第四十三話 リベンジ②
1M展開の図説を前話に追記しています。
まだご覧になられていない方はよろしければご覧ください。
誤字、脱字を修正しました。
1Mを捲り差したマコトはそのままバックストレートを全開で加速していった。残留魔力がマフラーから舞い散る。
以前ツチヤと競り合ったときと全く逆の立場になっていた。以前マコトが競り負けたレースでは1号車がマコト、4号車がツチヤでマコトがツチヤに捲り差されていたのだ。
やられたらやり返すと言わんばかりにマコトはツチヤに捲り差しを決めてみせたのだ。バックストレートでツチヤより半車身前に出ており、1M廻って一番手だ。
内側からマコト4号車、半車身遅れてツチヤ1号車、もう半車身遅れてヨーコ5号車の段々状態で1Mを立ち上がっていた。
このまま内側有利に2Mは廻れるだろう。しかしマコトはこれで勝ったとは思っていなかった。
マジカルレースは残留魔力を排出するがゆえに、後続車は先行車の残留魔力を吸うか避けるかしなくてはならず、先行する車が圧倒的に有利になる。
だからこそ1Mで抜け出すことがとても重要なのだ。この1Mでの結果がそのままゴールまで続くことも少なくない。
通常のレース、しかも研修生だけの模擬レースであればミスさえなければ、1着の逆転はほぼないと言えた。
だが、相手はあのツチヤだ。キング・ツチヤミチヒコのドライビングを受け継ぎ、研修生でもトップの成績で他を寄せ付けないほどの強さなのだ。
マコトのドライビングスキルをもってしても勝てなかった相手だ。マジカルレースにおいての強さが違った。マジカルレースでの強さとは機力、魔力、スタート、ターンそして道中のさばきの強さだ。
以前はターンは同等かそれ以上の力がマコトにはあると自身でも思っていたが、それ以外の特に魔力、スタートはどうにもならないと思っていた。
魔力やスタート勘は天性のものだ。魔力は練習ではどうにもならず、スタート勘も練習すればそれなりに早くなるが、生まれ持った才能には勝てないレベルでしかない。
しかし、それも今までのことだ。マコトはそう思った。ツチヤに負けてからレースでのさばきを徹底的に練習してきたのだ。
その一つが捲り差しだった。今度こそ以前の借りを返す! マコトは強い気持ちで今回の模擬レースを走っていた。
そして1Mは捲り差しでツチヤの前に出て見せた。それでもマコトは油断しない。次の2Mに視線を向けたままツチヤへの注意は怠らないでいた。
「今度こそ負けない!」
マコトはバックストレートを走りながら声をあげていた。
ツチヤは1Mを廻って笑っていた。
「ふふふ、ははは! やはりこうでなくては。ヒビノ、このままで終わるとは思ってないよな! 」
普段では絶対に見せないテンションでツチヤが口にした。ツチヤはマコトが捲りから捲り差しに変化できることに気づいていた。
常にマコトのレースはチェックしているのだ。スタートしてからのスリット隊形からこうなることも予想の範囲内だった。
しかし、実際にそのテクニックを目の当たりにすると笑いがこみ上げてきたのだ。やはりヒビノは凄いと。笑いながらもマコトと2Mへの視線は外すことなくバックストレートを加速していった。
一方ヨーコは二人ほどのテンションではなくマイペースであった。
「あー、さすがに捲り切れなかったかー。でもまだチャンスはあるよね。マコトとツチヤ君が競り合っているとき、そこを突くよー」
虎視眈々とマコトとツチヤが競り合っている隙を狙うヨーコであった。
バックストレートを走る3台だが、ツチヤ1号車の伸びが良くマコト4号車に追い付いていく。
「く! やはりツチヤのほうが伸びがいいか!」
マコトが苦々しげに吐き出した。1Mでもこの伸びがあるからこそヨーコに捲られなかったのだ。
「さあ2M勝負だ、ヒビノ!」
ツチヤが気合十分で声に出す。
「それでもターンでは負けない!」
気合ではマコトも負けていない。そのまま2Mターンのためのブレーキングに入った。マコトのほうがツチヤより奥でブレーキングを始める。
マコトは得意のブレーキングドリフトだ。ツチヤはそれを見ながら差しに構える。ぶれることなく王道であるセオリー通りの差しだ。
「そりゃー!」
マコトは掛け声とともにそのままブレーキングからのドリフトに入り2Mを勢いと共に廻る。ターン半径は大きいがマコトのターンスピードは42期生一速い。ブレーキングドリフトが出来るようになった仲間内でも一番速いのだ。
ツチヤがその速く大きく廻るマコトに対し、小さくすばやくサイドターンでマコトの内を差し2Mを廻る。
マコトの内側を差すのでマコト4号車が排出する残留魔力を吸い込むことになる。しかし一番吸い込まないで良いベストな角度でツチヤは差したのだ。
それでもマコトの4号車の内側に1号車のノーズがかかるかどうかだ。
「く! さすがにターンが速い。しかし直線は俺のほうが速いんだ。2周目1Mでさらに勝負だ!」
ツチヤがそう口にした通り、2周目ホームストレートでマコトの4号車にじりじり追いついていく。
その一方でヨーコはツチヤとマコトにしっかりついてきていた。2Mはバックストレート大外からツチヤ1号車とマコト4号車の間を、全速を乗せたドリフトで差し抜けていたのだ。
レース中で他車と絡むとどうしてもラインが制限されたり、思うようにターンができないことが多々ある。
しかし、バックストレートで大外にいたヨーコは誰に邪魔されることなく思いっきりブレーキングドリフトで2Mをターンできたのだ。
「まだまだついて行くよー!」
ヨーコは慌てることなくしっかり2Mをターンしマコトとツチヤについて行く。ツチヤ1号車が外のマコトのほうへ車を寄せるように斜行していくので、ツチヤ1号車と場所をスイッチするように内側へとラインを変えていた。
ツチヤ1号車の排出する残留魔力を吸い込みはするが、直線で加速しきった速度では影響はとても小さくて済むのだ。
ものを動かす時を考えてみて欲しい。止まったときのものを押して動かすときと、すでに動いているものを押して動かすのでは必要な力が違うはずだ。
すでに最高速付近まで加速した状態ではさほどパワーはいらず、それよりもターン時などの減速してからの加速時のほうが車のパワーを使うのだ。
その1Mを立ち上がって加速するパワーの必要な時に残留魔力を吸うと、その少しのパワーダウンでもターンマーク立ち上がり時の加速に大きな違いを生じさせるのだ。
外側からマコト4号車、ツチヤ1号車、ヨーコ5号車の順で半車身ずつ段々になりながら2周目1Mに向かうのであった。




