第四十二話 リベンジ①
投稿が遅くなり申し訳ありません。
マコトの独り言にゲート離れおよび1M展開の図説を追加しました。
「マコトー。出走表見たー? 」
「おう」
ヨーコが言っている出走表とはレースの組み合わせ表の事である。模擬レースなので詳細情報は乗っていないが、誰が何号車に乗るか書いてある。
マジカルレース場でもお客さんに出走表が配られるのだが、各レース、各選手について詳細な情報が載っている。勝率や平均スタートタイミングといった成績から級や年齢、出身地なども載っているのだ。
「一緒のレースだね」
「おう。俺が4号車,ヨーコが5号車だな。」
「うん。それに、1号車はツチヤ君だね。」
「おう」
ヨーコが含みを持たせるように言った。俺がツチヤへのリベンジに燃えていることを知っているのだろう。
話したことはないのだが、ヨーコはよく俺の考えていることが分かるようだ。エスパーヨーコだしね。
「そういえばヨーコは俺がツチヤに直接負けたときに、敵を取ってやると言ってたよな?」
「うーん、そう思ってたけどツチヤ君なかなか前を走らせてくれないんだよねー」
「じゃあ、今日こそツチヤを抜いてやるか」
「そうだね!」
ヨーコと二人で打倒ツチヤを誓うのであった。
模擬レースが始まり4号車に乗り込むときにちらっとツチヤが見えた。ヘルメットから見える目が笑っているようだった。
いつもすましている奴だがやはりレースは楽しいのだろうか。いや、そりゃ楽しいよね。こんなに楽しいことはないくらいだ。
じゃあ、ちょっと楽しむ余裕がないくらい攻めてやるか! そう思ってふと逆側の5号車を見るとちょうどヨーコも乗り込むところで目があった。
ヨーコもうん、とうなずき乗り込む。やる気は十分の様だ。よし、やってやるか! 俺も気合を入れなおして4号車に乗り込んだ。
俺たちは各魔導車に乗り込みゲートまで移動する。ゲートで各車ジャッキで後輪を上げられ発進灯の点灯をまつ。
ジャッキは油圧で発進灯の点灯とともに一斉にストンと降りるようになっている。準備灯が点灯し他の車同様俺も回転数を上げながら待つ。
発進灯が点灯しジャッキが一斉に降り俺は4号車を発進させた。
「よし、ゲート離れも大丈夫だ」
遅れることもなく発進できたと思って内側を見た。
「あ、3号車がゲート離れ失敗してる。じゃあ、ひとつ内側をもらいますよ、と」
俺は2Mを廻るときに遅れた3号車の前に出るようにステアリングを切った。それに続くように4号車のヨーコと5,6号車も詰めてきていた。
行き場をなくした3号車は仕方なく6号車の外に車を向ける。そして2Mを廻り各車コースに入って行った。
3号車が外に出る形になったので俺は3コース、ヨーコが4コースに入った。スタート隊形はスロー1,2,4号車、ダッシュ5,6,3号車の124/563の隊形だ。
このようにゲート離れで遅れてしまうと外のコースになってしまうのだ。内側有利なマジカルレースにおいてゲート離れもとても重要なのだ。
各車コースインし大時計の針に六つの視線が注がれる。大時計の針が進みダッシュ5,6、3号車が一斉に加速を始めた。
続くようにスローの1,2,4号車も加速を始める。光る残留魔力をまき散らすように6台はスリットを切った。
スリット隊形は1,4号車が先行する中凹み隊形だ。マコトが声を上げる。
「やっぱ、ツチヤとヨーコはスタートが早い!でも俺よりも2号車のほうが遅れてるな」
2号車がマコトよりもスタートで遅れていた。マコトからもツチヤの1号車が見える。
「む、ヒビノとアマノさんが覗いているな」
ツチヤがスリットから4,5号車が覗いているのを見てそうつぶやいた。マコトより1/3車身ツチヤとヨーコが前におり、2号車とマコト4号車はさらに半車身差がついている。
そのまま1Mをターンするためブレーキングに入る。
「マコト、悪いけど捲らせてもらうよ!」
ヨーコが気を吐きながらそのままステアリングを切り込み、マコト4号車を押し込むようにブレーキングドリフトに入る。
「くっ! ヨーコに捲られてたまるか!」
マコトもヨーコに合わせるようにステアリングを切り込み、捲らせまいとブレーキングドリフトに入る。そのまま2号車を頭を叩きながら4,5号車が1号車を捲りに行く形になる。
「アマノさんもブレーキングドリフトか!? やっかいな! それでも捲らせない!」
ツチヤ1号車が捲らせまいと早めにアクセルを踏んでターン半径を大きくしながら2台をブロックするように廻ろうとする。そのアクセルを踏んだ瞬間をマコトは見逃さなかった。
「そう来るよな!」
ツチヤがアクセルを踏むのを見たマコトは左足でブレーキを踏んだ。ドリフト中に前荷重になった車はさらに内を向く。
「ここだー!」
そのままツチヤ1号車とターンマークの間を突き抜けた。ヨーコ5号車はツチヤ1号車と張り合うように1Mをターンしていた。
「マコトすごい!」
「く! ヒビノの捲り差しか!」
最近のマコトが得意とする捲り差しだ。さらにこれは捲りから捲り差しに変化するとてもレベルの高い捲り差しになる。
ヨーコが驚くのも無理はない。マジカルレース車両はアンダーパワーのせいでドリフト中にアクセルを抜くと、パワーがないせいで再びドリフトに持ち込めない。
このせいで捲りに行くドリフト中にアクセルを抜いて向きを変え、さらにドリフトに持ち込むことが不可能なのだ。
もしドリフト途中でアクセルを抜いたならば空転中のリヤタイヤはグリップを取り戻し、エンジンの回転数は落ちてしまい1M立ち上がりでの十分な加速を得られなくなってしまう。
ドリフトはエンジンを高回転で維持するためのテクニックでもあるのだ。これが理由でドリフト中に向きを変えるのは困難だというのがマジカルレースでの常識なのだ。
「行くぞー!」
マコトは気を吐いた。ツチヤにリベンジするため捲り差しを練習していたのだ。そのまま各車1Mを立ち上がって加速していった。次の2Mを目指して。
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マコトの独り言
今回の3号車のゲート離れの失敗を図にしてみたよ。
こんな風にゲート離れで失敗すると外のコースになってしまう。
ゲート離れで失敗することもあれば、逆に魔導車の機力でゲート離れよく飛び出すと一気に内側のコースが獲れるということでもあるんだ。
いわゆるゼロ発進とかゼロ加速とか言われる車の機力がいいんだね。今回は3号車が失敗してくれたおかげで俺が3コースに入れたわけ。
次が今回のスリット隊形の図だよ。
隣の2号車が遅れていたからヨーコが押し込むように捲りに来たんだ。2号車が凹んでいなかったら2号車にひっかかって捲れてなかったよ。
もし、このまま捲っていたら次のようになってたんだ。
ツチヤ1号車に張られるように俺とヨーコの4号車、5号車は外を廻らされていた。だけど、俺はそれを左足ブレーキを使うことで捲り差しに変化したんだね。
そのままターンマークとツチヤ1号車の間を突き抜けたわけ。このままツチヤを抑えて1着獲るぞ!




