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マジカルD ~異世界でも横滑り~  作者: 咲舞佳
第二章 マジカルレーサー養成学校編
27/53

第二十七話 ある日の実技課業で②


誤字脱字を修正しました。


 練習走行から戻り車から降りるとわっと皆に囲まれた。



「ヒビノ! お前すげーな! 」


「あんなのどうやってやるんだ!?」


「あんなのできるならなんで今までやらなかったんだ!? 」


「そもそもどこでそんなテクニック身に着けだんだよ!? 」



 とかとか、いっぺんに質問されて圧倒されてしまう。すると後から来たワタナベ教官が一喝する。



「静かに! 」



 その一声で皆一斉に直立不動姿勢になる。



「ヒビノ、試験の時も聞いたがそのテクニックはどこで習ったんだ? 失敗するとタダでは済まなかったはずだ」



 皆の質問を代表するように聞いてきた。



「はい。以前も言いましたがイメージトレーニングのたまものです。ただ、今までの練習で部分部分でできるかどうか確認しながら走っていたので、できると確信を持ってやりました」


「確かに、計四つのターンマークですべて成功させて見せたのだからお前の言う通りだろう。しかし、あのドリフトは失敗すれば周囲を巻き込む危険なテクニックだ。一度我々教官にて持ち帰って検討するが、今後どうするかはその結果次第とする。沙汰が出るまではそのドリフトは禁止だ。分かったな! 」


「はい! 」



 ワタナベ教官は事故で選手生命を絶たれている。心配するのももっともかもしれない。またちょっとやりすぎたかな? しかし先に許可などもらえるはずもなく後悔はない。



「皆、各自の作業、練習に戻るように! 」



 ワタナベ教官の一声で皆蜘蛛の子を散らすように各自の作業に戻った。ワタナベ教官が去ったのを見届けたあとヨーコがすぐさま近寄ってきた。



「マコト! 心配したんだから! 危険なことやるならやるで最初から言ってよ! 」


「あー、すまん。でも最初から言うと危険なことは辞めろって言うだろ? 」


「そうだけど、そうかもしれないけど! 」



 ヨーコが地団駄を踏みそうな感じで怒っている。うーん、ワタナベ教官も心配していたがそれほど危険でもないんだけどな。慣れっこだし。初めて見るとやっぱり危ないように見えるかもしれない。



「まーまー、ヨーコちゃん。ヒビノ君も出来ると思ってやったんでしょう? 」


「ああ。さっき教官に話した通りだよ」


「やっぱりヒビノはすごいよ。アマノさんが心配するのももっともだけどヒビノなら大丈夫だよ」



 タカハシさんとヤマダがフォローしてくれる。



「うー」



 ヨーコが唸るように上目遣いでこっちを見る。



「ヨーコ、ごめんって。今度何かするときはもっとしっかり説明するから」


「わかった。ほんとにだよ? ほんとのほんとに説明してよ? 」


「分かった、分かった」


「あ、二回言ったから嘘だ」



 なんだその謎理論? と思ったがもちろん口にはださない。



「分かりました。約束します。絶対に次やるときは説明します」


「よし。じゃあ許す」



 ヨーコの顔に笑顔が戻る。やっぱりヨーコは笑顔が一番だな。こんなに心配させてしまったことに罪悪感を覚える。次はきちんと説明してからやろう。次があればだけど。


 ワタナベ教官に沙汰があるまで禁止と言われたからね。それにロングサイドなどの一発の直ドリはともかく振り返しての2発の直ドリはまずレースでは必要ないし。言いかた悪ければ単なる曲芸走行だ。



 俺と同じくして練習走行から戻ってきたダイスケやナカタさんにもマコトすげーな!とか、さすがアタイが見込んだ男だ! などと言われた。


 それから皆興奮冷めやらぬといった感じではあったが、教官の目もあり表面上は大人しく各自の練習を行いその日の課業は終了した。



 それから数日が過ぎたころ、練習用車両の整備をしているときだった。



「そこのきみ」



 目の下に傷がある、妙に迫力がある壮年のおじさんに声をかけられた。



「はい?自分ですか?」



 俺の事かと思い振り返って返事をする。誰だっけこの人? どっかで見たことあるんだけど?



「ずいぶんと魔導車を乗りこなせるようだが何かやっていたのかい?」



 この前の直ドリを見ていたらしい。教官や同期生の皆からよく聞かれていた質問なのでいつものように答える。



「いえ、経験はないんですがずっとマジカルレースを見てイメージトレーニングしてました」



 本当は前の世界でブイブイ言わせてましたなんて言えない。しかし何度も言うがマジカルレースを見ながらイメージトレーンングしていたのは本当だ。


 というかブイブイ言わすとか昭和か! と自分に突っ込むところだがここはナウなヤングがイケイケな時代だから別にいいか。



「とてもそうは見えないがもし本当ならたいしたものだ。君の活躍を期待しているよ」



「はい。ありがとうございます」



 と、お礼を言ったもののこの人だれだっけ? という疑問が頭からずっと離れずにいた。そのまま妙に迫力のある壮年のおじさんが立ち去るのを見ているとダイスケがやってきて話しかけてきた。



「マコト。イノキ校長と何話してたんだ? 」


「あ! あの人校長か! 」


「何だ、分からず話していたのか? 」


「いや、どっかで見たことある顔だなーとは思ってたんだけど」


「入学式で見ただろう。で、何話してたんだ? 」


「いや、何かやってたのか? って。イメージトレーニングだけですって言ったら活躍を期待してるって」


「へー。校長直々に声かけられてる奴なんて他にいないぞ。やっぱりマコトはそれだけ凄いんだな」


「あー、そうかな」



 ダイスケがそう言うがなんだかイカサマをしてる気分で少し後ろめたく感じてしまった。ごまかすように頬をぽりぽりする。それにしてもあれが不死鳥、不屈の闘魂と呼ばれたイノキミチヒコ元選手か。


 イノキミチヒコ校長、元マジカルレーサー。まだ40代半ばでマジカルレーサー養成学校の校長を務める。SG9勝を誇る歴代マジカルレーサーの殿堂入りした人だ。


 二十歳のころすでにA1級で活躍していたイノキ校長は、レース中に多重クラッシュによる相当ひどい事故にあったらしい。目の下のキズはその時のものだそうだ。メガネが禁止されてるわけだ。



 魔導車はガソリンを使わないので爆発炎上こそしないが、イノキ校長の車両は横転しそこに車が突っ込み運転席がつぶれるほどの事故だったそうだ。


 誰もがイノキ校長が無事では済んでいないと声を失う中、イノキ校長はつぶれた運転席からはい出し観客に無事であると片手を上げてアピールして見せた。そしてやってきたレスキューカーの担架に文字通り倒れ込んだらしい。



 その後、救急魔導車にて病院に搬送されたイノキ校長は全身打撲に骨もいくつも折れ、内臓にダメージが行くほどのまさに瀕死の重傷だったらしい。全治六か月、それからリハビリに何か月かかるかわからなかったほどだった。


 誰もが復帰は無理なのではと思ったがイノキ校長は不屈の闘志でリハビリをやり遂げ見事復帰して見せたのだ。さらに復帰第一戦に選んだのが事故のあった、自分が瀕死の重傷を負ったレース場だったのだ。



 そして復帰第一戦を因縁のレース場で勝利をおさめ、その見事な復活劇を見たファンはイノキ校長の事を不死鳥とか不屈の闘魂とか呼ぶようになったらしい。


 そして数年前、SG優勝戦を最後に突然引退した。あの事故から20年で引退すると決めていたそうだ。残念ながらそのSGは優勝こそしなかったが有終の美を飾ったわけだ。そしてその後、後進の育成のため養成学校の校長になったとのこと。



 おれも実際の走りを見て見たかったなー。俺がマジカルレースを見だしたころはまだイノキ校長は現役だったんだけど、G1やSGしか当時のイノキ校長は走ってなかったから俺の地元のレース場に来なかったんだよね。


 SGは年間8戦しかなく、24場あるマジカルレース場に順番通りに開催してるわけでもないからね。毎年SGが開催されるレース場もあれば10年以上SGが開催されていないレース場なんてところもある。


 教官ではなく校長だから直接教わることはないかもだけど、これだけ強かった人が校長なのだからマジカルレース界も安泰だな、とこれまた何目線か分からないことを考えたのだった。




 場面は変わりここは()()()()()()校長室。イノキは校長室にひとり戻りつぶやく。



「あれはイメージトレーニングだけでどうにかできるレベルではないな。何百回、何千回と反復練習をこなして条件反射でできるようにならないとできない芸当だ。ヒビノマコト、何者だ? 」



 イノキはマコトの技術が付け焼刃でできるものでないことを見抜いていた。



「確かにマシンコントロールはマジカルレース界でもトップレベルだろうが、どこまで通用するかな。マジカルレースはマシンコントロールや速さだけでは勝ち続けれない世界だからな。勝ち続けるには強さが必要なのだ。あらゆる意味での強さが」



 イノキは校長イスに深く座りながら続ける。



「そのテクニック、この養成学校でさらに磨くといい。レースでどれほど活躍できるか楽しみにしておこう」



 報告書にサインをするとゆっくりと椅子の背もたれにもたれかかった。その報告書のサインはヒビノの直ドリの許可を出すものであった。




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 マコトの独り言



 〇ホームストレートのタイヤバリヤとマブダチな件


 以前話したと思うがよく行くサーキットのホームストレートのタイヤバリヤとは二桁以上お友達になるというマブダチだ。


 しかし、タイヤバリヤが置いてあるとはいえコンクリートウォールがすぐそばなのでそのままタイヤバリヤ吹っ飛ばしてコンクリートウォールに激突、そのまま全損で廃車なんて車も何台か見て来たという話はしたと思う。


 だが俺は一度もクラッシュで廃車にしたことがない。何故ホームストレートのタイヤバリヤとマブダチとまで言う俺が車を廃車にするほどのクラッシュをしたことがないかというとあきらめが早いからだ。


 いや、冗談じゃなくてね。ホームストレートのタイヤバリヤ側に向けて滑らせたとき分かるんだよね。あ、やばい、これ失敗したって。


 だからこれ無理! って思ったらすぐにサイド引いてたわけ。そうすると車はそこでスピンモードに入るんだけどサイドブレーキ引いたからってすぐに車が止まるわけでもなくて。


 大抵そのままくるっと廻ってタイヤバリヤにリヤフェンダーからドーンって感じでぶつかるのでフロントをぶつけずに済む。


 え? リヤぶつけてるじゃん!って? そうですよ? フロントぶつけたらラジエターどころかフレームまで逝っちゃうけどリヤフェンダー凹むだけで済んでたからね。


 あ、そういえばリヤフェンダーにドア側もぶつけてドアミラー落っことしたことあったなー。とりあえず結束バンドでしばっておいてしばらくそのまま走ってたっけ。良い子は絶対に真似してはいけない。


 それでもこれだけで済むのは早めにあきらめてサイド引いて廻ってるおかげで減速してるしね。逆にあきらめずにアクセルふみっぱなときに全速でフロントから逝くからフレームまで逝っちゃうんだよね。


 ただ、もちろんあきらめなければクリアできてたのにって巧い人に言われたこともあるから全部が全部それで良かったわけでもないけど。


 それでも廃車にしてないだけ良かったと思っている。人間ベストな選択はできなくともベターな選択をし続けることはできるんですよ。そんないい話でもないか。




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