第七話 始動そしてデモ走行
マコトの独り言に変更しました。
マコトの独り言に追記しました。
誤字、脱字を修正しました。
操作の説明が終わりこのあとは試験官が運転するデモ走行が始まる。デモ走行では助手席に受験者が乗って実際のコースに出る。
もちろん試験官が運転するときの魔給は予備の魔石を使っている。人の魔力では何度も魔給できないからだ。
受験者は自分が運転するときに自分の魔力で魔給する。説明を受けながらコースを廻った後、次は受験者の番となる。
点検、確認を行い魔給をすませてから運転席に受験者、助手席に試験官が乗っての運転実技試験が始まる。
だがその前に魔導エンジンを始動させる必要がある。普通の魔動車にはもちろんバッテリーもスターターもついているがマジカルレースではバッテリーは外されている。
なのでスターターは外部からバッテリーにつないで始動することになる。エンストすると再度外部からのバッテリー接続をしない限り再始動できない。
これはレース中にスピンなどでエンストを起こすと再始動できず失格になるということだ。
失格になった選手はレース終了までそのまま放置され、レースは黄色旗が振られエンスト車両付近は追い抜き禁止となる。
事故などの場合も同様だ。
よほどのことがない限り赤旗レース中止にはならない。
レース終了後にレスキュー車が来てから外部バッテリーにつなぐことで再始動させることができ、ピットに戻ることができる。事故で動かない場合はレッカーされる。
そして最初の受験者の実技試験が始まった。説明された通りに点検、確認を行っていく。しかし説明を聞いただけで一つも順序すら間違わずに実践するのは難しいと思う。
俺は父親の魔動車を隅々まで見て覚えているので何をどう確認、点検していくのかだいたい分かっているが今回が初見の受験者にとっては厳しいかもしれない。
だがマジカルレース車両は一般の魔動車をベースにしたものであり、ある程度は予習してこれるはずだ。
このあたりから受かる受からないの差が出るのだろう。まあ、一般の魔動車にはついていないスイッチやら計器類もあるのだけれども。
説明を聞く限り前の世界のレース車両と大した違いはないので俺は大丈夫だと思う。
しかし、ここで仮に次に何を確認するかわからなくなったとしてもおろおろしてはいけない。わからないならしっかり試験官に確認しなければならないのだ。
何でもそうだがわからないまま作業を続けると失敗の元だし作業の内容によっては危険なことも多々ある。
マジカルレースなど言うまでもない。何百Kgという鉄の塊が動くのだ。事故が起きれば怪我では済まない場合もある。
この安全に関してもマジカルレースでは徹底されており、マジカルレーサー養成学校では軍隊並みに厳しく教えられることで有名だ。
わからないところはしっかりと聞いて間違いないように確認するということができない受験者は落ちてしまうだろう。
最初の受験者はやはり緊張もあったのか案の定おろおろしだした。試験官が見かねて声をかけ指示を出す。
ドンマイ。運転実技で挽回だ。俺は他人ごとのように心の中で応援する。だって他人ごとだし。
そして確認、点検が終わり試験官の隣に乗ってのデモ走行となる。整備士さんの手により外部バッテリーが接続され魔導エンジンが始動される。
魔導エンジンが始動しお腹に響くような低音で空気を振動させる。前の世界のエンジンと違い排気ガスではないので触媒はなくマフラー(サイレンサー)のみついている。
もちろん前の世界同様車の後ろにマフラーはある。排気ガスが出ないならマフラーはどこにでもついててもいいのでは?と思う人もいるかもしれない。
しかし魔力を圧縮して熱エネルギーに変換させて膨張した空気はかなりな熱を持つ。これを車の横にでも排出しようものなら街を歩く人が大変危険なことになる。
そして試験官のデモ走行が始まった。
受験者は助手席で実際のコースに出ての操作方法や注意点の説明を聞くことになっている。
最初の受験者が魔導車でピットから出発しレースと同じく三周して戻ってくる。ここで試験官と受験者が交代となる。
運転席から降りてきた受験者が心持ち高揚した表情だ。
マジカルレーサーを目指す魔導車好きが集まってるだろうからさもありなん。
最初の受験者が運転席に座りいよいよ運転の実技試験が始まる。
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マコトの独り言
〇マジカルレースでのエンストについて
エンストし停止した車両はその間お客さんからの大ブーイングを受け続けることになる。人気をかぶっていればいるほど車券を外して損した人がいるということだからだ。
ちなみにマジカルレースで買うのは車券と呼ばれる。前の世界でもオートレース、競輪が車券で競馬が馬券、ボートレースは舟券と呼ばれていた。
このブーイングを受けるのもギャンブルであるマジカルレースだ。マジカルレーサーはお客さんの期待と命の次に大事なお金を背負って走るのだ。
〇触媒について
魔導車は触媒がついていない分自動車より排熱温度は高いようだ。触媒とは排気ガスのNOxやCOを除去する装置だ。排気ガスを国の基準以下になるようクリーンにしている。
まあ、アイドリングぐらいなら大丈夫なのだけれども。そうでないと後ろから荷物を載せたりおろしたりできないし。
〇魔導車の電装品について
あとバッテリーをつけていないなら電装品はどうしてるの?と思うかもしれない。それは発電機がついているから問題ない。前の世界の自動車と同様だ。
なので前の世界の自動車も昔の車ならバッテリーが上がろうがスターターモーターがお亡くなりになろうが押しがけでエンジンを始動させ走らせることができたりするのだ。
押しがけとは文字通り車を押してエンジンを始動させることだ。
一人が運転席に座りギヤをニュートラルにしたまま、外から一人か二人で車を押してもらいある程度走り出したところでニュートラルを2速あたりに入れて無理やりクランキング(クランクを動かす)してやり始動する方法だ。
ギヤを入れればタイヤがクランクを廻しピストンを動かすというわけだ。バイクなどでは前の世界で死ぬ前でもそんな光景をみることがあった。
古いバイクだとスターターすらついておらずキックペダル式のスターターだったりするし。スターターモーターと違ってかかりにくかったりする。
前の世界でも近所の人のバイクがかかりが悪かったので押してあげたことがある。
というか、俺の前の世界の車もスターターが故障して押しがけしたことすらある。
新しい車だといろんな電子制御が入っているせいで無理なのだが。
だいたいガソリンを使わず燃焼させる必要もないので点火装置もなく、ガソリンのように魔力を噴射させる必要もない。
では魔力はどのように魔導エンジン内に供給しているかというと魔気吸入装置によって行っている。
前の世界で言うキャブレターだが、空気中には薄くではあるが魔力はある。この場合の魔力を含んだ空気を魔気という。
魔力に流れを作るなら魔力を使うしかないのでこの魔気を使って魔力を魔導エンジン内に供給するのだ。
といっても空気中に含まれる魔力なので結局は空気を吸い込んでいると言ってよいのだが。
マナキャブレター内で吸い込んだ魔気の流速をあげてやり魔力タンクから魔鋼管を通ってきた魔力を吹き付けるようにシリンダー内に送り込む仕組みとなっている。