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マジカルD ~異世界でも横滑り~  作者: 咲舞佳
第二章 マジカルレーサー養成学校編
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第三十九話 マコトのドリフト講義②


最後に一文追加しました。

「次はクラッチ蹴りだね。これもフェイントと同様リヤタイヤへの荷重を抜かずに、タイヤのグリップ限界を超えさせてテールスライドを誘発させる方法だ。やり方は全開加速時にクラッチをまさに蹴りつける。」


「蹴るの!?」


「そういうのならあたいは得意だぜ!」



ヤマダが驚きながら聞き返し、ナカタさんが珍しく食いついた。蹴るという言葉だけに食いついてるんじゃないよね?



「そう、蹴るんだ。要はクラッチを切ってすぐつなぐってこと。そうするといきなり動力を失ったタイヤにいきなり動力をつなぐことになって、リヤタイヤが空転を始めるんだ。停止状態から回転数を上げていきなりクラッチをつなぐのと一緒だね」


「勉強になります! 」



 タカハシさんが目を輝かせながらメモを取っている。試験の時もそうだったが結構なメモ魔だ。とてもいいことだよね。



「だけど回転数を上げた状態からじゃないとできないから、減速時とかだとやらないね。無理やり回転数あげてやれなくもないけど。やるのはアクセル全開時の直ドリがメインになるね」


「僕にはちょっと無理かなー」


「さすがにそれは真似できないな」



 ヤマダとダイスケが無理無理と首を振る。俺はあはは、と苦笑いをしてしまった。



「さすがにこれは真似しなくていいよ。直ドリは危ないしレースでの使いどころがほぼないよね」


「でもマコト使ってたじゃん」


「あれは緊急回避だったからね」


「確かに」



 ヨーコの指摘に応えるとダイスケが納得してた。



「次にパワースライドだね。これは簡単なんだけどちょっとマジカルレース車両では無理かな」


「なんで?」



 ヨーコが聞いてくる。



「文字通りパワーが必要だから。コーナー、というかターンマークをグリップでターンしたとして、立ち上がるときにアクセルをいきなり全開で踏むんだ。そうすることでいきなりリヤタイヤに駆動力がかかるから、リヤタイヤのグリップが限界を超えて空転を始めるってわけ」


「なるほどー」


「だから90ps程度しかないマジカルレース車両ではちょっと無理ってこと。だけど、ウェットコンディションならできるから試してみるといいよ。なにかしらの役に立つはずだから」


「分かった。やってみる!」


「俺も」

「僕も」

「私も」

「あたいも」



 ヨーコに続き皆が返事をする。ナカタさんはほんとに分かったのかなー、っていうのが顔に出てたらしい。



「分かってるって。アクセルどーん! と踏めばいいんだろ? 」


「そうだね」



 はい、おっしゃる通りです。まあナカタさんも言葉より体で理解するタイプだから体に教えればいいか。なんか言い方がやらしいな。と思ったらエスパーヨーコにまた睨まれた。



「ごほん。最後に慣性ドリフトだ」



 俺は咳払いをして始めた。何もごまかしてないよ? 俺は潔白だ。



「そうそう、それが一番知りたかったんだ」



 ヤマダが食いつく。



「ああ。慣性ドリフトは究極のドリフトと言われている」


「なんで?」



 ヨーコが聞いてくる。



「一番速いドリフトだからだ。しかしやれるところが限られていてサーキットとかの100R以上の高速コーナーなどで可能なんだ」


「Rって?」


「コーナーの半径の事だよ、ヨーコちゃん」



 ヨーコの疑問にタカハシさんが答える。コーナーに合わせて円を描いたときの半径の距離になる。100Rと言えば半径100mの円の曲率を持つコーナーというわけだ。コーナーの大きさを表すのに使う。



「で、何故100R以上の高速コーナーじゃないとできないんだ?」



 ダイスケが聞いてくる。



「なぜかと言うとだいたい100Km/h以上出るようなコーナーでアクセルを緩めたり、それこそぽーん! と離したりして行うんだ。すると高い速度で横Gがかかり、外側のタイヤに荷重がかかっていたのがアクセルを抜くことで前荷重になる。そうするとリヤタイヤの荷重が抜けてテールスライドを起こすんだ。フェイントのときと逆だね。リヤの荷重を抜いてから横に力をかけるのか、横に力をかけてからリヤの荷重を抜くかの違いというわけ。」


「なるほど。」


「あのあの、でもそれって危なくないですか? そんな高速コーナーでドリフトするんですよね?」



 ダイスケが納得したところでタカハシさんが聞いてきた。



「確かに通常のレースカーだと危ないね。それこそドリフト用にセッティングしてないとコントロールがものすごいシビアだね。」



 タカハシさんに応えるとすかさずダイスケが聞いてきた。



「まるでやったことあるような口ぶりだな」


「え、いや、あるわけないじゃん」


「ま、そうだよな」


「そうだよ、あははー」



 あぶないあぶない。前の世界でやったことあるなんて言えない。ふと見るとヨーコが、んー? て顔でこっち見てる。


 俺は明後日の方向を向いてヨーコと顔を合わせないようにした。これ以上下手なことを言わないように。まあ、文字通りやったことあるだけでやってたなんて言えないけどね。



「はい、以上が7つのドリフトのきっかけについてだよ。で、最初の話に戻るね。ブレーキングドリフトを教えて欲しいということだったんだけど、どんなドリフトをしようにも荷重移動が大事なんだ。前に荷重をかけるか、横に荷重をかけるかだね」


「なるほど、すべてドリフトの基本は荷重移動ということだね。そしてその練習を梅雨で雨が多い今この時期で行うということ?」


「その通りだよ、ヤマダ」



 さすがヤマダ、話が早い。



「なんでこの雨の時期に練習するといいの?」



 ヨーコが聞いてくる。



「車の挙動というのは低い路面μでは同じ挙動でも低い速度で出るんだ。だからウェット路面で荷重移動してテールスライドしたときの挙動は、そのまま速度が違うだけでドライ路面でも同じ挙動になるんだ」


「あのあの、つまりは練習しやすい時期ということですね?」


「その通りだよ、タカハシさん」


「なるほどー」



 ヨーコが納得する。



「あたいも分かるぜ。雨の日はよく滑るから慣れておけば晴れてる日でも滑ってもあせらねーんだ。」


「簡単に言うとそういうことだね。」



 やはりナカタさんは感覚で分かるようだ。



「さー、では早速明日の実技課業で練習しようか」



「おう!」

「うん!」

「はーい!」

「はい!」

「やってやんぜ!」



 皆がそれぞれ返事をする。さて、それでは皆で特訓しましょうか。


 それにしても何でそんなこと知ってるのとか突っ込まれなくて良かった。それともやっぱり異常な変態、じゃなかった変態的に異常と思われてるんだろうか? それはそれで問題だ、と俺が密かに悩んでいたことは誰も知らない。






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