」
「あれっこんなところに家が。」
「警戒! 気を抜くな。」
ドアが開いて少女がひとり出てきた。その美しい少女にみんなが注目している。
「魔女。」ニールが呟いた。近くにいた団員がハッとして剣を抜く。
「待て! みんな待機だ。」
「こんにちわお嬢さん。」
「こんにちわ。」
「私は王国第三騎士団団長アレン・ルーメルだ。」
こいつイケメンだ『リア充は爆発しろ』ってもう俺はモブ男じゃないんだよな。
「わたしはエレーヌです。」
「君はここに住んでいるのかな?」
「ええそうです。」
「ひとり?」
「ひとりです。」
「君は近くの街の噂を知ってるかな?」
「噂?、街へは行ったことがありません。」
「そうか知らないのだな。
街ではこの森の奥に魔女がいるという噂があってね。」
「えっ? 魔女って私?」
森の奥に引きこもっているだけでそんな噂が?
「それを確かめるためにこうしてやって来たんだが。」
「えーと私はここに引きこもって生活していただけですが。」
「なぜこんなところにひとりで?」
「お金がないからです。街で生活するにはお金がかかりますから。」
「なるほど、しかしだね、森の奥に近づくと奇妙なことがあるそうなんだが。」
「あーそれはそのーどう言えばいいか私じゃなくて森の妖精さんが・・・。」
「森の妖精?」
「ええ、この森には妖精さんがいて森の奥に近づく人を追い返しているようなので。
人だけじゃなく家には魔物も近づけないようにしてくれます。」
「森の妖精がそんなことを?」
「ええ私も不思議に思いますが妖精さんはいます。」
「とりあえず魔女がいないのはわかったがどうするか。」
「ここに住むのはダメですか?」
「ダメではないが危険だね。君を魔女だと信じている人が街にはいるからね。」
「もしかして捕まったら火あぶりとか?」
おいおいマジ勘弁してくれ。火あぶりとかいつの時代だよ。
「そこまでじゃないが危険だと思う。」
「どうしましょう、他に行くとこないですし。」
魔物より人間のほうがこわいわ。
「君、私達と一緒に王都へ来たらいいしばらくは騎士団が面倒をみよう。」
「それしかなさそうですね、お世話になります。すぐ準備します。」
準備といっても荷物はない。火の始末と戸締りくらいで終わりだ。
「お待たせしました。行きましょうか。」
「荷物は?」
「何も持ってませんので。」ナイフは収納してある。
「妖精さーん今までありがとう。」
そう言うと風が過ぎ去った。
こうして騎士団とともに森を後にし王都へ向かった。
「王都かーどんなとこだろ、近くの街も行ったことないのにいきなり王都。」
「あの娘まじやばい、ひとりで森の奥で過ごすなんて。」
「あの森の奥は魔物もいますよね。」
「ええ普通にいますよ。」
「よく生きてましたね。」
「妖精さんがいたから夜もぐっすり眠れました。
魔物より人間のほうが怖いです。」
火あぶりだもんな~。
「今日は街で一泊するからそこで買い物をしようか。」
「わたしお金持ってません。」
「騎士団で持つから。」
「ありがとうございます、それじゃバッグと替えの服と日用品をお願いします。」
「ああ、それくらいなら大丈夫だよ。」
「お嬢さん綺麗ですね。」
「ありがとうございます。」
どこ見て喋ってるんだコイツはさっきから胸とお尻を交互に見てやがる。
そういう視線に敏感になってる気がするな。
そういや俺ノーパンだ脚はキチンと閉じておこう。
いかんいかん笑顔笑顔、顔が引きつりそうだ。
「私はニール・ベンテンスと申します、以後よろしく。」
「わたしはエレーヌです、お世話になります。ベンテンス様。」
「王都まで一緒か楽しく過ごせそうだね。」
うっ王都までずっとジロジロ見られるのかよ。
「はいっよろしくお願いしますね。」
◇
その頃某所の一室での会話
「第三騎士団が動いたそうだが目的は?」
「なんでも森に魔女がいるとか。」
「魔女か。くわしく調べろ。」
「了解。」
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