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10.うわさの行方

 国王陛下の元での御前会議が開催され多くの貴族当主が集まっている。


「さて宰相はじめよう。」

「御意に。」

「陛下の勅命により騎士団が女性をひとり保護している。

 名前はエレーヌ、彼女に手を出すのは反逆罪に問われるので注意されたい。」

「宰相殿、件の女性は城下では魔女だと噂されているようですが、保護の目的は?」

「エンゲル子爵、貴族ともあろうものが城下のくだらない噂に惑わされるのはどうかと思いますよ。

 それに魔女が実在すると信じているのですかな?」

「それと保護の目的だがその女性は治療師の素質があるからです。」

「えっ治療師。」

「おおー後継者が見つかったか。」


「あー言っておくが彼女はまだ治療師としての職についてはいない。

 つまり治療行為は彼女の善意である。

 陛下の許可なく面談はできないので騎士団へ押しかけないように。

 もちろん騎士団へは許可のないものは追い返すようにと指示されている。

 治療師は王宮にいるので必要なかたは王宮の治療師へ要請するか、

または陛下の許可を受けていただきます。」


「王宮の治療師は奥に引きこもって出てこないではないか。」

「王宮の治療師がなぜ引きこもっているのかみなさん理由は存じているはずです。

 ならばこの対応が適切であるとも理解できるはずです。」

「他に異論のあるかたは?」

「いないようですね、では彼女は引き続き騎士団で保護します。」


「次は先ほども話に上がった城下の噂の件です。

 彼女が魔女だというのは言うまでもなく事実ではない。

 このような噂を故意に広めるのは人心を惑わし国に混乱をもたらすものであり捕縛の対象である。

 また彼女を保護する勅命を下した陛下に反逆するものである。

 よって故意にこの噂を広めるような者は反逆者として処罰する。」


「さて城下においてこの噂を大声で話すやからを捕縛しておるのだが、

なぜかそういう者はその身には似合わない大金を所持していた。

 騎士団の調べではふたりの人物が大金をばらまき噂を故意に広めていた。

 もちろんそのふたりも捕縛してある。」


「面白いのは捕縛前のふたりの行動だ。

 ひとりは何故か王都のエンゲル子爵の屋敷に頻繁に出入りしていた。

 エンゲル子爵にはこのふたりとどういう関係なのか説明してもらいたい。」


「ぐっ。」

「エンゲル子爵?」

「・・・。」

「まあよい、くだんのふたりを厳しく詰問したところ結果は明白だった。

 陛下、城下に良からぬ噂を大金を投じて流していたのはエンゲル子爵です。」

「エンゲル子爵、申し開きがあるなら聞こう。」

「・・・。」

「ないようであるな。そなたの爵位は返上してもらう。

 領地と王都の屋敷も没収とする。」

「今日はこれで終わりとしよう。」



「ルーメル団長、情報提供感謝する。」

「シーゲル団長、うまくいったのだな?」

「ああうまくいった、あの情報のおかげだ。

 エンゲル子爵家はとり潰しだ。」

 事件の詳細を説明された。

「そんな大事になるとは思わなかった。」

「とにかく感謝する。」

「たまたまうちにタレコミがあっただけだよ。

 君たちが頑張った成果だ、おめでとう。」

 エレーヌからの情報がこんな結果をもたらすなんて。



「エレーヌ、例の地図だが思わぬ結果を招いたよ。」

「えっなにがあったんです?。」

「街の噂の件だ、故意に流してたやからのアジトだった。」

「そうだったんですか。」

「ああ、それで子爵家は取り潰しになった。」

「何故そんなことに。」

「裏にその子爵家がいたということさ。

 だから噂の件は解決だもう心配ない。」

「あの地図からそんな大事になったなんて。」

「貴族の勢力争いだったようだな。」

「貴族ってホント面倒ですね。」


 あの赤い点は魔物じゃなかった。

 俺に悪意がある人間も赤くなるのだろう。

 これからは王都内でもマップをチェックしよう。

 俺に悪意のある者は赤い点となって表示されるはず。

 とりあえず騎士団の敷地内にはいないようだから安心だ。

 どうせならセクハラしてくる奴はピンクで表示してくれれば良かったのに。


「そういえば手袋とかコートは届いた?」

「はい、届いてます、皮の鎧も。」

 コートはポンチョのようで手をいれる袖の部分はない。

「皮の鎧はどうだ? 着れそうか?」

「大丈夫です、意外と着心地がいいです、高級品かな。」

「これで剣をもったら冒険者みたいですね。」

「冒険者に興味あるの?」

「ちょっとは。」

「そうなのか。」

「冒険者ギルドとかあるんですか?」

「あるよ。」

「見てみたいですね。」


「そう言えば君は以前いた森で魔物と戦ったことがある?」

「ええあります、何度も。」

「何度も?」

「はい、ゴブリン程度には負けませんよ、もっと強い魔物とも戦いました。」

「はーやっぱりか、そんな気がしてたんだ。」

「そうでないと生きていけませんでした。」

「そうだよな、しかし防具なしのナイフ一本とはすごいな。」

 魔法が使えるからな、しかし『ヒール』だけでこのさわぎなら他の魔法は秘密にしたほうがいいかな。

 それとも団長だけに相談するかな、いや切り札は隠しておこう。


「ルーメル様はご家族は?」

「私は男爵家の次男でね、家は継げないからここにいる。

 騎士団は同じような境遇の者ばかりだよ。

 妹がひとりいる。」

「妹さんか会ってみたいです。」

 きっと団長と同じリア充だろうな。

「生意気な妹だよ。」

「私、化粧品の使い方とか知らなくて、その、教えてもらえたらなと。」

「気づかなくてすまない、ここは男ばかりだから。

 今度家に招待しよう。ああだが母さんが勘違いしないか心配だな。」

「私、貴族の作法はもってないので。」

「そうだな、お茶の時間なら大丈夫でしょう。

 夕食前には帰るようにするから。」



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