第三十二話 マコトvsミヤモト②
誤字脱字を修正しました。
マコトとミヤモトがもつれて第二マークへ向かうシーンから少し時は遡る。
模擬レースであのヤなケンことミヤモトケンと同じレースを走ることになった。レースを走る前にダイスケに気を付けるように言われたけど、何してくるか分からないし臨機応変に行きますか。
人はこれを何も考えてないと言う。いや、何か先に対策が打てるならそうするけど今のところ何もされてないしね。
ミヤモトが1号車で俺が4号車だ。魔導車に乗り込みゲートにて発進シグナルを待つ。なんか1号車から負のオーラ的なものを感じるのは考えすぎだろうか?
発進シグナルが点灯しゲートから発進してそのまま全開加速で第二ターンマーク(以降2M)へ向かう。ここで発進に失敗すると4コース獲られてしまうからね。
ゲートからの発進加速の良し悪しの事をゲートから離れるという意味でゲート離れが良い悪いっていうんだ。
これも一つの魔導車の性能なんだ。ゲート離れが良いとコースインするまでの待機行動で内側の車より内に入れればその分内側のコースに入れるかもしれないし、逆に悪ければ外側のコースになってしまうかもしれないというわけだ。
内側有利なマジカルレースにとって勝敗に繋がる大事な性能と言っていいと思う。
各車ゲート離れの性能差は特になく、そのまま2Mを廻ってホームストレートに出てくる。このときブレーキを踏んではいけないことになっている。
もし内側のコースを取ろうとするならそれだけ早くコースインしなくてはならないんだけど、ブレーキを使えば当たり前だけどコースを取ったところで車を停止させることができるからね。
内側のコースを取りに行くことを前づけというのだけれども、前づけするなら助走距離を削るリスクを背負わなくてはならないということなんだ。
1号車のヤなケンが2Mを廻ってホームストレートに出てすぐに1コースに入る。誰も前づけに動かないから当然だけど。枠なり進入というやつだ。
2,3号車が次々とホームストレートに入りスリットに正対することで2,3コースに入る。それを見届けてから4号車の俺は車をスリットの方向から反転させて距離を取り、スリットに正対してコースインするためにさらに反転する。
ダッシュスタートをするためだ。1~3コースはスロースタートになる。これもルールでは特に定められておらず、マジカルレース界の暗黙のルールになっている。
そもそも1~3号車がダッシュに引こうものなら後から来た4~6号艇にスッと1コースに入られてしまうからね。先にコースに入ったもの順なのだ。
何故ダッシュスタートがあるかというと助走距離を稼ぐためだ。なるべく助走距離をとったほうが最高速にのりやすく、またスタートタイミングが早かったときアクセルをアジャストしてタイミングを修正することができる。
助走距離が短いと再加速してから最高速に到達するまでの助走距離が足りなくなるんだ。
さらにこの4コース、助走距離が長いダッシュスタートの一番内側なわけで。もし2,3コースがスタート失敗してアジャストしたり遅れたりすれば、全速で最高速に乗っている状態でスタートした4コースからは絶好の捲りのチャンスになる。
この4コースの事を4カドという。それに対してスロー3コースの事をカド受けという。このカド受けが仕事をするかしないかで1コースの車が逃げれるか逃げられないかが大きく影響するんだ。
3コースの車が遅れて4コースの車が捲ってきたら逃げて勝つのも危うくなるからね。3コースが4コースをきっちりブロックすることが逃げて勝つことにおいてとても重要なんだ。
まあ、もちろん4コースじゃなく3コースからや5コース、それどころか2、6コースから捲ることだってあるけどね。
大時計の針が進むのを全神経を使って集中して見る。時刻がせまり回転数を上げ始める。低い魔導エンジン音と振動が体に響く。
「ここだっ!」
狙った秒数でクラッチをつなげて加速を始めた。ほぼ同タイミングで5号車、6号車もスタートを始める。
スロースタート組がダッシュスタート組より少し遅れて加速を始めた。前にいるからね。加速を始めた後スタートタイミングを確認するための空中戦が、200m、100m、50mの地点のポールに張ってあるのでそこを通るときの大時計の針を神経を研ぎ澄まして見る。
200mくらいならまだアクセルをちょっとゆるめてタイミングを調整しアクセルをまた踏みなおして加速しても、スリットの時点で最高速に達することが可能だ。
しかし、残り100mやましてや50m付近で早い! と思ってアクセルを緩めようものなら再加速は間に合わない。スリットで最高速まで達することができずスタートタイミングはあわせれても最高速に乗った外のコースの艇に捲られてしまうだろう。
200m、100mと空中戦を目の端に捉えながら大時計から視線を外すことはしない。50mの時点での大時計の針を見て俺は思わず声に出す。
「よし、これはいける! 」
そのままスリットを通過した。横を見ると5,6号車はついてきていたが2,3号車が半車身ほど遅れている。
1号車のヤなケンはトップスタートだ。やるな。しかしその差は50cm程度だ。俺は「チャーンス!」と声に出しながら1号車のヤなケンよりワンテンポ遅れてフルブレーキングに入った。
2,3号車もすぐにブレーキングに入るが俺の4号車との差は1車身ぐらいに開いている。ブレーキングを他の車より遅らせているのでその分前に出たのだ。
2,3号車の頭を叩くようにステアリングを切り、そのままドリフト状態に入る。もちろんブレーキングドリフトだ。
1号車のヤなケンはセオリー通りのサイドターンだ。しっかり速度を落として1Mを小さく廻るつもりだ。さらに俺が2,3号車を捲って行こうとしているのを見てブロックラインを取ったようだ。
しかし、それじゃあ防ぎきれないんだな。なぜならこっちは速度を乗せてブレーキングドリフトに入っている。ターンのスピードが違うのですよ。
そのままヤなケンを抱きかかるようにそばにつけて廻りそのまま立ち上がりの加速でヤなケンの隣につける。
これは相手にぴったりつけるように廻るのでツケマイと呼ばれるテクニックだ。相手よりターン速度が速くないとできない芸当だったりする。
そしてこれこそが差し主体の今のマジカルレース界に俺なりに一石を投じるターンだ。差して相手の懐に飛び込めば確かにノーズさえ入れば次のターン有利になるだろう。
しかし、差しに廻ることで相手の排出する残留魔力を吸ってしまうのだ。もちろん一番残留魔力を吸い込まないでよい角度で差すことが重要ではあるのだけれども。
要はラインをまさにクロスさせるように直角に差すのだ。これに機力差、技量差などが加わることで差しが相手の懐に届く。
だが、単純に言えば残留魔力を吸う時点で相手より加速が鈍るのは当然なのだ。ではどうするか? 残留魔力を吸わないように外を廻ればいいじゃん! ってすんぽーです。
だが、そんなことは誰でも思いつくし実際レースにてやっている姿も見る。しかし成功はしていない。せいぜい半車身差でついて行くのがやっとである。
それを可能としたのがこのブレーキングドリフトだ。しっかり落としてサイドターンをする今のマジカルレースにおけるセオリーだと要はターンスピードは遅いのだ。
その分小さく廻り走行距離を短くすることで1周タイムを出しているのだが、外を廻って走行距離が長くなるならより速い速度でターンすればいいってことだよね! というのが俺の結論なのだ。
ブレーキを遅らせているということはそれだけ速度が相手より速いということだ。そしてそのままブレーキングドリフトにもちこむことでサイドターンよりも早いターンスピードを実現している。
これがドリフトではなく通常のグリップではもっと外にターンが膨らんでしまうのだ。
さらにターン速度が速いということはターン後の立ち上がりの速度も速いということだ。このブレーキングドリフトにて1号車のヤなケンにバックストレートで並んで見せたのだ。
俺はテンションが上がり叫ぶように口にした。
「まだまだ行くよー! 」
次の2Mを睨みつけアクセルべた踏みでバックストレートを加速していった。
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マコトの独り言
スロースタートとダッシュスタートのイメージ図を書いてみたよ。良かったら参考にしてみて。
空中線なんだけど、ワイヤーに小さな万国旗のような無地の旗がついてて風ではためくので、風のある程度の強さや風向きが分かるようになってるんだ。
非力なマジカルレース車両にとって強風はとても影響があるんだ。風の影響の話はまたレースの時にでもしようと思う。




