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マジカルD ~異世界でも横滑り~  作者: 咲舞佳
第二章 マジカルレーサー養成学校編
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第二十一話 サイドターンとツチヤリョウ

 ヒール&トゥの次に習うのがサイドターンだ。 さあ、みんな大好きサイドターンの実技課業が始まりました! ジムカーナをやってる人はこれが最大の楽しみだという人も多いと思う。もちろん俺も大好きだ。


サイドブレーキを引けばFF車だろうがFR車だろうがテールスライドが起こせるからね。テールスライド後のリヤの滑らせ方が前輪駆動か後輪駆動かで違うわけだ。


後輪駆動だとリヤが空転しながらそれでも前に押し進めようとする感じで、前輪駆動だと後ろのタイヤを引きずりながら引っ張っていく感じだ。



 そんなことを考えているとダイスケに肘でつつかれた。今は実技課業開始の整列点呼中だ。これから魔導車でサイドターンをする、その期待で皆高揚した面持ちだ。みんな大好きサイドターンだからね。


整列した42期生の前に立つ教官、その後ろに今日の実技課業用の練習車両がある。練習の時になればまたグループごとに1台ずつで練習するのだろうが目の前にあるのはこの一台だけだ。



 教官の説明が始まる。説明するのはワタナベ教官だ。30代半ばで教官の中ではまだ若いほうだ。もちろん元マジカルレーサーである。


事故の怪我で首に後遺症が残ってしまいそれが原因で引退し後輩の育成に注力しているそうだ。ちなみにマコトの担当試験官だった。そのワタナベ教官が口を開いた。



「本日はサイドブレーキを使ったターンを練習する。サイドブレーキを使ったターンは失敗すると即スピンだ。レース中6台並走状態でスピンすると大変危険な事故につながる。サイドターンはとても重要なテクニックだ。皆、集中して練習するように! 」


「「「 はい! 」」」



皆気を引き締めるようにお腹から力を込めて返事をした。事故で引退したワタナベ教官だからこそ言葉に重みがある。



「受験の時に見せたと思うがまずはもう一度実際に見てもらう。」



今回も走ってるところを見ながら説明するのか。他の教官が運転するのかな?と思っていたんだけど。



「では、ヒビノ! お前やってみろ! 」



周囲がざわついた。皆教官が運転するものと思っていたからだと思う。ちなみに俺はいきなり呼ばれてビクっ! とした。俺ですか!? とかなり動揺しつつ「はい! 」と返事をしたけどね。


返事しないと「ちゃんと聞いてないのか! 」とか言われて鉄拳制裁だからね。



 ふと見るとツチヤが俺のほうをガン見してた。おわっ、いつもスン!って態度で我関せずなのに興味津々なのか? ちょっとギャップに驚いた。


ヨーコを見ると「やっちゃえ!」 みたいな目でこっちを見ている。いや、何を?


ヤマダとタカハシさんは心配そうな顔をしてるし、ナカタさんはお前ならできるみたいな感じで鼻息が荒い。ダイスケはやはり、と言った感じでうなずいている。



 ヘルメットをかぶりグローブを着用し車両に乗り込む際にワタナベ教官に耳元で釘をさされた。



「いいか、普通にサイドターンしろ。普通にだ。余計なことはするな。いいな! 」


「は、はい!」



なんか脅されてるような気持になった。いや、確かに受験の時はちょっとはっちゃけましたけどね。ワタナベ教官は受験の時試験官として助手席に乗ってたから。だからかな。


あとツチヤのときと同様に1周して戻ってこいとのことだった。



 何はともあれ受験の時以来のサイドターンの許可がでました! やっちゃいますか! 気分がどんどん高揚してくる。


周辺、外観チェックを行い運転席に乗り込み計器類の確認を行う。整備士さんがボンネットを開け外部バッテリーを接続してくれたのを見てキーシリンダーを回して魔導エンジンを始動させる。


お腹に響く低音と共に全身に振動を感じる。整備士さんがボンネットをバン! と閉め準備完了のサインをくれる。俺は軽くうなずくと車を発進させた。





 ヒビノマコトが練習車両に乗り込むのをツチヤリョウはじっと見ていた。ツチヤはヒビノの噂を耳にして以来ヒビノが気になっていた。


ツチヤリョウはマジカルレース界においてキングと呼ばれるツチヤシゲルの息子であり、幼い頃より魔導車の英才教育を受けて来た。


魔導車に乗ることは特別なことでもなんでもなく、それどころか当たり前であり楽しいとも思わなかった。自分の将来はマジカルレーサーで決まっていて他に何になりたいか考えたこともなかった。



 16歳になり当然のようにマジカルレーサーの試験を受けた。周りの受験者はほとんど魔導車に乗ったことのない者ばかりで、実技試験ではいつものように魔導車に乗りいつものように運転した。


試験車両から降りたとき周りがざわついていたが何の感慨もわかなかった。そして合格通知が届いたときも当然のことだと思っていた。



 しかしマジカルレーサー養成学校に入ってすぐに噂を耳にした。実技試験のときに試験官以上の走りをした受験合格者がいたというのだ。そいつの名はヒビノというらしい。


その噂を聞いて以来ヒビノのことが気になった。幼いころから魔導車を運転してきた自分と同じような者がいるのだろうか、どういうやつなのだろうかと。



 養成学校に入学して1週間ほどすぎたころヒビノが誰かと言い合いをしていた。いや、ヒビノは冷静に話をしようとしているみたいだったが相手がヒートアップしててこのままだと暴力沙汰になりそうだ。


暴力沙汰を起こしたとしたらヒビノが退学になるかもしれない。まだヒビノの走りを見ていないのにそれはまずい。そう思ったツチヤはすぐに行動に移していた。


2人の口論を仲裁したところで教官が来たがすぐに問題ないことを報告した。ヒビノが礼を言ってきたが静かにさせようしただけだと言ったにもかかわらずさらに礼を言ってきた。ずいぶんと素直な奴の様だ。



 実技試験が始まり、他の42期生がぎくしゃく走るのに対しヒビノはとてもスムーズにしっかりヒール&トゥしながら走っていた。他にここまで走らせることができる者はいなかった。


ツチヤは自分の心がざわめくのを感じた。いままで魔導車に、マジカルレースに関してなんら感慨がなかったのだがヒビノの走りを見て何か心の中で動き出すものを感じたのだ。



 そして今目の前でヒビノがサイドターンをするという。サイドターンができるということは単走であればマジカルレーサーと同じ様に走れるということだ。


そんな者が自分以外にこの42期生の中にいる、そう考えると今まで感じたことがない高揚感が沸き上がってくるのを感じた。



 ヒビノの乗った車両が走り出した。発進もスムーズだったがギヤチェンジも他の42期生の誰よりもスムーズだ。そのままホームストレートを最高速で走り第一ターンマークに向かいヒール&トゥをしながら減速する。


ヒール&トゥもとてもしっかり回転数を合わせており車両は全くぶれずにしっかりノーズダイブできており前荷重になっている。


そしてリヤタイヤがロックしスキール音と共にテールがスライドし始める。的確にカウンターを当て最小限の動きでターンマークを曲がり立ち上がって行った。



 ツチヤはヒビノの走る車両から目が離せなかった。下手をすると教官以上、現役のマジカルレーサーと同等の走りだ。自分と同じかそれ以上の技量の同期生がいる、その事実に心が震えた。


しかも噂通りだとするとこれ以上の走りができるらしい。もっとヒビノの走りを見てみたい。今まで他人に無関心だったツチヤの心に初めて芽生えた感情だった。





 第一ターンマークと第二ターンマークをサイドターンで廻って戻ってきた。いやー、やっぱサイドターンはいいね! 簡単にリヤが滑って楽でいい! とりあえずサイド引いとけば大丈夫みたいな安心感がある。


前の世界で直ドリするときにリヤがスライドせずにグリップしてハンドル切った方向に飛んで行ったときは死んだと思ったもの。サイドブレーキとは別の方法で直ドリしてたから。



 そして教官と同期生の前に戻ってきて車を降りてヘルメットを脱いだら小さな声だが少しざわざわしてた。


やっぱり噂は本当だったとか、俺は試験のとき見たとか教官の手前小さな声だが俺まで聞こえてる時点でアウトでしょ。案の定教官に「静かに! 」と怒鳴られてた。鉄拳飛ばなかっただけましか。


なんか熱い視線を感じる。ぱっと見るとツチヤがこっちガン見してる。ガン見してるのは走る前とは変わらないがなんか視線が熱くなってる気がする。えー、俺にその気はありませんよ? 他を当たってください。



「ヒビノ、ご苦労だった。列に戻れ。」


「はい! 」



そのまま教官が説明を続けるがツチヤの視線が気になって集中できなかった。後ろから視線が刺さる刺さる。絶対振り向かないようにして何とか教官の説明に集中することにした。


そしてその後コースを二つに分け第一ターンマークと第二ターンマークを使ってサイドターンの練習を行いその日の実技の課業は終わった。




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マコトの独り言



〇FFのドリフトについて


 ちなみにFF(有名なRPGではない)でもドリフトは出来る。俗に言うFドリというやつだ。先に話した通り前輪で引っ張るようにドリフトをする。サイドブレーキを引きっぱなしにする場合もあるが、速度が乗っていればリヤが滑り出したまま前輪で引っ張っるのでサイドを戻す場合もある。


しかし後輪駆動と違ってリヤのテールスライドはいずれ止まるのでそのまま滑ろうとするときにもう一度サイドブレーキを引いたりするわけだ。後輪駆動はアクセル踏んでればずっとリヤが空転して滑れるからね。

 

 そういえば前の世界でドリフト世界最長記録とかいうギネス記録があったっけ。円形のコースをひたすらドリフトで廻りつづけるって内容だった。単なる定常円旋回じゃん、って見て思ったものである。


サイドブレーキを引きなおすのはジムカーナでパイロンを使った360度ターン(サブロクターン)をするときによく使うテクニックだったりする。もちろんFドリで長く滑らせ続けるときにも使う。


そういえばこのマジカルレース車両と同じくらいの車重と馬力のFF車でFドリしてるのを見たことがあるんだけど、一つのコーナーで数度サイドを引いてて多角形コーナーリングだなって思ったことがある。




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