第四話 マジカルレーサー試験始まる
マコトの独り言に変更しました。
マコトの独り言に追記しました。
学校で相変わらず窓から魔導車を眺めているとヨーコが声をかけてきた。
「マコトー。あんた本当にマジカルレーサー試験受けるの?」
「おう。」
16歳になった俺はマジカルレーサー養成学校の試験を受けると決めている。そのための準備もしてきていた。
「受かったら学校辞めるってこと?」
「おう。」
マジカルレーサー養成学校は文字通り学校であり試験に受かったならば現在通っている高等部は中退しなくてはならない。
「そっかー...。じゃあ、あたしも受ける!」
ヨーコが唐突にそんなことを言いだした。
「は?なんで!?」
「あたしも前から興味あったんだー。」
「いや、レーサーになったら学校辞めるんだぞ!?」
「それさっきあたしが聞いた。」
「いやいや、ちゃんと考えろって!」
「うっさいなー。もう決めたの!」
「いやいやいや、でもまてよ。受かるとも限らないし受けるだけならいいの...か?それでも...いやいやいや。」
「じゃあ、試験の詳しいこと後で教えてねー。」
「ちょ、まてよ!」
前の世界の国民的アイドルみたいなことを口走ってしまったが、ヨーコはそのまますたすたと行ってしまった。そんなに軽く決めていいのか?
実は試験資格に男女の制限はない。前の世界では男尊女卑といった考え方があると思う。
しかしこの世界では魔力が使え魔法が強かったならば、男女関係なく活躍してきた時代背景があり男女平等が当たり前といった考え方のようだ。
それでも筋力差や体格差など男女の体の作りから差が出る部分もあるのでまったく平等ではないといえるだが、マジカルレースにおいて魔導車は自分の魔力で動くがゆえに男女の体の作りの差だけでは語ることができない。
ヨーコは男勝りで即断即決、部活はチアリーディングをやっており運動神経もよく頭も決して悪くはない。というかむしろ俺より良い。
中等部時代はチアリーディング部主将としてメンバーを全国へ連れていくほどのリーダシップもある。確かに負けず嫌いでレース向きの性格をしているかもしれない。
容姿もよく実はかなりモテるほうなのだが、肝心の色気がないため浮ついた話は聞こえてこない。何かと俺にちょっかいを出してくるが幼馴染ゆえの気楽な関係だ。
よく幼馴染とかいうと「お前らつきあってんの?」とか言われるのがどこの世界でもお決まりだが、そんなことはなく長い間一緒にいると妹か姉のような感じに近い。
時には姉のように世話をやいてきたり、時には妹のように手がかかったり。
確かに小さい頃はヨーコも一緒によく魔導車を眺めていたしマジカルレースにも一緒に何度も見に行っていた。お隣なので両親も仲が良い。
しかしこの2,3年マジカルレースどころか一緒に何かするということ自体が少なくなっていった。
思春期というのもあるし、やはり男の子と女の子の趣味嗜好は大きくなるにつれて変わってくるということだろう。
そう思っていたのに急にマジカルレーサーの試験を受けるとか言い出すからそれは驚くよ。まあ即断即決のヨーコだから何を言ったところで無駄なのはよく知っているのだけれども。
それでも試験倍率50倍もの狭き門だしそんな簡単に受かるもんでもないしいっかー、なんてそのときは思ってました。
まさかあそこまでの才能があったとは思いもよらなかったわけで。それは後で分かっていくことだけれども。
マジカルレーサーの試験内容は大きく分けて四つある。一次試験の学力試験と体力試験そして二次試験の実技試験と面接だ。
学力試験は一般知識についてで中等部までの学習内容が出題される。俺の高等部での成績は並よりいいくらいだが試験のためにしっかり勉強しておいた。
体力試験はスポーツテストみたいなものでマラソンやらボール投げやらの測定試験となっている。
俺の運動神経は人並なのでこちらのほうが心配なのだが、これも試験に向けて走り込みなど体力づくりをしてきている。
実技試験は実際に魔導車を使っての試験となる。16歳であれば普通は免許を持っていないので初めての運転となる。
初めてで試験も何もないだろうと思うかもしれないが初めてだからこそ呑み込みの早さやセンスが試されるということのようだ。
面接は多くの人が苦手というかもしれないが前の世界で面接は慣れており、聞かれることと言いたいことをしっかり頭に入れておいて受け答えをはっきりすることが大事だ。
この内容はきっちりヨーコにも伝えているし試験要項も取り寄せさせているので問題ないだろう。
だいたい落ちたほうがヨーコのためかもだし、そもそも学力も運動神経も俺よりいいのだから他人の心配をしている場合でもない。
まあ、心配する必要もなかったのだが。
あと、俺の両親に学校をやめてマジカルレーサーになりたいと話をしたときにこういわれた。
「よく言った!絶対マジカルレーサーになるんだぞ!」
と父親は大賛成の様子。
「大丈夫なの?あんた頼りないところあるから。」
母親には心配された。
ちなみにヨーコの両親はこう言っていたらしい。
「ヨーコが決めたことなら私たちは反対しない。応援しているよ。」
「がんばりなさい。」
だそうだ。何この違い。
いよいよ試験当日となった。俺は迎えに来ていたヨーコとともに試験会場に向かうため魔電車に乗り込んだ。
魔導車があるのだから魔電車もある。正式名称は魔導電車だが魔電車と呼ばれている。
前の世界の知識から言うと電車を魔改造していたり魔界とかに行きそうな名前だがここでは魔とつく名前は普通だ。
地名とかにも平気でついてるし。やっぱりファンタジーだ。
さすがに試験会場に近づくにつれどんどん緊張してくる。前の世界でも高校、大学、就職と試験を受けてきたが、いつどんなときどんな場所でもこの緊張感は変わらない。
もちろん異世界でもだ。ちなみに試験において俺は未だ失敗したことがない。といっても俺が優秀だからということではなく、身の丈にあったところを受けてきたというだけだ。
しかしそれでも失敗なくやってこれたのはやはり本番に強いということかもしれない。まあ、それでも緊張するものは緊張するわけで。
電車の中で緊張しているのを気づかれないようにヨーコに話しかける。ガチガチに緊張しているところをからかわれそうだから。
「それにしてもほんとにヨーコも試験受けるんだな。」
「あたりまえでしょー。決めたって言ったよね。」
ヨーコの決意は固いらしい。何故いきなりそんな大事なことを決めれるのかは俺には理解できないが。
ヨーコにはヨーコなりの考えがあるのだろう、そう思うことにした。
試験会場に着き、建物に入り着席するころには緊張感もここに極まってきた。緊張を紛らわせようと周囲を見渡すといろんな人が試験を受けに来ていた。
明らかに身なりのいい人、眼鏡の真面目そうな人、おとなしそうな女の子もいる。パッと目が合った目つきの鋭い女の子から「あ!何見てんだてめー。」っていきなりすごまれた。
おおう、ヤンキーがいた。いかにもなロングスカートはいている。スケバンというやつだ。昭和の時代はこういうヤンキーが普通だったなー。
そういえばスケバンなのに刑事もいたなーなんてとりとめのないことを考えてしまった。
というか暴走族というのもこの世界にいる。魔導車もあれば魔導二輪車もある。その暴走族あがりだったり元ヤンキーの人もごくわずかだがマジカルレーサーにいる。
もともと魔導車や魔導二輪車を乗り回していていたから適正は高いのかもしれない。無免許だけど。
しかし、マジカルレーサー試験はちょっとやそっと魔導車を動かせるからと言って受かるような生易しいものではない。
単なる元暴走族や元ヤンキーが受かるようなものではないのだ。マジカルレーサーに受かった人もよほどの努力をしたのだろう。
このヤンキーの娘もきっと努力をしてこの試験会場へとやってきたはずだ。という生暖かい目で見ることにした。
こっちも緊張してていきなりすごまれると心臓バクバクいってるもんで。
しっかりと試験対策はしてきたし体力作りもしてきている。実技においては絶対の自信すらある。
大丈夫なはずだ、気持ちを切り替えて試験に望もう。そう思っていたんだけど。
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マコトの独り言
〇電気について
この世界にも電気はある。動力があるなら電気を発電するのは簡単だ。発電機を回せばいいのだから。内燃機関同様の内圧機関が発明されている世界である。発電機、モーターも当然のように発明されていた。
前の世界の発電所もいわばでっかい発電機を廻して電力を作っている。要は発電機を廻す力を何にするかだ。火力、水力、風力、原子力と。この世界ではそれが魔力だっただけの話だ。
〇魔導二輪車について
魔導二輪車はマジカルバイクといい、略してマジバイとこれまた若い子の間で呼ばれているらしい。魔導車もマジカルゴと呼ぶし名前だけ聞いたら何の乗り物か分からないよね。何度も言うが俺もまだぴちぴちの16歳なのでおじさんではない。