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マジカルD ~異世界でも横滑り~  作者: 咲舞佳
第二章 マジカルレーサー養成学校編
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第三十六話 マコトvsツチヤ②

 捲り差しを食らってしまうとは。心の中でぎゃふん!と言いながら俺は横に並ぶ4号車のツチヤを見ながら1Mを立ち上がる。


 もちろん口には出してないよ? 漫画じゃあるまいし。でもこれが口癖な人が前の世界にいたなー。まさに漫画の読みすぎだなって思った。



 スタートしてスリットを過ぎる頃にはツチヤが前にいたんだ。2,3コースが段々で遅れていて1コースの俺からは4コース4号車のツチヤが丸見えになっている。


 スリットで横並びなら隣の2コースの魔導車に遮られて3号車から外の車が重なって見えない。しかし、このようにスタートで遅れた車がいると外側の車が見えるのだ。


 まるで覗かれているように。なのでこのようにスタートで前に出ることを覗くという。4コースツチヤがスタートで覗いた状態というわけだ。



 さらにツチヤの4号車は伸びるのだ。さらに前に出てきた。



「やばっ! 捲られる!」



 思わず口に出しながら俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そう、先にターンマークに車を向けてからブレーキングに入ったんだ。



 これは1コースで捲られそうになったときによくやるターンだ。捲られるということは残留魔力アフターマナを吸うということだ。


 残留魔力アフターマナを吸ってしまえばパワーダウンして1Mの立ち上がりで間違いなく置いていかれてしまう。


 そうならないように1Mのターンで外に膨れるのを承知で先にターンを、先マイをしようというのだ。さらに俺にはブレーキングドリフトがある。


 ブレーキでツチヤよりも詰めれるし先にターンマークに車を向けることで捲られるのを防げるはずだ。とは思ってました。


 でもターンで膨らむとも分かっていたので、あとはターンスピード頼みでなんとかなるかなーと思っていたら捲り差されてしまいました。


 ぎゃふん。おっとまた出てしまった。まあ、頭の中では自由だよね。もちろん捲り差しのことも知っている。マジカルレースで上に上がるためには必須の技術だ。


 やっぱりツチヤも出来るんだなー。さすがキングの息子といったところか。感心してる場合でもないな。次の2M勝負が待ってる!



 マコトは並走する4号車ツチヤを目の端に捉えながら2Mを睨みつけた。





 ツチヤはスタートのときにスリットでマコトより前に出ていることは想定済みだった。



「ここからだ。」



 スタート行ってスリットで前に出たら1号車のマコトがどうするかも事前に想定してあった。マコトがターンマークに向けてステアリングを切るのを見てツチヤもステアリングを切り始める。



「当然捲られないように先マイするよな。そしてブレーキングターンだ。」



 ツチヤはマコトがブレーキングターンをしていることに当然気づいていた。外に膨れるようにターンするマコトを目の端に捉えながら、ツチヤはターンマークを凝視して離さない。



「ここだ! 」



 2,3号車を捲りながら1号車のマコトの内側、ターンマーク際を差し抜けたのだ。それこそターンマークすれすれをだ。


 狙いすました捲り差しだった。マコトの動きを予測しあらかじめ狙っていたのだ。さらにマコトの車の動きを見て即座に反応した。


 単に捲りに行っていたならマコトの1号車に張られるように一緒にターンで膨れていってしまっただろう。ツチヤはブレーキングターンの半径が大きく、それが弱点になりうることも既に分かっていたのだ。



 ツチヤはそもそもブレーキングターンは脅威だと思っていた。やはりヒビノは凄いやつだと思った。しかしそれでもツチヤはマジカルレースにブレーキングターンは必要ないと考えていた。


 ブレーキングターンは確かに速い。しかしその分ターン半径が大きくなっている。それならこちらはサイドターンをよりロスなく廻り早く立ち上がればよいだけのことだ。



 ツチヤは今までのマコトのレースを見てそう結論付けていた。しかし言葉にすれば簡単だがそれができるのはマジカルレース界でも限られているだろう。


 ツチヤはそれができるまさに限られた中の一人なのだ。それにマジカルレースはターン力だけではない。スタート力と機力と魔力、そして道中の競り合いの技術も必要だ。


 それがお前にはあるか? とツチヤは心の中でマコトに問うのであった。





 白いゼッケンの1号車マコトと青いゼッケン4号車のツチヤが並走してバックストレートを駆け抜ける。ツチヤ4号車のほうが伸びが良くじりじり前に出る。


 伸びが良いといっても元は同じ車両だ。引きちぎるほどの差は出ない。それでも同じ車両だからこそこの差が大きな差になるのだ。元が同じ車両ならその差はあとは自分の技術で、腕で補うしかないからだ。



 半車身も前に出ようものなら外側なら内側に押し込もうとできるし、内側なら外側を完全にブロックして先マイできる。()()()()()()()()()()()()



 ツチヤがバックストレートで半車身伸ばしてそのまま先マイする。これが通常なら外側の車は差しを選択するのがセオリーだ。


 先マイした車がミスをしたりなんらかの理由でターンが膨らもうものなら内懐に届くからだ。ノーズが少しでも届こうものなら次のターンマークで内側有利にねじ込むことも可能になる。



 しかしマコトはそうはしなかった。ブレーキングで詰めてツチヤとノーズをそろえながらのブレーキングドリフトだ。


 そのままツチヤ4号車にツケマイを仕掛ける。



「はい、行っくよー! 」



 マコトが気合と共に口から言葉を吐き出した。



「やはりそう来るのか。」



 ツチヤはそれを見ても冷静にサイドターンをする。決して慌てたりそこれそミスなどありえないといった様子さえみせ2M際を廻る。カウンター量を少なく立ち上がりも速い。



 ターンインでツチヤにつけ廻るマコトだが、そのターン半径の大きさでツチヤから離れるように2Mを立ち上がって加速して行く。

 

 それでもさほど差がない状態でバックストレートを加速していた。マコトのターンスピードがものを言ったのだ。



「よし! まだまだこれからー! 」



 マコトのモチベーションは全く下がらず上がる一方だ。



「やはり速いな。」



 落ち着いたままのツチヤだった。しかし、バックストレートで見せた伸びでマコトより前に出ていくかと思われたが、さほど差がつかず2Mに向かって行った。


 これはターンマークがそれぞれターンイン側に振られているせいによる。小さく廻ったツチヤはコースに対して斜行しているが、大きく廻ったマコトはコースに対してまっすぐ進んでいたのだ。



 並走状態で2周目1Mに突入する。



「もいっちょー! 」



 マコトがブレーキングでツチヤより前に出た。そのままブレーキングドリフトに入ろうとしたその時だった。



「させない! 」



 ツチヤがブレーキリリース量を調整し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。サイドターンは速度をある程度落としても、リヤに多少荷重が残っていてもサイドさえ引けば出来るのだ。



「ぐっ! ステアリングが入れらないっ!?」



 マコトはステアリングが切れず減速しすぎでブレーキでのテールスライドを誘発できなくなった。 要はツチヤがマコトのブレーキングターンをブロックしたのだ。



「お先だ。」



 ツチヤが先にサイドターンで1Mを廻る。



「こなくそ! 」



 思わず前の世界の地元地方の方言を口にしながら仕方なくマコトもサイドを引く。それでもツチヤにツケマイを行おうと外を廻った。


 しかし、速度が乗っていない状態での単なるサイドターンでは届くべくもなかった。



「おわー! やられたっ! 」



 マコトは主人公に倒される雑魚キャラのような声を上げた。そのままツチヤに先行を許してしまったのだ。



 バックストレートでツチヤと1車身差外側をマコトは疾走する。それでもマコトはあきらめない。そのまま2周目2Mへと向かう。



 ブレーキングで詰めようとするがまたもやツチヤにタイミングを合わされてしまう。それならと今度は差しに構える。ツチヤがそれを見て口を開く。



「それじゃあなおさら届かないな。」



 それでもマコトはツチヤの残留魔力アフターマナを直角に突き抜けた。しかしツチヤのサイドターンはロスが少なくブレーキングでも半車身は前にいたのでマコトがツチヤに届くことはなかった。



 マコトに為すすべはなかった。



「くそー! これがキング直伝の走りか! 」



 マコトは悔しさのあまり叫んだ。ブレーキングドリフトで他の同期を圧倒していただけに、少し得意になっていたのだ。しかしツチヤの走りを見て感動していた。


 こうでなくては! ブレーキングドリフトだけで勝てるようなら面白くもなんともない! その他の技術も必要なのだ! そしてさらにターンに磨きをかけるんだ!



「よーし、次みてろよー! 」



 ツチヤ4号車の丸目四灯のテールランプを目に焼き付けながら宣言するように声を上げた。マコトより先行し、サイドミラーでマコトの1号車を見ながらツチヤがつぶやく。



「ヒビノ、お前はそんなものじゃないはずだ。次も楽しみにしておくよ」



 そのまま三周目を廻りツチヤとマコトは1,2着でゴールした。





 そのレースを建屋最上階の校長室から一部始終見ている者がいた。校長のイノキだ。



「さー、これがマジカルレースだ。ヒビノマコト、どうする? これで終わってはつまらないぞ? 」



 言葉とは裏腹にその目は期待に満ちているようだった。



「さて、模擬レースは皆やっとまともに走れるようになったところだ。今後どうなるか見ものだな」



 走り去るマコトの車に鋭い眼光を向けたあと一人静かに自分の椅子に深く腰を下ろすのだった。




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マコトの独り言



 

 マジカルレース場のターンマークがそれぞれオフセットしているのは以前話したと思う。俺とツチヤの2Mターンでの軌跡を図にしたので参考にしてみて欲しい。



挿絵(By みてみん)



 俺がコースに対してまっすぐに走っているのに対して、ツチヤが斜めに走っているのが分かるはずだ。しかし、ツチヤとしては最短となるように走っているので、走行距離が長くなっているわけではないんだ。


 結局俺のターンが速く立ち上がりで並んだために直線部分の距離に差が出たという話なんだ。




 





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